企業タイアップ動画で成功を目指すオルカビジョン

FOMAなどで，モバイル分野でも期待が高まる動画配信。今後どういったコンテンツが期待されるのか，「アキバTVドットコム」などを制作しているオルカビジョンに話を聞いた。

【国内記事】

2001年7月26日更新

　10月からFOMA本サービスの開始が予定され，ますます展開が期待されるモバイル動画配信サービス。今回はM-stage visualでも「アキバTVドットコム」や「パルコ・ドット・ティーヴィー」などのチャンネルを開局しているオルカビジョンに，今後のコンテンツはどういったものが考えられるのか，話を聞いた。

オルカビジョンのコンテンツ

　答えていただいたのは企画営業部の金村徹シンジケーター。まずは同社の映像コンテンツの現状について教えていただこう。

　「現在，『SONY Mega-channel』や『Hi-Ho MediaTV』など11のサイトで番組を提供している。1つのコンテンツは1カ月ほどサイト上に置かれるわけだが，トータルで1万人以上に見てもらっている」（金村シンジケーター）

　「番組に関しては，どうやらより“深い”情報の方がアクセス数が多くなるようだ。単なるBill Gatesの記者発表会中継などよりも，自作PCとか，マシンに対する開発者からのコメントだとか，そういったものの方が多くのアクセス数を稼ぐ。我々は，今後もセグメントなターゲットに向けて番組を作るつもりだ」

収入源は広告ではない

　同社のコンテンツ制作は，PCやモバイルデバイスから無料で見ることができる。広告が常に番組の間に割って入るテレビならともかく，こうした動画配信は何を収入源にしているのだろうか。

　「アキバTVドットコムに関しては，広告収益は多くを占めていない。あれはわが社のセールスプロモーションというか，技術力を見せるためのものだ」（金村シンジケーター）

　「オルカビジョンは基本的にBtoBのコンテンツを作っている。まずアキバTVドットコムなどで技術力を示して，共同で番組を制作するパートナーを探す。そこでパートナーをつかんだら，一緒に客を捉えるツールとしてのビジネスモデル――番組を作り上げる」

　同社の番組の仕組みはこうだ。たとえばパルコと共同で出資して立ちあげたパルコ・ドット・ティービーに関していえば，25〜35歳のF1層と呼ばれる購買力の強いターゲットに対して番組を制作している。パルコの関連情報を流すことで視聴者は興味がわくだろうし，詳細情報にもリンクさせてあるから購買につながりやすい。場合によってはそこでクーポンを発行するなど，あくまで“リアル”に誘導するための仕掛けなのである。

　「先ごろ『ひらけごまTV』というチャンネルを開局したが，このコンテンツの対象は5〜7歳児。しかし実はその両親も巻き込んだつくりになっている。番組ではデジカメの紹介なども行っているが，そこで当然親子のコミュニケーションツールとして，デジカメなどを購買する動きが想定される。セールスが生じるわけだ」

モバイルではどんな展開が考えられるか

　今後モバイル動画配信では，同社の方針はどうなるのだろうか。

　「モバイル機器では確かに画面サイズの制限があるが，従来からPCで提供する画面サイズも小さかったので特に問題はない。通信速度の制限に関しても，我々は56Kbpsのモデム通信利用者が多かった時代から続けている。64Kなら64Kなりの表現のノウハウはある」

　「モバイルという視点では，たとえば店に入る前に，（固定カメラなどの映像で）店のムービーを見てから予約を行うとか，ムービーと連動した割引サービスの仕組みも考えられる」（金村シンジケーター）

　モバイルデバイスは手軽に持ち運べるため，街中での動画を見ることも増えてくることが予想される。これを利用した，新たな集客ツールとしての動画利用が考えられそうだ。同社はPacket Videoの提供する，アプリケーション開発支援のための総合プログラム「PacketVideo Global Developer Network」にも参加している。今後モバイル動画配信に向けて取り組みを強化する考えのようだ。

　モバイル動画配信はテレビと異なり，番組の長さも短く広告も入らない。そんな中でオルカビジョンのように，企業と密着した，顧客獲得にを目指す番組づくりを推進していく考えのコンテンツプロバイダも存在している。

[杉浦正武，ITmedia]

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