Bluetoothの夢と現実

一時期に比べると製品の種類も増え,さまざまな試験サービスが始まったBluetoothだが,その前途は明るいとはいえない。当初“夢”として語られた機能の多くはいまだに実現していない。

【国内記事】 2001年9月12日更新

 最近になって,搭載携帯電話が発売されたり(6月4日の記事参照),ホットスポットサービス実験が始まったり(8月28日の記事参照)と話題に挙がることも増えてきたBluetoothだが,普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。

 「システム展開が開始されるのは2002年。本格展開は2002年の暮れから2003年になるだろう」。都内で9月11日に開かれたハイパーメディアコンソーシアム主催の「情報家電フォーラム」でBluetoothについて講演した,東芝のe-ソリューション社の前田明氏はこう語る。

 期待とは裏腹に,Bluetoothがなかなか普及しないのは,その特徴や成り立ちとも関係がありそうだ。

標準ワイヤレス仕様ではあるものの……

 Bluetoothの特徴の1つは世界標準のワイヤレス技術であることだ。メーカーがBluetooth規格を利用するには「アダプター」として登録する必要があるが,参加は無料。どんなメーカーでも,無料で技術を利用できるオープンな規格だ。

 しかし,だからこそ混乱が生じてしまうのかもしれない。Bluetoothの仕様を作成するSIG(Special Interest Group)には多くの企業が参加して民主的に仕様策定作業に当たる。そのため「SIGの活動では新しいプロファイルを作るのに1年くらいかかる」(前田氏)というくらい,ペースは遅い。

 「バージョン1.0とバージョン1.1では互換性がないなどの問題もあった」(前田氏)というように非互換も課題の1つ。「バージョン1.0b+CE仕様には曖昧な点があり,実装する際に機器によって違いが出てしまった。これらを明確にしたのがバージョン1.1」だと,あるBluetooth技術者は説明する。“どんな機器とでも接続できる”という夢は,今のところうまくいっていない。

ウリの低消費電力は……

 モバイルを強く意識したBluetoothでは,低消費電力,小型,軽量を特徴としている。東芝の前田氏は「携帯電話でも待機時で3カ月,電池が持つ」と語るが,実際の状況は異なる。

 KDDIが発売するソニー製携帯電話「C413S」は,国内初のBluetooth内蔵携帯電話だ。期待の募る製品だが,消費電力の問題で,“常時待ち受けができない”というBluetoothとしては致命的な弱点も持っている。

 C413Sは“同じ携帯電話を持ったユーザー同士が近づくとBluetoothによって分かる”といった機能を持ったゲームがプリインストールされているが(5月17日の記事参照),Bluetoothが常時待ち受け状態でないため,“近くに同じ携帯を持っている人がいるときに,そのアプリケーションを2人とも立ち上げておく”必要がある。

 ソニーは「消費電力の問題から,現状では常時待ち受けにできない」と説明している。現在のBluetoothモジュールは,待機状態で超低消費電力を実現するに至っていない。日本エリクソンの鈴木寛本部長は「来年(2002年)の末,Bluetoothモジュールが5ドルを切る頃には,待機時の消費電力の問題も解決される」と言う。

 常時待ち受けが実現しないと,本領を発揮できないサービスもある。

 Bluetoothは,機器が特定のエリアに入ったら自動的に情報を送る,といったプッシュ型のホットスポットサービスに向いているといわれている。実際,鳴り物入りで始められたBluetoothホットスポット実験「B.L.T.」では,「たとえばデパートに入ったときに,10Fでセールをやっている,というような広告を(Bluetoothを使って流す)ことができる」(日本エリクソンの鈴木寛本部長)ことをウリにしていた。

 しかしいざ実験を開始してみれば「本当にBluetoothの良さが出る部分が実装されていない」(鈴木氏)というのが実情。ホットスポットサービスを行うには,携帯電話やPDAが常にBluetooth待ち受け状態でいなければいけないのだが,現在,その実現は難しい。

プロファイルによって利用が簡単なはずが……

 IEEE802.11bなどの無線LANと異なり,Bluetoothには利用用途に応じて「プロファイル」(用語)と呼ばれるプロトコルが定義されている。「ダイヤルアップ」や「LANアクセス」など13種類が既に定義されており,Bluetooth機器はプロファイルに従ってやり取りすれば容易に目的の動作を実現できることになっている。

 しかし「(逆に)たくさんプロファイルを作ってやらないと使いにくい」と東芝の前田氏は言う。例えばプリンタプロファイルなどは,いまだに検討中で,現在Bluetoothを使って印刷しようと思ったら,シリアルポートプロファイルなどをうまく利用しなくてはならない。

 Bluetoothに積極的なソニーは,プロモーション用のムービーなどで,たびたび“Bluetoothを使って音楽を聴く”といった使い方を提唱しているが,現在のプロファイルには音楽送信に適したものはなく,策定が待たれている状況だ。

 “プロファイルが用意されていないから,独自に機能を実装する”。こういったことが頻繁に行われている現状では,将来的な互換性にも疑問が残る。

混沌としたなか,バージョン2.0も

 バージョン1.1の段階で,まだ混沌としているBluetoothだが,年末には早くもバージョン2.0の登場が予定されている。バージョン2.0ではデータ転送速度が2M〜10Mbpsに上がり,新しく11種類のプロファイルが定義される予定だ。

 そもそも“約1Mbps”といわれるBluetoothの通信速度は,実は理論値でも上り下り非対称で最大723Kbps。実際には200Kbps程度になることが多い。これでは携帯電話を利用したダイヤルアップにも速度が足りなくなる可能性がある。

 規格の面でもハードウェアの面でも,いまだ課題の残るBluetooth。無線LANへの干渉問題が取りざたされたり,Bluetoothプロモーターの1社であるMicrosoftがWindows XPでのBluetoothサポートを見送るなど,暗い話題も多い。

 起爆剤として期待されるのは,やっぱり携帯電話だ。

 東芝の前田氏が「携帯電話はやっぱり大きな(Bluetoothの)ターゲット」と語るとおり,多くの統計資料でもBluetooth搭載機器の出荷台数の半数以上が携帯電話になると見込まれている。携帯電話業界が一斉にBluetoothを採用すれば,情勢が一気に変わる可能性もある。

 Bluetooth業界でも,携帯電話キャリアなどのリーダーシップに期待する声は多い。

[斎藤健二,ITmedia]

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