インタビュー

ドコモ井伊社長インタビュー(後編):屋内5Gサービスにも意欲、MVNOとの提携ではdポイントが重要に(1/3 ページ)

NTTドコモ井伊基之社長のグループインタビュー後編では、データ通信容量無制限を正式に導入する「5Gギガホ プレミア」や、5Gを使ったサービス、さらに、低容量プランへの見通しなどを明かしている。低容量プランではMVNOと連携していく。“docomo Air”のような屋内向け5G通信サービスにも意欲を見せた。

 NTTドコモの新社長に就任した井伊基之氏。グループインタビュー前編では、オンラインに特化した新料金プラン「ahamo」の狙いや、ahamo導入後におけるショップの役割などを語った。ahamo効果はサービス開始前から出ているといい、MNPでの流出が止まりつつあるようだ。

 後編では、データ通信容量無制限を正式に導入する「5Gギガホ プレミア」や、5Gを使ったサービス、さらに、低容量プランへの見通しなどを明かしている。


NTTドコモの井伊基之社長

5Gを契機に大容量プランに移ってほしい

―― 本業の通信に関してですが、ここから先の広げ方を教えてください。

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井伊氏 5Gの話からすると、年末で130万ぐらいのご契約をいただいています。年度計画では250万です。「ホントか?」と思うところはありますが(笑)、担当は順調だと言っていて、確かに5G端末を一気に出したところでバーンとはじけました。当社は当面、(4Gの周波数を転用せず)4Gと5Gをすみ分けた戦略でいきます。(転用は)いずれやりますが、まだ4Gのお客さまがたくさん残っているため、4Gは4G、5Gは5Gにしています。

 5Gの体感エリアは、もっと増やさないと駄目ですね。ただ、ダウンロードが速いという実感が伴うようなサービスがないと、お客さまは「4Gでいい」となってしまいます。キャリアアグリゲーションを使えば結構なスピードが出ますからね。何が何でも5Gといえるほどにはまだ基地局を打てていませんが、流れとしては、パケットをたくさん使ってもらうモードに変えていかなければいけない。家では光にオフロードして、パケットは外でだけとなると、パケットを消耗するのを控えてしまいます。

 これは、(データ通信が)高かったということだと思います。2980円で、外で使ってサクサクで便利となれば、もう2000円弱出して使い放題にしたくなります。ドコモは、シェアが多い割に、みんな7GB以下なのが課題でした。その経営課題を突破するためにahamoでの値下げに打って出た。加入者そのものはそこまで増えるわけはないので、一人一人にパケットを増やしてもらう戦略です。


ドコモは5Gでは新周波数を用いた高速・大容量通信を訴求する

SoftBank Airは脅威に感じている

―― ということは、屋内も5Gでということを考えているのでしょうか。

井伊氏 SoftBank Airは脅威に感じています。ビルのテナントや賃貸にお住まいの方が本当に工事までして光を通してくれるかというと、そうではありません。設置型ならLTEが飛んでいれば、オフロードできますからね。簡単に設置でき、自分のパケットを消費せず、家族みんなでオフロードできる世界は、今まだだとFTTHしかありませんでしたが、技術の進歩で最後のアクセスポイントは高度化できます。これはやるべきで、NTT東日本、西日本のFTTHにこだわっていたら、ガラパゴスだと言っています。

 と、言ってはいますが、みんな賛同してくれない(笑)。すぐに「コストがいくらかかる」と言われてしまいますが、私自身も何人かのお客さまから聞いています。ドコモのお客さまだったが、単身赴任する時に、あーだこーだー言われて結局SoftBank Airを買ってしまった人もいました。IRで海外に行くことも多いですが、やっと5Gが始まるという国でベンダーが何をやるかというと、まず家に置く端末に5Gを吹くんです。アクセスとしての5Gですが、それをわれわれがやれば、十分ビジネスになります。もっと安くなり、パケットをじゃぶじゃぶ使えればいいのですが、それには時間もかかる。補完的な端末の余地はあると思います。


ソフトバンクが提供している、屋内向けの無線ブロードバンドサービス「SoftBank Air」。ドコモ版のサービスも登場するかもしれない

―― リモートワークで、家からつなぐ人が増え、FTTHが遅くなって困っているという声もよく聞くようになりました。

井伊氏 ですから、これはやりたい。すぐにやりたいですね。私はせっかちなので(笑)。ドコモに足りないのは、このせっかちさです。育ちがいいんですよ。まずPOCをやって、次に実証実験をやってと、何年かけるつもりだと(笑)。技術の確立を非常に重んじる傾向にありますが、やりながら滑ったり転んだりすればいい。中の人間を変えるのは大変ですが、本当は次の世代の人がやってくれればいい。ハードを作るには、確かに一定の時間はかかりますが、だったらスタートを早くすればいいと思います。

―― 以前もFWA(Fixed Wireless Access)をやるつもりはないのかを質問したことがありますが、NTT東西に遠慮しているのか、消極的でした。

井伊氏 FTTHを推進するために、私自身もNTT東日本にいましたが、このモデルは行きついたと思っています。不便さの方が出てきている。賃貸住宅でも入れられるようにいろいろと工法も考えましたが、それでもどこかに穴を開けなければいけない。家を建てるとき、最初から配管ができればサクッとできますが、後からやるもんじゃない。無線をもっと上手に使う必要があると思います。センサーやIoTのようなデバイスには低速、低容量で使っていますが、LTEやそれ以上のスピードが出る5Gを使って無線アクセスでつなぐというやり方は補完的に必要になります。

―― セット割はどうされますか。

井伊氏 しない方がいいと思います。このサービスはドコモユーザーじゃなくてもいいようにしたいからです。こういう商売をやることを総務省が認めるかどうかですが。

―― 5Gギガホ プレミアでも、データ容量を正式に無制限にします。

井伊氏 とにかく、ギガホの世界に移っていただき、潤沢にパケットを使っていただきたい。ただ、それだと「使わないときにもお金を取るのか」とお国に言われてしまうので、3GB未満は1500円割り引くという保険もかけました。ここは正直、他社をマネしました(笑)。ただ、それは大事なことで、ないと、使っていないものにお金を取っていることの実証になってしまう。本来はお使いになる目的で契約しているので、使わないのはお客さまの自由ですが、そういうものを高く売りつけて荒稼ぎしているとそしりを受け始めていたので、3GBで割り引くことにしました。この辺は、他社にも学ばせてもらいました。

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