ワイドバンド時代到来で「Stinger」が日本でも？

マイクロソフトの「Stinger」とは，いったいどんなスマートフォンなのか？ Wireless Japanの会場で担当者に話を聞いた。

【国内記事】

2001年7月19日更新

　東京ビッグサイトで開催された「Wireless Japan」のマイクロソフトブースでは，携帯電話プラットフォーム「Stinger」のプロトタイプモデルを見ることができる。

　展示されているのは英sendoのStingerを組み込んだ携帯電話だ。「欧州では（Stinger搭載携帯電話の）キャリアトライアルも始まっている」とマイクロソフト製品マーケティング本部Windows製品部エンベデッドグループの佐野勝大マーケティングマネジャーは語る。

　StingerはMicrosoftのスマートフォン向けプラットフォーム。Windows CEをベースとし，必要なモジュールを組み合わせることでさまざまな機能を実現する。

　展示されたStinger搭載携帯電話はかなりスマートなもの。“Windows CEベースの……”と聞くと，携帯電話にPocketPCが載ったようなものを想像してしまうが，ディスプレイが大きめなことを除けば日本の携帯電話と同じようなサイズだ。

　Microsoftは，現在3つのモバイル向け技術を推進している。1つがPDA向けの「PocketPC」，2つ目がフィーチャーフォン（ブラウザフォン）向けの「Mobile Explorer」（用語）で，3つ目がスマートフォン向けの「Stinger」だ（2000年8月の記事参照）。

　Mobile Explorerは，現在iモード携帯電話機に搭載されているようなWebブラウザソフト。WMLとcHTMLの両方に対応しているのが特徴だ。既にソニーやSamsungが欧州向け携帯電話で採用している。

　Stingerは携帯電話向けのプラットフォーム──いわばPCでいうOSのようなもの。現在の携帯電話の多くが搭載しているARMアーキテクチャーのCPUに対応しており，「（クロック周波数としても）現在のハイエンドの携帯電話なら充分に動作する。ARM7ベースのもので十分だ」（佐野氏）という。

メリットはサーバとの連携

　Stingerは特に“Windowsと親和性が高い”というわけではないようだ。「（Stingerを）PCと特に直接つなげるつもりはない」と佐野氏も言う。

　Stingerのメリットは，実はMicrosoftの持つサーバソフトとの連携機能にある。Stingerは「Pocket Outlook」や「Pocket Internet Explorer」などのアプリケーションを搭載しており，Exchange Serverなどとデータ交換が可能だという。このような機能を搭載しようとした場合，通常は携帯電話に載せるアプリケーションとサーバアプリケーションの両方を開発しなくてはいけないが，「Stingerの場合，（サーバとStingerを）セットで提供できるのがメリット」だと佐野氏は言う。

　キャリアや携帯電話メーカーが，インターネット上のサーバと連携したアプリケーションを提供したい場合，Stingerを利用することで確実にシステムを作り上げられるという。また，Microsoftはキャリア網からインターネット網へのゲートウェイサーバも発売する予定だ。

ソフトウェア開発も簡単に

　また，近頃携帯電話の機能増大に伴い，ソフトウェア開発の難易度が高くなり，ソフトウェアのバグによる不具合が相次いでいるが（6月18日の記事参照），Stingerの採用によってソフトウェア開発がやりやすくなるとも言う。

　「（Stingerを利用すれば）各機能がモジュール化されているため，ほかに影響を及ぼさずに機能を追加したり修正したりできる」（佐野氏）

　ちなみに，先に挙げた「Pocket Internet Explorer」は，PocketPCに搭載されているのとは別モノ。「（PocketPC用の）Pocket IEは4Mバイト程度の大きさがある。バランスとして携帯電話には入れられない」（佐野氏）

　このStinger，日本のキャリアやメーカーにも「割と反応は上々」（佐野氏）だが，1つの問題は“アプリケーションサイズ”のようだ。

　「詳細は答えられないが，“kバイト”の単位ではない」と佐野氏は言う。まだまだメモリサイズが潤沢とはいえない携帯電話では，やはり開発者はアプリケーションサイズを気にするようだ。

　しかし携帯電話に搭載されるメモリサイズは年々増大し，既に10Mバイト程度。NECなどは「2005年には100Mバイトになる」と語っている（7月17日の記事参照）。

　そして機能は第3世代携帯電話でさらに増大し，ある程度モジュール化された“プラットフォーム”と呼べるものを導入しないと，早晩ソフトウェア開発は破綻するという声もある。

　IMT-2000，ワイドバンドの携帯電話が立ち上がる頃には，Stingerのようなプラットフォームが必須となる可能性は高い。

[斎藤健二，ITmedia]

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