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2003年9月5日　08:14 PM 更新

Mobile&Movie 第78回
ゲロッパ！「話聞いてんのか、このやろ！」

映画の中の名脇役として登場する“モバイル製品”を紹介する「Mobile&Movie」。今回は辛口の映画評論で知られる井筒和幸監督の「ゲロッパ！」。携帯電話が粉々に破壊されるシーンは見ものです。

作品名	ゲロッパ！
監督	井筒和幸
制作年・製作国	2003年日本作品

　辛口の映画採点がすっかり有名になった井筒監督が、本業に戻って作り上げた渾身の作品「ゲロッパ」。ジェームス・ブラウンファンのヤクザ組長の夢を叶えるため、子分たちがJBをトコトン探すというストーリー。

　大阪・名古屋・東京をスピーディに移動する登場人物にとって、親分の命令を聞いたり、娘の様子を確認したり、携帯電話は必需品。携帯電話越しに繰り広げられる大阪弁のボケとツッコミの会話は、絶妙な間合いで笑いを誘います。

　大阪の中堅ヤクザ羽原組は、解散の危機にありました。それというのも、組長の羽原が数日後に収監され、この機会に組を解散すると子分たちに宣言したのです。組長を慕う子分たちは口々に存続を訴えますが、組長の意思は固く揺らぎません。ナンバー2の金山は最後にこれまでの恩を返すため、組長の願いを何でも叶えようと誓います。

　しかし、組長は豪華な接待などには興味がない様子……。金山は、組長が昔から大好きだったジェームス・ブラウンの存在を思い出します。ジェームス・ブラウンはソウルの神様、きっとJBに会えたら組長は喜んでくれるに違いない。こうして、金山は子分たちに命令します。

「今すぐジェームス・ブラウンをさらってこい！」

　JBはちょうど来日中。名古屋公演の直前という情報を入手し、そっそく宿泊先のホテルに電話をかけます。

「ジェームス・ブラウンの関係者の方はいらっしゃいますか？」

　大阪から名古屋へ向かう車の中ですました声を出す金山。

「関係者の金山と言って頂けばわかります」

　JBの関係者に電話がつながったところで、子分のひとりに携帯電話を渡します。

「お前、うまく喋れよ」

　子分の晴彦は神妙な声を出し訴えます。

「実は、僕のお父さんが病気ですねん」

　泣きそうになりながら

「JBに会いたい、言うとりますねん」

　父が死ぬ前にJBに会わせて親孝行がしたいという演技を続けます。しかし、JB側はとまどうばかり。進展しない会話に、金山の態度は豹変。携帯を奪い

「なんぼやったら、営業に出すねん」

と凄みます。受話器の向こうは思わず絶句。

「話聞いてんのか、このやろ！」

　ついに金山はキレてしまいます。携帯電話をめちゃくちゃに振り回し、あっという間に壊してしまいました。こんなふうに携帯電話が粉々になってしまう場面は、ほかの映画では見たことがありません。思わずア然としてしまうシーンです。

　組長は子分に内緒で、25年前に離れ離れになってしまった娘かおりの行方を探していました。収監前にどうしても一目会いたいと思っていたのです。

　訪ねていくとそこには、かおりの子供がいたのです。かわいい孫の出現に思わず泣き崩れる組長。25年の歳月を埋めて、組長は親子の絆を取り戻すことはできるのでしょうか。そして、金山たちは組長のもとにジェームス・ブラウンを連れてくることができるのでしょうか。全編にファンキーなソウルミュージックが流れる、抱腹絶倒のノンストップ・ジェットコースタームービーです。

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