もっと一般の人にPDAを - 新ザウルス「MI-E21」投入によるシャープのPDA戦略とは

「過激なくらいエンターテインメント」というキャッチコピーで華々しく登場したコンシューマーユーザー向け新ザウルス「MI-E21」。この製品は，どのようなコンセプトのもとに開発されたのだろうか。発表会の席上で語られた新ザウルス開発に至る経緯をご紹介しよう。

【国内記事】

2001年8月24日更新

　シャープは8月22日，ザウルスシリーズの最新機種「MI-E21」を発表した。新マシンの位置付けは「MI-E1」の後継となる「モバイルエンタテインメント＆コミュニケーション機能」を徹底強化したコンシューマー向けPDA。シャープの通信システム事業本部モバイルシステム事業部事業部長，宇野裕史氏は「現在のPDAは，企業でのビジネスユースが多く，まだ，個人が楽しむという目的で購入するに至っていない。「MI-E21」は，一般の人が使いたいと思うPDAを目指して開発された」と言う。

　シャープ常務取締役 通信事業統括の御手洗顕氏は，昨今のモバイル環境の進展が，PDAのコンシューマーユーザーのニーズを生み出すという。「次世代携帯電話や無線LAN技術の普及，通信の高速化，ストレージカードの大容量化と低価格化，コンテンツのデジタル化，インターネットの普及により，トータルでモバイル環境が整備されてきている。最近では「MI-E1」の購入動機もPIM機能からエンタテインメントに移っている」 (御手洗氏)

PDAのキラーアプリはモバイル動画？

　シャープが，PDAを持っていない人や，PDAにさほど関心のない人に対して行ったアンケートでは，「モバイル環境でビデオを見たい」という人が52％にのぼる。テレビの録画スタイルのアンケートでは70％が「せっかく録画したビデオを全部見ている時間がない」という結果が出たそうだ。シャープはこの点に着目し，「映像や音楽を気軽に楽しめるPDA」というコンセプトの元，「MI-E1」の開発を進めたという。

　その結果登場したのが，「MI-E21」と，「MI-E21」のCFスロットカード経由で簡単に音楽や映像を取り込める「ビデオレコードカード」 (2万4000円) だ。「ビデオレコードカード」を「MI-E21」に挿してAVケーブルをAV機器に接続し，ボタンを押すと，自動的に「MI-E21」に最適化されたテレビ番組のムービーデータやMP3形式の音楽データを取り込める。これまでもMPEG-4形式で映像を取り込むための「MPEG-4ビデオレコーダー」 (3万5000円) が発売されていたが，「ビデオレコードカード」は，より家電感覚の簡単な操作で録画や録音が行える。「通勤時間や空き時間を使って録画したビデオや音楽を簡単に楽しめるPDAを作りたかった。この製品でモバイルビデオ文化を創っていきたいと思う」(御手洗氏)

　また「MI-E21」では，コミュニケーション機能も重視されている。CFカード型PHSによるワイヤレスデータ通信はもちろん，さきに発売されたNTTドコモの「P-in m@ster」による通話 (発信のみ可能) を実現した。さらに，別売りの「デジタルカメラカード」 (2万4000円) と，「ビデオカメラMOREソフト」を利用すれば動画を撮影でき，撮影した動画をメールに添付して送ることもできる (メール1件あたり448Kバイト，約15秒) 。

　さらに，シャープスペースタウン内に，ザウルスで容易にWebページを作成できるサービス「まちこみ倶楽部」や，PDAに最適化されたWebポータルサイト「ユニモ」を設置，ザウルスによるインターネットコミュニケーションを促進する考えだ。「コミュニケーション機能の充実はもちろんだが，ザウルスにはほかにも400本以上のMOREソフト，1500冊のザウルス文庫など，エンタテインメント用コンテンツが豊富に揃っている。最近挿し絵にも対応したザウルス文庫は，年内には2500冊を超えるラインナップを用意する予定だ」 (御手洗氏)

携帯電話とどう差別化していくかがザウルスの課題

　宇野氏はPDAの対抗となるのは携帯電話であるという。「PDA市場は携帯電話市場に比べると1ケタ小さい。画面の大きさや表現力でどのように差別化していくかが今後の課題だ」 (宇野氏)

　さらに同氏は現在のPDAの動向は，パソコンが一般ユーザーに浸透し始めた頃に似ていると話す。「パソコンも登場した当初は，いろいろなことができるものの，何をしたらよいのか分からないといったユーザーも多かった。結局インターネットがキラーアプリケーションとなって普及が進んだが，PDAにもキラーアプリケーションとなるものが必要で，今回はモバイルで映像を楽しむという点から一般ユーザーにアプローチしたい」 (宇野氏)

　今回発売されたザウルスはエンタテインメント仕様だが，シャープでは，ビジネスに特化したモデルや，そのほかさまざまなニーズに合わせたザウルスを今後投入していく予定であるという。CPUに関しても，従来とは違うCPUの採用も検討しているとのことだ。

　今年の秋は，PDAの新製品ラッシュで，各社さまざまな独自機能を搭載したPDAを投入してくる。この熾烈な争いのなかで一般ユーザーの心をつかむのは，いったいどのPDAになるのだろうか。用途で選ぶか，機能で選ぶか，価格で選ぶか……，PDAユーザーには楽しみな季節になりそうだ。

[後藤祥子，ITmedia]

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