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「IGZO」搭載で“相反する需要”に応える――「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」完成までの道のり(2/4 ページ)

世界で初めて「IGZO」を搭載したスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」がいよいよ発売された。スマホにIGZOを搭載するメリットとは。そしてどのような困難を乗り越えてSH-02Eは完成したのか。シャープの開発陣8人に話を聞いた。

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ソフトウェア面でもIGZOをサポート


西本望氏

 ここまで、ハードウェア面からIGZOをどう生かすかを説明してきたが、ソフトウェア面でも工夫をしている。その1つが、端末を持っているときは画面が消灯しない「Bright Keep」という機能。マーケティングセンター プロダクト企画部の西本望氏は「文字が多い画面を見ているときや、書籍を読んでいるときは無操作なので、10秒や15秒で暗くなりますよね。(スリープから復帰させるために)画面を触った瞬間、1秒間に60回画像が更新されてしまうので、それを防ぐために、端末を持っている状態を検知してバックライトをつけっぱなしにし、結果的に1Hz駆動を維持するという仕組みです」と説明する。

 シャープのスマートフォンでおなじみの「エコ技」も、IGZOの性能を支えるよう、一部仕様が変更されている。その1つが、画面のスクロール速度を60フレーム/秒から30フレーム/秒に変更する「省エネ液晶ドライブ」だ。マーケティングセンター プロダクト企画部の錦織氏によると、従来は省エネ液晶ドライブ(機種によっては「なめらかスクロール」「なめらか」)をオンにしてスクロール速度が30フレーム/秒になるのは「設定」などのリスト画面、ブラウザ、シャープのホームアプリに限定していたが、SH-02Eではどの画面でも適用される。液晶の駆動回数を減らすことで、IGZOの省エネ性能をより発揮しやすくするというわけだ。「30フレーム/秒でも十分快適に使える場面は多いので、省エネ重視の方に向けて、この切り替え機能を用意しています」(錦織氏)

フルHDでなくHD解像度を採用した理由

 SH-02Eのディスプレイ解像度は、他のハイエンド機と変わらない720×1280ピクセル。トランジスタをさらに小型化できるIGZOなら、さらなる高解像度化への期待も募る。「消費電力、バッテリーの持ち、画面の明るさなど、IGZOはスマートフォンに合った技術です。投影面積に対して画面をどれだけ大きく保てるかは、やはりモバイルの命なので、そこもIGZOであれば乗り越えられるかなと。当然、技術の進化としてそういう方向(高解像度化)はあるのかなと思いますが、今のところは何とも」と前田氏は言葉を選ぶ。高解像度化に際して一番の障壁になるのは消費電力だ。「例えばHDとフルHDのピクセル数は2.25倍違います。消費電力がどんどん上がっていく方向に対して、IGZOのメリットが生きるかどうかですよね」(前田氏)

 シャープといえば最先端の液晶を搭載しているイメージがあるし、同社にもそうした自負があるはずだ。解像度でも先を進んでほしい感もあるが、現時点ではHDの方がメリットが高いというのが同社の出した結論だ。「確かに高解像度化への期待感はあると思っていますし、我々も当然追求していくことになるとは思うのですが、現時点でどちらにメリットがあるかを考えて、あえてHDを採用しています。明るさ、消費電力、サイズはすごく重要で、お客様の満足度につながります。じゃあフルHDにしたらどうなるかと考えると、この3つの要素が悪い方向に行ってしまいます」(永井氏)

「2日間充電なしで使える」は本当?

 省エネ性能の高いIGZOと、2320mAhの大容量バッテリーとあわせて、シャープはSH-02Eを「2日間充電せずに使える」とアピールしている。「ディスプレイやソフトウェアで省電力を実現することにも当然取り組んでいるのですが、やはりベースになるバッテリー容量が少ないとご満足いただけないと思います。そこも押さえた上で、さらにIGZOがあり、エコ技という省エネのソフトウェアがあり、すべてがそろって初めてお客様に満足いただけるバッテリー持ちが実現できるのではと。そのあたりを加味して、弊社で使用状況を想定して測定した結果、実使用時間として2日間を達成しています」と永井氏は説明する。シャープの調べによると、2011年冬モデルの「AQUOS PHONE SH-01D」と比べ、SH-02Eの方が連続静止画表示時間が約4.8倍、連続動画再生時間が約2.8倍持つとの結果も出ている。

ノイズの少ないタッチパネルで「ペン入力」も訴求


田中陽平氏

 IGZOの特性は、低消費電力に加え、タッチパネルでのノイズ発生を抑えられることも挙げられる。これにより、タッチパネルの感度が向上し、よりスムーズに操作できる。「タッチパネルは一種のセンサーなんです。だから初め(指で触れたとき)に入って来る情報がどれだけピュアかということが最後まで影響するんですよ。例えばノイズが多いのでデータ処理やフィルター処理などをかけると、感度は良くなりますが、処理に時間がかかる分、レスポンスが悪くなったりします。まずはノイズが少ない状態でどれだけ信号を検知できるかが、最終的な完成度に影響します。そういう面で、今回はお客様に貢献できたと思っています」(前田氏)

 シャープはタッチパネルの感度向上に着目し、新たな操作法として「ペン入力」を提案する。SH-02Eにはイヤフォンジャックに差し込んで携帯できる小型のタッチペンを同梱しており、手書きでメモや予定を記録できる「書」メモアプリを用意した。同梱のタッチペンは試供品ではあるが、先端は非常に細く、より精密に書けるようになっている。「一般のスマートフォンで使えるタッチペンはすでに売られていますが、先端が丸かったりラバーだったりで、恐らくこの細さのタッチペンはあまりないでしょう。このレベルの細さで反応できるのは、専用で頑張って作ったからです。普通だとこのサイズはできません」と田中氏は胸を張る。もう少し長いペンについても「周辺機器メーカーさんといろいろお話をしています」(田中氏)とのことなので期待したい。

提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月26日

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