“安定志向層”に向けて最先端の技術を凝縮――ITmedia読者×シャープISW16SH開発者座談会:WiMAX、NFC、Feel UX採用の秘密(3/3 ページ)
シャープのau向けスマートフォン「AQUOS PHONE SERIE ISW16SH」をテーマにした、ITmedia読者とシャープ開発陣による座談会が実施された。2年前から開発していたというWiMAXの性能は。なぜNFCとFeliCaの両方を採用したのか。Feel UXで抜本的にUIを変えた意図は――。
人によって違う“直感的”を形にすることの難しさ――Feel UX
Feel UXについては前半で福山氏も説明したが、白石氏が「そもそもなぜFeel UXに変更したのか」も含め、より深い話を披露してくれた。
「フィーチャーフォンからAndroidに移行するお客様が増えてきた中で、シャープとして新しいことをしようと調整してきました。今回コンセプトとして考えていたのが、感覚的なものを前面に出すことです。Androidのホーム画面はアプリを並べると壁紙に重なって邪魔になる。またウィジェットをどう使っていいか分からない方も多い。そこで目的を達成するための導線を短縮しようと考えました。お客様の慣れに期待するのではなく、簡単に見つけやすくする。ただAndroidに慣れている方もいるので、どこに照準を合わせ、実際のデザインにどう落とし込むのかが難しかったですね」(白石氏)
新しいものを提供すべく、Feel UXのデザインは米国のFrog Design社にお願いした。「最初に説明をしたときには分かってもらえないところもありましたが、最終的には『なるほどね』と分かってもらえました」と白石氏は振り返る。
直感的な操作を目指す――とは言っても、感覚は人によって異なる。「最後まで問題になったのが、スクロールを上下にするか左右にするかです。人によって操作するクセや手の大きさ、スクロールさせるスピードも違います。スクロール速度のパラメーターをいくつか変えて社内でテストして、調整していきました」と白石氏は苦労を話す。「かなりのパラメーターや画像データを差し替えて、結果的にいいものができました」(白石氏)。Feel UXはドコモやソフトバンク向けも含めて複数の夏モデルに搭載されているが、操作感を機種ごとに調整しているというのは興味深い。
「今までいろいろなAndroidを使ってきたので、個人的に最初は戸惑いがありましたけど、慣れるとこちらの方が直感的なのかなと思いました」と園部が話すように、Feel UXは使うほどに良さが感じられるUIといえる。だが、UIを抜本的に変えることは大きな決断だったはずだ。「PDAの時代からそうでしたが、UIを変えると必ずクレームが来ます」と白石氏も話す。「でも重要なのは、新しいUIを使ってから元のUIに触れてどう思うか」だという。「私の場合、Feel UXを使った後にIS13SHを使うと“突っかかる”感じがします。以前の機種へ戻ったときに違和感が多いと、UIとしてはうまくいったかなと思います。慣れていくと怖くて変えられなくなり、陳腐化しているにもかかわらず、同じものをブラッシュアップするしかない。チャレンジすることを良しとする感覚を持っていたいですね。まあ使いにくいと言われたら担当者はめっちゃへこみますけど(笑)」
Feel UXは今回初めて搭載されたこともあり、参加者から「なぜこれはできないのか?」といった質問や要望も多く挙がった。例えば、ウェルカムシートではカメラ、電話、メールを直接呼び出せるショートカットが用意されているが、このショートカットを任意のアプリに変えることはできない。白石氏は「ショートカットを変更するためのUIをどう作るか。簡単に見つけられる場所に用意しないとなかなか使ってもらえません。良い方法をすぐには思いつきませんでした」と説明する。他の参加者からは「せっかく初心者向けに良いUIを作ったのに、カスタマイズが難しいのはもったいない。UIの設定を変えられるアプリがあればいいのでは」との意見も出た。「使った方からいろいろな意見もいただいているので、きちっと組み立ててうまく調整していきたいですね」(白石氏)
3ライン上でピンチアウトをする(2本の指を置いて広げる)と、セパレーターが表示されてアプリをカテゴリーごとに分割できる機能も参加者に好評だった。「実はこれ、最初は私も知らなかったんです(笑)。ただ、いったん気付くと普通にできて当たり前になります」と白石氏が話すように、Feel UXはシンプルに見えて「こんなこともできるんだ」と発見する面白さもある。ちなみにセパレーター設定時のスクロールの止まり方も、機種によって微妙に変えているという。一方で「ウィジェットのラインがうまくスクロールせず、ウィジェット自体がスクロールすることがありました」(園部)との意見も。「ウィジェットによって挙動が違いますね。なるべく余白を触れていただければと思います」(白石氏)
「Feel UXを初めて見たとき、正直なところ『iida UI』やWindows PhoneのUIが浮かんだ。これに近い思想なのか」という鋭い質問も出た。「最初の印象は同じかもしれませんが、使い込んでいくほどに違いや良さが分かるはずです。Frog Designとしても(AndroidのUIは)初めての試みなので、何かと似ていると言われるのはいやでしょう。まったく意識していないはずです」と白石氏は説明する。
また「Twitterでも話題になっていたが、ISW16SHは初期状態でもRAM(メモリ)の使用量が大きく、ホームアプリが重いという意見が見られた」との指摘も。これは初期状態からウィジェットがたくさん設定されていることが原因だという。「ホームは他のアプリよりもメモリを解放しにくい設計になっていますが、ウィジェットを外すと軽くなります。使わないウィジェットを整理することをオススメします」(白石氏)
参加者の中にはFeel UXの使いやすさに惚れ込んだ人もいたようで、「500円や1000円でもいいから買いたい」という声も聞かれた。他社の端末で動作保証をするのは難しそうだが、例えば過去のシャープ端末向けに配信するなど、できる限り対応機種を拡大してほしいとも思う。
物理キーは外してもMENUボタンはしっかり用意
このほか、基本的な使い勝手についても活発な意見が交わされた。
通知バーにさまざまな設定パネルを用意するのは従来機からおなじみだが、「左右にスクロールするのに手間がかかる。自分の好きな機能だけを設定できれば、なお良かった」「女性などで怖くて設定を触れないという人もけっこういます」との意見もあった。「UIは慣れるとカスタマイズしたくなりますけど、カスタマイズして変化することで不安感を誘うこともあり、バランスが難しいですね。お客様のレベルに応じて好きな設定を選べるようにしたいのですが、全域にわたってカバーすることはできないでしょうね」と白石氏は話す。これを受けて「すべての設定を初期状態に戻すといった設定があれば不安感は軽減できるのでは」との意見も挙がった。
起動中のアプリをまとめて消去する設定も受け継がれている。「Androidは使うほどにメモリを消費します。起動したアプリは基本的にずっと動いていますから、すぐに消せるようにしています。一方で(メモリを解放するために)再起動する方法もありますが、再起動はシステムにいろいろな負荷がかかってトラブルになることがあるので、安全にアプリを終了させる手段を提供しました」(白石氏)
Android 4.0搭載のスマートフォンにはキーがなく、MENUボタンを備えていないものも多い。ISW16SHは前面にキーは備えていないが、画面下部にサブメニューを呼び出せるMENUボタンを備えている。この「MENUアイコンが表示されていて便利」(参加者)という意見は、多くの人が思うところだろう。一方で質問にも挙がったが、今回物理キーはなぜ省いたのか。「キーを備えているのはAndroid 2.3以前の機種が多いので、キーを並べると古く感じてしまいます。新OSということもあり、全面ガラスにしました。でもそれで使いにくくなったらダメなので、MENUアイコンを設けました」と白石氏は説明する。
文字入力については「キーサイズを変更できるのが嬉しい。特大サイズもある」という声もあり、手の大きな人にも配慮したことがうかがえる。一方、「女性の方などで、逆に小さいサイズに変更できたらよかったのに、という人もいました。これまで使っていた機種のディスプレイが4インチ~4.5インチくらいだと、そう感じるんでしょうね」と園部が話すと、開発陣は「そういう方もいらっしゃるんですね」と驚いた様子だった。
6月に発表されたばかりの新OS「Android 4.1」へのアップデートについては「キャリアとの相談事なので」と福山氏はこの場では明言を避けたが、「Android 4.0へのアップデートについては(ハイエンド機を中心にアップデートすると)メッセージを出したので、今回も同じようなスタンスになるのでは」とのこと。ただ「Android 4.0については以前のハードで動くかを調べましたが、全機種で快適に動かすのは難しかったんです。最新OSの方がいいとは思いますが、良いものを提供できるかを確認してから、キャリアさんと相談する流れになります」とも話し、現時点では決まっていないようだ。
今回も、予定の時刻を過ぎても質問がやまないほど盛況だった。参加者は開発者から生の声を、開発者は参加者から忌憚のない意見を聞くことで、お互いに発見できたことがあったのではないだろうか。ディスプレイ、WiMAX、NFC、Feel UX――ハードからソフトまで、ISW16SHにはシャープが誇る最先端の技術が凝縮されている。実機に触れれば、単純なスペックからは分からない満足感を得られるはずだ。
提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年7月30日
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