白戸家、パズドラ、地域限定……スマホ関連CMの最新事情:佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/3 ページ)
好感度調査で常に上位を占めるキャリアのテレビCM。スマホの競争激化でその存在意義は以前よりも高まっているようだ。そして最近は、アプリなど新しい分野のCMも増え始めている。
ゲームアプリCMのけん引役「パズドラ」のCMに変化が?
スマートフォンに関連する事業者の中で、テレビCMを展開しているのはキャリアだけではない。特に近年、大きな注目を集めているのが、ゲームを中心としてスマートフォンアプリを提供するベンダーのテレビCMだ。首都圏では中夜を問わず、ゲームアプリのCMが放映されており、相当な本数のCMが放映されているのは確かだ。
テレビCMによって利用者を増やしたゲームアプリの代表例が、ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」(以下、パズドラ)だ。パズドラのテレビCMは一般的なゲームのCMのように、ゲームの内容を直接アピールしない点に大きな特徴があった。過去のパズドラのCM内容を振り返ると、ゲームのプレイ画面はあまり登場せず、生活の中にパズドラが溶け込む様子を表現したり、主婦や学生がパズドラに初めて触れながらも楽しめる様子をアピールしたりするなど、幅広い層に対して手軽に遊べることをアピールすることに主眼を置いている。
そうしたパズドラのCM展開が、後のゲームアプリのCMにも大きな影響を与えたのは確かだろう。最近のゲームアプリのCMを確認してみると、ゲーム自体よりもスマートフォンで手軽にゲームを楽しんでいる様子をアピールする内容が増えている。
だが最近になって、パズドラのCM内容に変化が出てきた。2014年に入ってからパズドラのCMは従来の路線から一転、ドラゴンが登場してゲームの内容を前面に押し出すなど、その世界観を強くアピールするものへと変化している。同じライト・カジュアル路線のゲームアプリをリリースする他社と差別化を図り、コアなゲームユーザーを取り込む上でも、こうしたCMが増えていく可能性は高いかもしれない。
ゲーム以外のCMも増加、CMのために増資する企業も
昨今、CM展開が注目を集めるのはゲームベンダーだけではない。2012年から2013年にかけて、LINEやカカオトークなどのメッセージアプリが積極的なテレビCMを展開して激しい競争を繰り広げた。2014年に入ってからは、テレビCMを展開するアプリのバリエーションが大きく広がり、また数も増えているのだ。
例えば、2013年末から今年の頭にかけてオンエアされた漫画雑誌アプリ「マンガボックス」(ディー・エヌ・エー)のCMは、有名漫画作品のパロディという内容で注目を高め、3月には300万ダウンロードを突破した。直近では、スタートトゥデイのコーディネート共有アプリ「WEAR」が、3月19日より100万ダウンロードを記念してテレビCMを展開。4月3日には200万ダウンロードを記録するに至っている。
テレビCMへの力の入れ具合という意味で、注目されたのがニュースアプリの「Gunosy」だ。同アプリを提供するグノシーは3月14日、KDDIが資本参加すると発表。それとほぼ時を同じくして、ウルトラマンを起用したテレビCMを実施している。これはある意味、増資で獲得した資金を、テレビCMによるプロモーションに活用して会員獲得につなげるという、異例の展開ともいえる。
そうした取り組みがもはや異例ではないことを、証明しているのがミクシィだ。同社は2月28日に公募による増資を実施しているが、その目的を確認すると、急速に人気を高めているゲームアプリ「モンスターストライク」の利用者を増やすべく、テレビCMなどの広告宣伝費に充てると説明している。
自社ゲームアプリのプロモーションのために増資を実施するというミクシィやグノシーらの姿勢からは、アプリベンダーが一層の成長を実現する上で、テレビCMが欠かすことができない存在となっていることを、見て取ることができるだろう。
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