携帯電話のつかいかた【ベルサイユ宮殿観光】──旅先携帯日記:フランス編

現地で購入したプリペイドケータイを持って,ベルサイユ宮殿への観光。現地滞在の長い日本人ガイドさんに私見としての“フランスケータイ文化”を語ってもらった。“業界人”ではない,一般の方からの視点としての興味深い話。

【フランス発】 2001年8月15日更新

13日 携帯電話のつかいかた【ベルサイユ宮殿観光】

初めての一日まるごと観光

 フランス滞在4日目である。本日は一切仕事もなく,すべての時間を観光に費やす。とはいえ,独自に行動しきるにはフランス語がまったく分からない。これでは実のところ,どこを観光しても説明すら分からない……ということで昨夜のうちに,Web上で日本人向けの現地ツアーを探してみた。

 翌日,朝8時に集合。右隣がヤマト通運パリ支店。左隣のジュンク堂書店パリ支店をはさんで日本通運パリ支店があるという,“ここは秋葉原か”との錯覚すら起こりそうな場所だ。またもやPeugeot製の巨大なバスに乗り込み出発。ほとんどが定年後のご夫婦での旅行か仲良し主婦の団体旅行という雰囲気であり,若めの男性は筆者1人。もしかすると,非常に恥ずかしいことをしているのではないかとも思ったが,仕方がない。

 数時間かけてパリ在住30年という女性ガイドの滑らかな説明を聞きつつ内部を回る。特に美術に関心のない筆者でも,なるほどと思うことが多く,日本人向けの現地ツアーはオススメの観光方法であると納得した。昼食の時間では,ガイド氏と同じテーブルになり,ここぞとばかりフランスの携帯事情について聞いてみた。

極私的フランスケータイ事情(文化編)

筆者:フランスでは携帯電話を持っている人が少ないのか? 日本では,普段の暮らしの中ではもっと頻繁に携帯電話で話している人を見かける。ここではそうではないように思うが。

ガイド:私自身は去年まで持っていなかった。だが,この仕事をしている中で日本人観光客に「この仕事で携帯電話を持っていないなんて!」と怒る人がおり,会社で契約した。だが,携帯電話自体は珍しいものではない。大人はみんな持っている,といっても過言ではないが子供は持っていない。

筆者:シャンゼリゼ通りでも,通話する人が少ないように思う。腰から下げている人や手に持っている人は見かけたのだが……。持っていても,あまり使わないのだろうか?

ガイド氏:こちらにずっといる身なので比較はできないが,日本に時々帰った時と比較すると「マナー」の問題が大きいのではないか。携帯電話は持っていてもそんなにどこでも(電車の中でも,という話を筆者がしたせいか)のべつまくなしに話すということはないと思う。また,使用頻度も話に聞く日本とは違うのだろう。

筆者:ここは観光地(ベルサイユ宮殿)だが,確かに話している人を見かけない。目の前にいるあなた自身も「持っているけど使わない」ということなら,頻度の話は正しいのだろう。また,日本では携帯電話から「ショートメール」(SMS)を送ることが一般的だ。こちらではどうか?

ガイド氏:機能の存在は知っている。だが,打ったことはない。時々宣伝のようなショートメッセージが来る(おそらく「スパムメール」だろう)が気にしていない。また,仲間内でも使っている人を知らない。日本ではそんなに使っているのか?

筆者:いまや,その機能を手にすることが携帯電話の買い替えの理由になるほどだ。またテレビのコマーシャルでも頻繁に出ている。こちらではテレビでもそういう機能のアピールはないようだが,宣伝されていないのか? また,WAPは使っているか?

ガイド氏:想像の範疇を越えている。WAPという機能は聞いているがこれも使っていない。確かに,しばらく前に日本に帰ったときに電車の中でも何人もが携帯電話のボタンをぷちぷち押していたが,そういうことなら納得できる。滞在中に感じているだろうが,こちらでは間違いなく「特別な機能」だと思う。使っている人を知らない。

筆者:日本では,社会問題にすらなろうとしているが……。“携帯電話はみんな持っているが,あまり使わないのとマナーを心得ている”というところが日仏の違いなのだろうか?

ガイド氏:私は専門家ではないが,そうだと思う。国民性もあるのかもしれないが,何より日本での話は聞けば聞くほど異様だ。だが,フランスに観光に来てまで携帯電話を持っているあなた(筆者)を見れば,それが事実であることはよく分かる。

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日本ではなんの苦労もなく探せるであろう「携帯電話で話す人」だが,こちらでは少々苦労がいる。まず,10代,20代が「たわいもない話」をしているのは見たことがない

 なるほど……と,自分自身の行状を考えて納得してしまった。携帯電話がないとパンツをはいていないも同じ,と感じている自分のことはよく知っている。また,「マナーの問題」という一言はあまりにも大きい。

 観光地を回り続ける仕事をしているガイドに言わせると,「こちらではどんな美術館でも触ったり壊したり座りこんだり……というようなことは考えられない。だから,美術品が手に近いところにある。だが,ここ数年の日本人の,特に10代と思しき観光客は異質な人を時々みかける。あなた(筆者)の言うことが彼らのしていることだとすると理解できる気もする。だが,あまりに異様だ。なにかおかしくなってきているのではないか……?」

同じく存在する技術。異なり存在する文化

 もちろん,筆者の出歩いたのはほんのほんの,一部の「フランス」であることは間違いない。数日の滞在で何が分かるわけでもあるまい。

 だが,あれだけ手軽に携帯電話が購入でき,エッフェル塔の頂上にもビルのてっぺんにも,携帯電話のアンテナと思しきものは簡単に目にすることができる。フランスの誇る新幹線TGVから望む田園風景にも,そのど真ん中にいきなりにょっきりと立つアンテナも珍しいものではない。それだけ携帯電話は“技術としては普及している”はずだ。

 だが,一番違うのはGSMというテクノロジーでも加入方法でもなく,そこに住む人間の常識やマナー,それを形作る国民性なのだろう。

 ベルサイユ宮殿を後にし,ホテル近くのモンパルナス・タワーという56階建てビル最上階のレストランに向かう。ここでも,携帯電話をもてあそぶ人を見ることはなかった。

[奥島 大,ITmedia]

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