キャリアの“内輪”に入ったヤフー
ソフトバンクのボーダフォン買収で、キャリア側からサービス提供する力を持ったヤフー。日本最大のポータルと携帯とのシームレスな連動は、携帯コンテンツ業界を揺さぶりそうだ。
「もう1歩キャリアに近い立場からサービスを提供できる」――3月17日、ソフトバンクのボーダフォン買収会見に出席したヤフーの井上雅博社長はこう述べた。同社は、今回の買収にあたって優先株1200億円を出資。携帯向けサービスに“内輪”から取り組む。
井上社長は「今の携帯向けネットサービスは強くキャリアに依存しており、オープン性が足りない」と指摘。「もっとこうしたら便利、というアイデアがあっても、なかなか実現できないのが現状」と語り、携帯サービスを内側から改革し、PC向けサービスとの親和性を高める姿勢を示した。
「ヤフーの4200万のユニークユーザーとボーダフォンの1500万ユーザーを合わせると大きなエンジンになる」――ソフトバンクの孫正義社長もヤフーの集客力に期待する。孫社長によると、「Yahoo!モバイル」の月間ページビュー(PV)は11億。コンテンツの数も既存キャリアを大きく上回るという。
PC向けサービスでもヤフーの集客力は圧倒的だ。「PC向けコンテンツにも携帯からスムーズにアクセスできるとなると、ネットユーザーに満足してもらえるサービスになるだろう」と孫社長はシナジーを期待する。
ヤフーは独自の課金システムを保有し、コンテンツやサービスから直接収益を得る手段も確立している。「ヤフーは、オークションやショッピングの収益が年間約600億円あるが、KDDIやドコモはほとんどない」(孫社長)
ヤフーは昨年10月、携帯電話向けコンテンツ販売サイト「Yahoo!コンテンツストア」をオープンした(関連記事参照)。これまでキャリアが握っていた課金システムやコンテンツ配信をヤフーが一括代行する仕組みで、公式サイトに縛られないコンテンツ配信を支援してきた。
今回の買収をきっかけに、ソフトバンクの携帯ユーザー限定サービスの展開も検討する。「Yahoo!BBでも同じモデル(インフラとコンテンツやサービスの融合)を経験してきたが、広くネットユーザーに提供する横展開サービスと、キャリアに近いところでより多くの利便性を提供するという会員向けサービスは、分けてやっていきたい」(井上社長)
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Yahoo!IDでログイン・決済できる携帯電話向けコンテンツストアがオープンした。キャリアを変えても手続き不要でサービスを継続利用できるのが売り。PC向けにも同様なサービスを展開し、コンテンツ課金の中核的な位置を担う。
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