モバイル向けメモリの本命は?──IntelはOUMに期待

近い将来,モバイル向けのメモリは大きく変わる。各社がさまざまな次世代メモリを研究する中,Intelが候補として研究中なのは,XScaleとの混載も可能なメモリだ。

【国内記事】 2001年7月13日更新

 インテルは7月13日,携帯機器向け次世代メモリ技術に関する取り組みを公表した。携帯電話やPDAなどのメモリには現在フラッシュメモリが使われているが,次世代の不揮発メモリとして,低価格なコード保存用途向けに「Polymerメモリ」,コード/データ保存用途に「Ovonics Unifiedメモリ」などの候補を研究しているという。

モバイル向けメモリへの要求

 現在,iモードなどの携帯電話には64Mビットのフラッシュメモリが1,2個搭載されているという(5月1日の記事参照)。機能の増大やJavaの搭載とともに要求されるメモリ容量も増えており,最近では128Mビットチップを搭載したものも出てきているという。

 モバイル向けのメモリに要求される条件は,まず低価格で低消費電力であること。そして不揮発性(電源を切っても記憶内容を保持できる)で,CPUなどのロジック回路との混載が容易であることが求められる(5月17日の記事参照)。

 しかし今日の一般的なメモリ,DRAM,SRAM,フラッシュメモリなどではなかなかこれらの条件を満たせない。

メモリ名 問題点
DRAM 揮発性,ロジック回路との混載が困難
SRAM 高価,揮発性
フラッシュ 書き換え時間が遅く,書き換え/消去回数が有限

 フラッシュメモリに関しても,微細化による高集積化には限界がささやかれ始めており,最近では1つのメモリセルに2ビット以上の情報を記憶させる多値フラッシュメモリの研究が盛んだ。

次世代メモリの特徴は?

 これらの問題を解決すべく研究されているが,「MRAM」「FeRAM」「Polymerメモリ」「Ovonics Unifiedメモリ」などの次世代メモリだ。

 MRAMは,「フロッピーディスクを半導体プロセスで小さくしたようなもの」(インテル通信技術本部ワイヤレス・コンピテンシ・センターADCの遠藤千里部長)。電流により磁化の方向を切り替えることでデータを記憶し,不揮発性,低消費電力,読み出し/書き換え可能回数が無限などの特徴を持つが,「磁性を持った材質で作るので,(ロジック回路に使われる)CMOSプロセスとの親和性が問題。(インテルとしては)あまり注目していない」(遠藤氏)という。

 FeRAMはFRAMとも呼ばれ,富士通がスマートカードに利用するなど製品化され始めている。不揮発性で高速,フラッシュメモリより読み出し/書き換え可能回数が多いという特徴を持つ。

 Polymerメモリは「プラスティックを使ったもので,書き換えが少々遅いが,単位面積あたりの価格が非常に安い」(遠藤氏)のが特徴。不揮発性で,フラッシュメモリと比べると書き換え時間は短く,CMOSとの混載も容易だ。インテルは「低価格で高容量なため,携帯機器のデータ保存用途に適している」としている。

Photo
Polymerメモリの位置付け。価格や速度において,半導体を使ったメモリとディスクを使ったメモリの中間に位置する

 Ovonics Unifiedメモリ(OUM)は,CD-RWやDVDに使用されているカルコゲン化物を使い,熱によって相変化を起こすことでデータを記憶する。「フラッシュに対して書き換え回数が2桁ほど多い。CMOSロジックの隣に容易に搭載できる」(遠藤氏)のが特徴だ。

Photo
FeRAMやOUM,MRAMの位置付け。書き換え可能回数(横軸)が多く,速度(縦軸)も高速。写真の右上に位置するSRAMやDRAMは,回数に制限がなくさらに高速だが,不揮発性だ

 このうち,インテルが注目するのがPolymerメモリ,OUMだ。モバイル向けの低価格なコード保存用にPolymerメモリ,コード/データ保存用にOUMを候補として研究中だと遠藤氏は語る。

 インテルは180ナノメートルのリソグラフィを使い,OUMの4Mバイトのテストチップを製造済み。「(OUMは)デスクトップPCで要求されるスピードに達しないが,携帯電話やPDA用には充分な性能」(遠藤氏)だという。

インテルが重視するのはロジック回路

 フラッシュメモリの限界が見え始め,モバイル機器の需要が増大するにつれ,各社が次世代メモリ開発に取り組み始めている。

 MRAMに取り組むのは,主にIBM,Motrola,Infineon(2000年12月)。また,FeRAM陣営にはNECや日立,Samsung,東芝,富士通,松下,IBM,Infineon,Micronなどそうそうたる半導体メーカーが名を連ねる。

 OUMは,IntelのほかST Microなど。参加企業の多さから有力と見られるFeRAMではなく,OUMを候補とするのは「Intelが得意とするロジック回路を中心に考えた結果」だと遠藤氏は語る。

 インテルが狙うのは,単なる次世代メモリではなく,モバイル向けの高速プロセッサ「XScale」とメモリとの組み合わせ。先日もフラッシュメモリとXScaleコアを混載できるプロセス技術の開発を発表している(5月17日の記事参照)。

[斎藤健二,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!