解説:さまざまなARMプロセッサ 〜16ビットから32ビットまで〜一口にARMプロセッサといっても,ARM7とかARM10と呼ぶこともあれば,ARM V5とかARM V6という言い方をする場合もある。ARMプロセッサはどのように進化し,どのようなバリエーションを持っているのだろうか。
前回はARMプロセッサの概略を説明したが(8月20日の記事参照),もう少し細かい説明をお届けしたい。一口にARMプロセッサといっても,ARM7とかARM10なんて言い方をすることもあれば,ARM V5とかARM V6なんて言い方をする場合もある。実はこの両者,全く異なった事を指しているのだが,ぱっとこれを理解するのは難しい。そこで今回はARMプロセッサの系譜をご紹介する。 ARMアーキテクチャの変遷ARMプロセッサを分類する場合,アーキテクチャと実際のプロセッサを分けて考える必要がある。これは別にARMだけの話ではない。たとえばIntelのプロセッサを考えると,32ビットプロセッサだけを見ても,
の6種類のアーキテクチャに分類される。その上で,PentiumIIIならばKatmaiコアのSlot1タイプ,CoppermineコアのSlot1タイプとSocket370タイプ,TualatinコアのSocket370タイプ,Coppermine-128KコアのCeleronがデスクトップ用にリリースされている。ではARMの場合はどうだろう。 ARMの場合,現在のところ5つのアーキテクチャが存在する。名称は簡単で,それぞれARM Version 1/2/3/4/5と名前を付けられている。最近IntelとTIが,新アーキテクチャであるARM Version 6のライセンス供与を受けるというニュースが発表になったが(7月31日の記事参照),こちらはまだ詳細が未発表の将来製品であり,とりあえずはVersion 5が最新製品である。 以下,簡単に説明すると,
Acornが作成した初代ARMプロセッサに採用された,26ビットアドレッシングの製品。機能は極めて簡素で,コプロセッサも存在せず,極めて少数のCPUのみが生産された。
量産出荷された最初のバージョン。基本的にはVersion1と互換ながら,32ビットの演算命令を追加し,外部のコプロセッサをサポートするようになった。また,オンチップキャッシュを搭載したVersion 2aというアーキテクチャも存在する。
ARMがAcornから独立して最初に設計したプロセッサ。32ビットアドレッシングや仮想メモリサポートなど,本格的なプロセッサといえる数々の機能強化を受けている。このVersion 3はVersion 2aと後方互換性を持っているが,ほかにVersion 2aとの後方互換性を切り捨てたVersion 3G,あるいは64ビット演算命令を追加したVersion 3Mも存在する。
特権モードという概念が導入されたほか,データ処理命令が強化された。また,Thumbと呼ばれる16ビット圧縮形式命令をサポートした,Version 4Tも存在する。
パイプラインの深化による性能向上とDSP命令のサポート,それとベクタ演算コプロセッサのサポートが主な違いである。 といったところだ。細かく違いを挙げるとキリがないが,大まかにはこんなところだ。 ARMプロセッサの変遷次に,このARMアーキテクチャが,どのARMプロセッサに採用されているかを見てみよう。
ここまで示してきたのは,あくまで単体のプロセッサだが,実際にはほかのチップと組み合わせた例が非常に多いのがARMプロセッサの特徴である。 例えば,携帯電話向けにDSP(Digital Signal Processor:音声をデータ化し,適切なフィルタリングを行ったり,その逆を行うのに適したチップ)とARMプロセッサを一体化した製品が多く発売されており,多くの携帯電話が採用している。同様に,フラッシュメモリと一体化された製品も多い。 もう1つの特徴は,古い製品も未だに入手可能ということだ。例えばARM7を生産するメーカーは,未だに20社以上存在する。これはARMの方針(ライセンス供与はまずARM7から開始し,次第に高機能のARMプロセッサを生産できるようになる)もさることながら,需要があることが最大の動機である。それほど高い性能が不要な場合,最新プロセスを利用した極めて小さなARM7プロセッサは,コスト・消費電力の両面で極めて魅力的であり,しかもそうした製品が複数ベンダーから入手できるから,供給面でも魅力的である。 こうしたマーケットのおかげで,開発ツールをはじめとするサポートも当然充実しており,ARMプロセッサを新規に使い始める場合でもそれほどの困難がない。これがまたマーケットの拡大に役立つ。PalmがARMを採用するに至った決断の中には,こうした部分も少なからず含まれているのは確かだろう。 [大原雄介,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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