王道路線で目指すは“究極のスマートフォン”――座談会で見えた SH-01Dの全貌ITmedia読者×シャープ開発陣(1/3 ページ)

ITmedia読者と「AQUOS PHONE SH-01D」開発陣による座談会が開催された。集まったのは、常日頃からケータイやスマートフォンに慣れ親しんでいる8人のユーザー。活発な意見交換の中から見えた、最新技術の秘密や従来モデルからの進化点を探っていこう。

» 2011年12月16日 09時30分 公開
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 12月7日、ITmedia読者とシャープの「AQUOS PHONE SH-01D」開発陣による座談会が、アイティメディア主催で実施された。

 SH-01Dは4.5インチHD液晶やデュアルコアCPU、光学手ブレ補正対応の1210万画素CMOSカメラなど、最先端のスペックが目を引くモデル。シャープが独自に開発した、スマートフォンの消費電力を抑える「エコ技」機能も新たに搭載し、よりいっそう使い勝手に磨きがかけられている。座談会では8人の読者を迎え、モデレーターはITmedia +D Mobile編集長の園部修と、アイティメディア主催のブロガーイベントに数多く参加し、シャープ端末に造詣の深い方波見豊氏が務めた。SH-01Dの開発コンセプトや全体的な特徴は通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事の磯部穂高氏と通信システム事業本部 グローバルマーケティングセンター コミュニケーション戦略部 部長の木戸貴之氏、ディスプレイは通信システム事業本部 グローバル商品開発センター システム開発部 参事の稲森良充氏、「エコ技」機能は通信システム事業本部 グローバルソフト開発センター Gプロジェクトチーム 係長の宇徳浩二氏に話をうかがった。

photophoto シャープ製「AQUOS PHONE SH-01D」(写真=左)。シャープ開発陣4人を囲んでの座談会(写真=右)
photophotophoto 座談会ではSH-01Dの実機を用意し、参加者には実際に操作感なども体験してもらった

基板サイズをSH-12Cの半分にして小型化を実現

photo シャープの磯部氏

 まずはSH-01Dの開発コンセプトを磯部氏が説明した。シャープはこの冬、SH-01D以外にも「AQUOS PHONE slider SH-02D」「AQUOS SHOT SH-03D」「Q-pot.Phone SH-04D」「SH-05D」といったモデルを投入するが、SH-01Dはその中でもフラグシップに位置付けられる。その上で「何を武器にするか」を考えたときに、「スマートフォンという商品を考えたときに、ディスプレイの役割は非常に重要になる。シャープは液晶のリーディングカンパニーなので、ディスプレイを商品特長の柱にできる」と磯部氏。そこで、他社と差別化を図るべく、4.5インチ/HD(720×1280ピクセル)の液晶を搭載した。

 ただし「ディスプレイが大きくなったからといって端末が大きくなることは許されない」(磯部氏)と考え、SH-01Dは前モデル「AQUOS PHONE SH-12C」の4.2インチから4.5インチへとディスプレイが大きくなりながら、幅と高さは1ミリ増とほぼ同等のサイズを実現した。さらに、「厚さは市場トレンドを考えると10ミリは切らないといけないと信念を持って取り組んだ」結果、厚さ(最薄部)はSH-12Cの11.9ミリから9.7ミリになり、約2.2ミリ薄くなった。なぜここまで薄くできたのか。磯部氏によると、SH-01Dでは基板のサイズをSH-12Cの半分にし、表と裏の両面に回路を乗せているという。SH-12Cでは基板の上にバッテリーを重ねていたが、SH-01Dでは回路の集積度を上げ、基板サイズを半分近くに小型化。バッテリーの下から基板をなくすことで、薄型化を実現できた。

photophotophoto SH-01D商品化の狙い(写真=左)。高精細ディスプレイ、ハイパフォーマンス、ハイスペックを実現した「ハイエンドスマートフォン」を目指す(写真=中)。SH-01Dの主な特長(写真=右)

CCDではなくCMOSを採用した理由

photo 1210万画素カメラをさり気なく配置

 シャープはこれまでiモードケータイのAQUOS SHOTシリーズを中心にCCDカメラを訴求してきたが、SH-01DのカメラモジュールにはCMOSセンサーを採用している。この点について磯部氏は、シャープのカメラ専用画像処理エンジン「ProPix」を12メガピクセルのCMOS用にチューニングしていることに加え、配線に邪魔されずにレンズからよりたくさんの光を取り込める裏面照射型CMOSセンサーを採用したことで、「CCDと比べても遜色のない画質に仕上がりました」と話す。

 さらに、撮影してから画像を読み出すまでの「データの転送速度」にも注力した。「撮影をすると、各画素が光を受けます。CCDはフォトダイオードで光を受けて、受けた情報を一括で呼び出せるのが特徴です。一方、CMOSはスキャナーで走査するように、光を受けてから順番に情報を読み出していくのでタイムラグが生じ、動く被写体の画像が歪みやすい傾向があります。そこで、今回のCMOSでは光を受けてからデータ転送するまでの処理速度を上げることで、歪みを抑えています。従来の800万画素CMOSよりも画素数は増えていますが、転送処理が速くなっています」と磯部氏は説明する。

photophoto CCDに匹敵する画質の写真を撮影できると判断し、カメラのセンサーにはCMOS(裏面照射型CMOSセンサー)を採用した

 画像の歪みを抑えるもう1つの特徴が、光学式手ブレ補正を採用したことだ。従来の電子式手ブレ補正ではソフト処理でブレを抑えていたが、画素をフルに使って補正できないため、画質が落ちてしまう。光学式手ブレ補正なら、中のレンズを動かすことでブレを吸収し、手ブレ効果を高めつつ画素をフルに使って撮影できる。CMOSはCCDよりもモジュールを小型化しやすく、同時期に発売されたSH-03DのCCDモジュールよりも小さいという。またバッテリーの持ちもCMOSの方が優れている。こうしたメリットを考慮し、今回はCMOSを取り入れた。

 「CCDはもうやらないのか?」という質問には、「捨てるつもりはない」と木戸氏は言う。「スマートフォンでCCDを採用するかは、求められるものに合致するかどうかが重要。性能は一長一短がある。今回はボディを薄くしたかった(のでCMOSを採用した)」

高画質化、薄型カメラを優先

 SH-12Cでは、3D写真を手軽に撮れるよう800万画素CMOSカメラを2つ搭載して話題を集めたが、SH-01Dのカメラは1つのみ。「2眼カメラをやめた理由は?」との質問が出ると、「SH-01Dでは“王道”を目指しました。日常的な撮影シーンを考えたときに、3D写真が撮れることよりも、高画素で手ブレ補正がよく効く方が、より幅広いお客様に分かりやすくアピールする力があると考えました。3D撮影は遊び心のある大変面白い機能ですが、今回はシャープが得意とする“美しい写真を撮る”ところで勝負したかったのです」と磯部氏は説明した。木戸氏は「シャープは(2002年に発売した)SH251iSで3D液晶をいち早く搭載してきたので、3Dの思い入れは強い。3Dの動画や静止画がこれほど簡単に撮影できるツールはなく、捨てたわけではありません」とした。

photo 「ブログモード」で撮影すると、あらかじめ設定したSNSやメールなどに撮影後に自動でアップロード、送信できる画面に切り替わる

 シャープのスマートフォンには、あらかじめ設定したブログやSNSなどに写真を簡単にアップできる「ブログアップ」機能が用意されている。写真を送ったりアップしたりする人には重要な機能だが、これが「あまり訴求されておらず、一般の人に伝わっていないのでは」との意見も出た。「撮った写真をどう活用するかは、通信機器ならではの特長と考えているので、従来から積極的に取り組んでいるところですが、メーカーの常として、どうしても新規機能の訴求を優先してしまう傾向があります。訴求が弱いと言われると、確かにそういう面はあると思うので、今後は見直していきたいですね」と磯部氏。

 SH-12Cにあったシャッターボタンがなくなったのも残念なポイント。これについて聞かれると、磯部氏は「AFロック/シャッター操作ができる2段階のシャッターボタンはこれまでの多くモデルではこだわって搭載してきました。ただ、このサイズでバッテリー容量を増やして防水対応なども行っているので、側面にたくさんボタンを配置するのは難しい面があります。カメラアプリのUIを刷新しており、撮影のしやすさは損なわれていないと思っています」と回答。サイズを優先した結果、今回は省かれたようだ。

 「子どもを撮ることが多いので、(シャッターボタンを押してから撮影されるまでの)レリーズタイムラグがどれだけ少ないのかを気にしている。SH-01Dではどうか?」との質問も出た。「カメラの起動や撮影後の保存時間は速くなっています。タイムラグについても1つずつ詰めました」(磯部氏)という。

 SH-01Dの画素数は1210万画素、SH-03Dは1610万画素にも及ぶ。「画素数競争はもう天井では?」との指摘もあった。「そこは悩むところ。画素数競争を一番仕掛けているのがシャープですから。そろそろ天井のところまでは来ています。だいたい1年ごとに画素数を上げてきましたが、ちょっと止まってきたかなと」(木戸氏)

あらゆる環境で見やすい――ディスプレイへのこだわり

photo シャープの稲森氏

 「液晶のシャープ」と呼ばれるように、液晶の美しさと見やすさが従来モデルよりも向上している。SH-01Dの液晶でまずこだわったのが「超高精細」。「SH-01Dの液晶は329ppiなので、iPhoneと比較しても負けません。人間の目で見ても(ピクセルの)区別が付かないほど高精細です」と稲森氏は胸を張る。本体の幅を抑えながら大画面化を実現できるよう狭額縁設計にも注力した。ディスプレイの両端はギリギリまで抑えており、この幅は従来機よりも狭くなっているという。色再現範囲を示すNTSC比は72%を実現し、「他の端末と同じコンテンツを見ると、色味の違いが分かる」(稲森氏)ほど鮮やかだ。

 ディスプレイに採用した高画質エンジンでは、色調整や黒レベル補正を行う「高画質回路」、のぞき込みを防止する「ベールビュー」、消費電力を抑えながら環境に応じて明るさを調整する「バックライトコントロール」などが設定に応じて動いているという。また、液晶の見え方には個体差が出ないよう「ホワイトバランス調整」を行っている。「液晶、電源回路などはばらつきがありますが、生産ラインで1台ずつセットに組んだ状態で調整し、誰が手にしても同じように見えるようにしています」(稲森氏)。

 シャープのケータイやスマートフォンではおなじみの「カラーベールビュー」については、実はSH-01Dではさらに機能向上が図られている。「ベールビューでは液晶の光学特性を利用して、のぞき込みを防止する遮蔽画像を埋め込む処理をしていますが、画面が暗いときはベールビューの効果を出すことが苦手です。実際、お客様より暗いときには遮蔽効果が下がるというご指摘もいただいていました。そこで、SH-01Dでは画面が明るいか暗いかを判別して、適応的に設定値を切り替えることで、よりベールビューの効果を高めています」(稲森氏)

photo 上下左右からののぞき込みを防ぐ「ベールビュー」

photo ディスプレイ右上の照度センサーが明るさを判定する

 見やすさに大きく貢献するのが、液晶とガラスパネルの間の空気層をなくす「リフレクトバリアパネル」と、外光が当たった状態でも視認性を保つ「アウトドアビュー」だ。アウトドアビューは、「エコバックライトコントロール」と「明るさを自動調整」をオンすると有効になる。「屋内環境など輝度がそれほど高くないところではきれいに表示できますが、1万や10万カンデラなど、太陽光がバックライト輝度に勝ると見えにくくなります。そこで、1万カンデラ程度の光を受けると、画像処理で見栄えをよくしています。同時にバックライトの電流を自動で抑えながらエコにも配慮しています」と稲森氏は説明する。具体的には、画像処理で画面全体を明るくすることで、見やすい表示を実現しているという。外光がどれだけ明るいかは、ディスプレイの上にある明るさセンサーが判定している。

photo 空気層をなくすリフレクトバリアパネルを採用したことで、コンテンツをより鮮明に表示できる

 以下4枚の写真は、同じ環境で左がアウトドアビューをオフ、右がアウトドアビューをオンにして比較したもの。アウトドアビューを適用した画面の方が、アイコン、文字、写真の輪郭などがくっきり表示されて見やすい。

photophoto 右のホーム画面は全体的に明るい表示になり、アイコンや文字が見やすくなっている(写真=左)。右画面の方が、アイコンや文字がはっきり表示されている(写真=右)
photophoto こちらの写真は違いが一目瞭然。右画面の方が果物の輪郭が強調されていて見やすい(写真=左)。ブラウザでは文字や背景の白地が明るく表示されていて読みやすい(写真=右)

 SH-01Dの解像度はSH-12CのQHD(540×960ピクセル)からHD(720×1280ピクセル)に向上しているが、解像度をどこまで上げるかについては「かなり議論した」という。「液晶には表示を制御するためのトランジスタ(RGBピクセルごとにある)および配線部分が必要であり、それ以外の部分(光の通る部分:透過)で表示しています。例えば、同じ画像インチサイズでQVGAからVGAになり解像度が4倍になると、光の通る部分が4分の1以下となり、輝度が極端に落ちます。同じようにように見えるためには相応のバックライト輝度アップが必要となり消費電力が増えます。また、解像度アップにより回路部分のデータ処理量も大幅に増えるため、消費電流はその分増加することとなります」と稲森氏は話す。高解像度化はバッテリー(電池持ち)の面で考えると厳しい状況になっており、スマートフォンサイズでの解像度アップは限界に来ているのかもしれない。「今後は単に解像度を上げるのではなく、解像度を上げることでお客様の利便性も上がるなど、ニーズに合った仕様でかつ、他社の動向を踏まえながら液晶のシャープといえる開発を考えていきたいです」(稲森氏)

 ディスプレイの強度については、Corning Gorilla Glassなど特記すべきネーミングは使われていないが、「強度はGorilla Glassと同じくらい」(木戸氏)だという。

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