“安定志向層”に向けて最先端の技術を凝縮――ITmedia読者×シャープISW16SH開発者座談会WiMAX、NFC、Feel UX採用の秘密(2/3 ページ)

» 2012年07月23日 09時30分 公開
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「消費電力」「温度」「通信性能」に注力したWiMAX

photo WiMAX機能の詳細を説明する長見氏

 続いて長見氏がWiMAX開発の裏話を披露した。auのWiMAXサービス「+WiMAX」に対応したスマートフォンは2010年4月から登場しており、シャープのWiMAX搭載スマートフォンが登場するまでに1年以上を要した。「シャープは4Gの対応が遅れているイメージがあると思いますが、実はWiMAX搭載端末の開発は2年前に始めています」と長見氏は話す。ただ商戦期ごとにキャリアが展開したいラインアップの兼ね合いやタイミングなどの問題もあり、なかなかシャープの商品に搭載する機会には恵まれなかった。「最後発ということもあり、他社の現行モデルより劣るものは出せません。今回は自信を持って送り出せます」と同氏は力強く話す。長見氏によると、WiMAXの通信モジュールは村田製作所製のものを使っているが、量産するまで通信性能、サイズ、厚さなどを3回も変更したという。

 WiMAXの通信モジュールを搭載するにあたり、どんな点を工夫したのだろうか。シャープとしてこだわったのが「消費電力」「温度」「通信性能」の3つだ。まずは消費電力について、「去年から一昨年にかけてWiMAX機器が増えてきましたが、消費電力が多くて訴求が進まなかったため、KDDI様からも電力を抑えられないかと相談されました」と長見氏は話す。そこでシャープが取り組んだのが、端末と基地局の接続時間を短縮することだ。長見氏は「今後は他社メーカーも対応すると思いますが」と前置きしながら説明する。「これまでWiMAXでは基地局との接続を保つためのページングを、3Gと比べて約4倍のスキャン間隔で待受けしていたため、消費電力が増していました。しかし夏モデルではKDDI様が基地局を改修し、通信間隔を広げることで、待受け時の消費電力を約4分の1に減らせました」。

 スマートフォンの普及に伴い3Gネットワークへの負荷が高まり、KDDIはWi-FiやWiMAXへ通信をオフロードする施策を打っている。一方でWi-FiやWiMAXを利用することで消費電力が増えるデメリットも生じる。そこでKDDIは夏モデルからWi-Fiをオンにした際のバッテリーの持ちを改善するほか、3GとWi-Fiへの切り替え時間を短縮している。こうした点も踏まえ、長見氏は「従来機と比較しても、使い勝手の良さは誇れるものがあると自負しています」と胸を張る。「3GとWi-Fiはどのように切り替えているのか」との質問が出ると、「これまでは弱電界のWi-Fiをつかんでしまうことがありましたが、ISW16SHではしきい値を高く設定し、より安定かつ高速通信が保てるネットワークを自動選択する機能を入れています。数Mbpsの通信が保てればネットワークを維持し、それ以外は切るようにしています」と長見氏は回答した。

 温度については、WiMAX使用時に限らず、例えば充電しながらテザリングを使うなど、スマートフォンに過度な負荷を与えると発熱する傾向にある。シャープもこの点は重くみて、「開発当初から温度を徹底的に分析し、従来機と比べて圧倒的に温度が上がらない仕組みになっています」と話す。これはWiMAXだけでなく、CPUの能力を可変させて熱をうまく逃がしているという。また、他社のWiMAXスマートフォンでは一定値まで温度が上昇するとWi-Fi通信を強制的にオフにするものがあるが、ISW16SHでは利便性を損わないよう、温度が上昇して通信機能がオフになることはない。温度が上がりそうになったら「通信速度を落として接続性を維持する」とのこと。

 とはいえ「高負荷な機能を使うと温度は上がりますよね?」との声も参加者から挙がったように、温度がある程度上昇するのも事実。それだけに、熱対策の試験は最悪のケースを想定して実施したという。「WiMAXをオンにした状態で動画を撮りながら、3Gで通話をするという意地悪な試験をしています(笑)。社内の規定があり、安全性を考えて外郭温度と環境温度の差が20度を超えないよう工夫しています」(長見氏)

 通信性能については、テザリングを快適に利用できるようこだわった。WiMAXと同じく、テザリング機能を搭載したauスマートフォンもISW16SHが初めてだ。「Wi-Fiが2.4GHz、WiMAXが2.6GHzから3チャンネルを使っていますが、この3チャンネルとWi-Fiを同時に動かせるよう、アンテナの配置やアイソレーションの確保などでいろいろ工夫しています。通信状態にもよりますが、他社以上の性能は提供できると思っています」と長見氏は胸を張る。なお、テザリングの接続台数は、他社製のスマートフォンでは10台まで可能なものもあるが、ISW16SHは最大5台。その理由を参加者から問われると「通信性能を確保するため」と長見氏は説明した。

 「Wi-FiやWiMAXは常にオンにしておくべきか」(参加者)は悩ましいところだが、「長くバッテリー持たせたいのならオフにした方が消費電力は少ない」(長見氏)とのこと。ただ3G通信をオフロードしたいキャリア(KDDI)にとってはWi-Fi/WiMAXはオンにしておいてほしいところ。消費電力の面では不利になるので、ISW16SHではWi-FiとWiMAXどちらも通知バーから簡単にオフにできるようにした。

FeliCaとの違い、NFCならではのメリットとは

photo NFCについて説明する田中氏

 続いて、NFCについて田中氏が基本から分かりやすく説明してくれた。まずNFCとは「Near Field Communications」の略で、日本語にすると「近距離無線通信」。NFC端末同士をかざしてアドレス帳のデータを交換したり、リーダーライターに端末をかざしてクレジットカードの情報を読み出したり、電子マネーを使って代金を支払ったりできる。ただ、これらの機能はFeliCaにも実装されている。「FeliCaもNFCの一種で、FeliCaの通信部分はNFCの一部として国際標準に取り込まれています。FeliCaはセキュアなICチップです。暗号処理などのセキュアなデータを格納するのは日本独自仕様となっていて、国際標準には取り込まれていません」と田中氏は説明する。

 FeliCaはソニーが策定したもので、他にフィリップス社の「Mifare」、Motorolaが開発した非接触ICカードもNFCの仕様に含まれる。なお、現在発売されている一般的なNFC対応スマートフォンは、NFCの通信部分のみを搭載しているので、セキュアなデータを扱うFeliCaやMifareのサービスは利用できない。一方、ISW16SHにはNFCの通信機能に加えてセキュアなデータにアクセスする機能も備えているので、MifareやMotorola方式のアプリをインストールすれば、海外で交通サービスや電子マネーが利用可能になるわけだ。もちろん日本ではFeliCaのサービスもフルに使える。

 さらにNFCならではの利点として、田中氏は「APIが公開されているので誰もがアプリを開発でき、参入障壁が低いこと」を挙げる。「NFCは世界標準の規格なので、潜在的なユーザー数が多く、NFCを搭載したスマートフォンも増えるでしょう。世界中の人に使ってもらえるので、アプリ開発者やサービス提供者には旨みがあります。実際、Google Playで「NFC」と検索すると1万以上のアプリがヒットします」(田中氏)

photophotophoto NFCとは? FeliCaとの違いは?
photophotophoto FeliCaの通信規格はNFCの一部であり、セキュアなデータを扱う部分がFeliCaの独自仕様となる
photophotophoto ISW16SHはNFCとFeliCaのサービスをフルに利用できる
photophotophoto NFCならではの利点はアプリを開発しやすいことと、海外で使えること(写真=左、中)。海外でもおサイフケータイを使える日が来るかもしれない(写真=右)

 NFCもFeliCaと同様にアンテナから電波を発しているので、消費電力が気になるところ。実際に読者からも質問が出た。ソニーが開発したFeliCaの通信モジュールは、動作時の消費電流が1mA以下に、待機時の消費電流が0.1μA以下に抑えられているが、NFCはどうか。実はNFCはディスプレイを点灯させないと、FeliCa同様に外部からの無線を待ち受ける状態に移行して自ら電波を発することはない。つまり画面を消灯すれば、FeliCaのみを搭載している端末と同様の非常に低い消費電力となり、NFC機能を搭載したことによる電力の増加はない。ディスプレイが点灯してNFCが動作するときには「10mAほど電力が上がる」(田中氏)とのこと。ISW16SHでは通知バーにNFCのオン/オフができる項目も用意しているので、不要なときは切っておいた方がいいだろう。

 NFCとFeliCaの両方を搭載するにあたって苦労したのが電波の干渉だ。「Android OSの仕様上、画面が点灯するとNFCの無線チップが電波を発し、相手を呼び出そうとします。そこで問題になったのが、NFCがオンになった状態でFeliCaのサービスを使う場合です」と白石氏は話す。特にモバイルSuicaはJR東日本の試験が厳しく苦労したそうだ。NFCがオンの状態……例えば通話をしながらモバイルSuicaでJRの改札を通る場合、干渉を起こさないようにするのが難しかったという。白石氏によると、実際は干渉しているが、時間で調整する(時分割にする)ことで、ユーザーから見たら干渉しないようにしているそうだ。「ロックを解除して画面を点灯させながら改札を通るケースはそれほど多くはないでしょうし、よほど素早く端末をかざさなければ大丈夫では」と田中氏も話していた。

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