いつでも使える大画面――プロジェクター内蔵ケータイ「SH-06C」が生まれた理由(2/2 ページ)

» 2011年02月04日 10時00分 公開
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使いやすさを突き詰めた操作性

 そのほかにも、さまざまな工夫が凝らされている。通常の大型の据え置き型プロジェクターと違って、PCと接続して操作するようなことはない。また広いホールのようなところで使えるわけでもない。SH-06Cの投影距離は約50〜290センチ、投影できるサイズは約10〜60インチだ。普通の家庭の部屋、会議室で使うのに適した仕様だ。そこでケータイのプロジェクターならではの操作を考えたという。

Photo 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 技術部 主事の中原靖智氏

 「暗いところで投影するのが推奨なのですが、ケータイなので明るい環境で使われることも想定し、視聴環境を設定する機能を用意しています。蛍光灯が付いた状態でも見られますよ」(中原氏)

 「例えば飲み会のときにワンセグやYouTubeを皆で見たり、昼休みにちょっとワンセグを投影して見たりと、壁があればいつでも使えるようにしたかったんです。サイドボタンを長押しするだけで簡単に起動しますし、画面に表示できるものはほとんど投影できます。投影を消したいときは、サイドボタンの長押しでもいいのですが、もっと簡単な方法として、端末を裏返せば消えるようにもなっています」(永井氏)

 待受画面からメール、ワンセグ、動画、写真なんでも表示できる。例外は電話、カメラ、ボイスレコーダーの画面くらいだという。

 「小さなお子さんには、ワンセグなどで放映されているアニメや映画などを、部屋を暗くして投影してあげれば、『映画館みたい』と喜んでもらえるのではないでしょうか」(藤本氏)

 壁でも天井でも投影するのはサイドボタンを押すだけ。あとはピント調整をすればすぐに使える。投影中にサイドボタンを押せば、明るさや画質、視聴環境を設定できる。難しい操作はまったくと言っていいほどない。

PhotoPhoto

PhotoPhoto 投影中に、端末の右側面にある大きなボタンを押すと「プロジェクター設定」が呼び出せる。ここで明るさや画質、視聴環境の設定が可能だ。投影画面の縦横切り替えもできる

 とはいえ、この違和感がない操作も最初からできていたわけではなかった。

 「実はドコモさんの冬春モデルの発表会でデモをしていたものとは、操作の画面が変わっています。あの時は基本的に横画面だけで操作する仕様だったんです。投影を開始すると自動的に画面が横に切り替わるようにしていたのですが、ケータイは通常縦に持って操作しますから、それは使いづらい、という意見が多くありました。だったら縦画面でも横画面でも操作できるように、と仕様を変更して作り直したんです」(永井氏)

 ドコモが2010年度冬春モデルの発表会を開催したのは11月のこと。その後2カ月ほどの間に、よりよいものを作るためにさらなる改良をしたというのだ。シャープがより良いものを開発するため妥協していないことがよく分かる。

 「プロジェクターは横画面で投影するので、縦画面を表示すると少し表示は小さくなってしまいますが、縦画面で操作をしているときに投影を開始したら、縦画面で表示された方が分かりやすいですよね。それと、プロジェクターを起動していないときはモーションセンサーで画面の縦表示と横表示を自動的に切り替えていますが、プロジェクターを起動している間は手動で縦横を切り替えるようにしています。モーションセンサーが勝手に働いてしまうと、表示を元に戻すために端末を動かさなくてはいけなくなり、その結果ピント調整をやり直したりしなくてはいけなくなってしまいます。それでは使い勝手が悪くなるので改善しました」(藤本氏)

 シャープのケータイはBluetoothのHIDプロファイルを以前からサポートしており、Bluetoothキーボードを利用した文字入力ができるが、SH-06Cでもこの機能は継承されている。Bluetoothキーボードについては、最初は対応しない考えもあったという。しかし、「この端末を購入してくださるユーザーさんは、きっとプレゼンテーションを投影して、遠隔でリモート操作することも考えているだろうと思ったので」(藤本氏)サポートすることにしたのだという。

 もちろん投影中にステレオイヤフォンを使えば、バーチャル5.1ch対応のドルビーモバイルを搭載しているので高音質なサウンドも楽しめる。Bluetoothヘッドフォン等にも対応しているので、ワンセグの映画を壁や天井に投影し、ヘッドフォンで楽しめば、映画館で見ているような気分を味わえる。

 ただ、プロジェクターだからこその問題点もあった。

 「SH-05Cとボディを共通化していたため、当初スピーカーが裏面にあったのですが、SH-06Cの開発に取りかかって初めて、問題があることに気付いたんです。SH-05Cはデジタルカメラとして、手に持って利用するシーンが中心です。立てて使うことも想定していました。ですがSH-06Cは、プロジェクターを投影しているときに裏面を下にします。つまりスピーカーが下になってしまうんですね。そこで大慌てでスピーカーの位置を側面に変更することになりました」(永井氏)

Photo 通信システム事業本部 プラットフォーム開発センター 無線開発部 主事の東啓二朗氏

 これによって大変な影響を受けたのが、アンテナの設計だ。通信システム事業本部 プラットフォーム開発センター 無線開発部 主事の東啓二朗氏は「実はスピーカーが入っている位置は、当初Bluetoothのアンテナがあったところです」と話す。折りたたみ型の端末と違って、全面タッチパネルの端末はアンテナを配置しやすい外周部分が少ない。「端末の端の部分はアンテナの特等席で、いつもは優先的に配置できるのですが、変更せざるをえませんでした。そのため配線なども変える必要があり苦労しました」(東氏)

 「プロジェクターの部品をしっかり固定し、強度を確保する必要もありました。ケータイはユーザーさんが落としてしまうことなども想定しなくてはいけないので、SH-05CもSH-06Cも、ケースのパーツはシミュレーションによって最も効果的に強度が得られる分割構造にしています。具体的には、側面の飾りを板金のあるケース側で形成しています。この方がセットとしての強度が上がるからです」(片山氏)

“同じ”でありながら“異なる”デザイン

PhotoPhoto 通信システム事業本部 デザインセンターの徳力健太郎氏(左)と同デザインセンター 係長の真野靖彦氏(右)

 前述のとおり、SH-05CとSH-06Cは兄弟機ということで、ボディはかなりの部分が共通化されている。しかしデザイン面では差別化も図らなければならない。この問題に取り組んだのが通信システム事業本部 デザインセンター 係長の真野靖彦氏と徳力健太郎氏の2人だ。

 「最初にSH-05Cのデザインから始めたのですが、SH-06Cでもある程度共通化することを考えてデザインする必要がありました。そこで、SH-05Cはデジタルカメラとして、SH-06Cはプロジェクターとして置いたときの佇まいを意識しました」(徳力氏)

 「イメージしたのは、上品で高品質なAV機器ですね」(真野氏)

 だが兄弟機である以上、それぞれでデザインを大きく変えることはできない。そこでプロジェクターのレンズがある面を中心にデザイン処理を施すことにしたのだという。

 「常日頃からドコモ向け端末に共通のテーマである“クリスタルの質感”を実現する素材を探しているのですが、その中にフレーネル(Fresnel)レンズというものがありました。虫眼鏡のように使えるシート型のレンズなのですが、これにシルバーシートを裏打ちすると、球型の光の映り込みが現れるんです。これは面白い、ということで、SH-06Cのプロジェクターを表すデザインとして採用しました」(真野)

PhotoPhoto SH-06Cでは、SH-05Cのデザインを踏襲しながらも、プロジェクターとしておいたときの佇まいを意識し、高品質なAV機器のようなデザインとしている。プロジェクターのレンズ面にはフレーネルレンズにシルバーのシートを裏打ちしたパーツを貼り、クリスタルの質感を実現した

 ただ実際に成形を担当する片山氏は相当苦労したようだ。この部分は、裏と表の両側から、樹脂にフィルムを蒸着させるダブルインモールドという方式を採用しており、金型の作成は専門の金型メーカーに依頼していたという。しかし、フレーネルレンズのようなこのパーツは、裏面の溝がノコ刃状になっていて、成形するのが難しく、成形メーカーや金型メーカーの協力を得て、何とかデザインチームの要望に応えるものを作ることができた。さらに塗装もSH-05Cとは違いを出している。SH-05Cがマットな質感を採用したのに対して、SH-06Cは光沢のあるブラックとした。徳力氏によれば、光沢の塗装も塗装ムラが出やすいため、トライ&エラーを繰り返したという。

 片山氏は「SH-05CとSH-06Cは、3分の2は同じ構造ですが、SH-06Cにしか入っていない新しい部品も使っています」と語った。デザインを担当した徳力氏とアンテナ周りの設計を担当した東氏からは、デザインと部品の配置を巡って「100分の1ミリ単位」のせめぎあいがあったという話も聞けた。決してSH-05Cをそのまま流用して簡単につくられた製品ではないのだ。兄弟機であるSH-05CとSH-06C、形は似ていても、どちらにもシャープの開発陣の苦労と創意工夫、そして妥協なきこだわりが詰まっている。SH-06Cに触れてみればその完成度の高さを味わうことができるだろう。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年2月20日