MPEG-7がモバイル動画を変える?

モバイルの動画配信のネックは,長い映像の視聴がコスト的にもニーズ的にも難しいということだ。NTTドコモと日本IBMは共同で,ダイジェスト映像を自動で生成する技術を開発した。

【国内記事】 2001年9月18日更新

 NTTドコモと日本アイ・ビー・エムは9月18日,第3世代以降の移動体通信に向けて共同で動画配信技術を開発したと発表した。

 今回発表されたのは2つの要素技術。1つは,長い映像コンテンツからダイジェスト映像を作成してストリーミングで提供するもの。2つ目はパケット通信を使ったストリーミング映像配信で,常にスムーズな送受信を可能にするQoS技術だ。

MPEG-7を使ったダイジェスト映像生成

 通信速度が向上することで動画などのマルチメディアコンテンツの配信が期待される第3世代携帯電話。「FOMAではまだストリーミングはサポートされていないが,将来はパケット網を通じて映像をストリーミングできるようになる」(解説員)と期待は高まる。

 しかし問題はユーザーがモバイル環境で長い映像を見るかどうかだ。「(携帯電話などの動画ストリーミングでは)短い映像が主体になるだろう。これに応えるべく開発したのがダイジェストストリーミングだ」

 今回の技術を使うと,長い映像からユーザーの嗜好に応じて映像が自動的にカットされ,ハイライトだけを視聴できるようになる。「ちょうどスポーツニュースで自分のひいきのチームのダイジェストを見ているのに近い」

 このダイジェスト生成には,マルチメディアデータの属性や構造を記述するメタデータであるMPEG-7が利用される。MPEG-1やMPEG-2のオリジナル映像に,コンテンツプロバイダはMPEG-7の注釈データを記述していく。たとえばサッカーの映像なら「シュート」「ゴール」などの情報をMPEG-7データとして書き込んでいくわけだ。

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MPEG-7の位置付け。映像・音声圧縮の国際標準であるMPEG-1/2/4とは異なり,MPEG-7は映像・音声データのメタデータの標準。コンテンツメディアの属性や構造をXMLを用いて記述する。現在策定中であり2001年秋に規格が決定する予定

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コンテンツプロバイダ向けのMPEG-7のオーサリングシステムがポイントの1つ。「世界初のMPEG-7データを自動出力するダイジェスト用オーサリングシステム」だという

 MPEG-7のオーサリングシステムを使うことで,容易にMPEG-7データの記述が行える。「50分の映像におよそ1000個の注釈データが入力される。入力に要する時間は映像の約1.5倍。つまり2時間の映像なら3時間で注釈データの入力が完了する」

 併せて,ユーザーの嗜好を「データセット」という形で作成する。サッカーであれば両チームのファンのため,それぞれのデータセットが必要となるだろう。このデータセットとMPEG-7データとを照合し,“片方のチームのシュート場面だけを集めた映像”といったものが生成される。

 もちろんプロバイダが作るお仕着せのデータセットだけでなく,ユーザーが自分用のデータセットを作ることも可能だ。

 コンテンツプロバイダは,いったん映像にMPEG-7形式で注釈データを記述すれば,あとは嗜好に応じて自動的にダイジェスト映像が生成されることになる。

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ダイジェスト映像をPC上のプレーヤーで視聴。右側はデータセットの設定画面。ここではアビスパ福岡のゴールやシュートを最重要に,スルーパスなどに高めの設定を行っている。このデータセットに基づいて,ダイジェスト映像はゴールシーンやシュートシーンを中心として生成される

ネックは処理が重いこと。自動化にも期待

 実際には映像はその都度生成されるわけではなく,端末側がサーバに必要なデータを要求することでダイジェストができ上がる。最初にサーバからMPEG-7データとJavaアプリケーションが端末に送信される。

 端末側のJavaアプリケーションはMPEG-7データとデータセットを照らし合わせ,必要な映像をサーバに要求する。動画再生自体もJavaアプリケーションが行う。

 現状では端末上のJavaアプリケーションでマッチングが行われるため処理が重いのがネック。日本IBMの東京基礎研究所,越後富夫主任研究部員は「サーバ側でマッチングを行うことも考えたが,そのためにはユーザーの嗜好データをサーバに送らなくてはならない」と今回の仕様を説明する。

 今後の課題はMPEG-7データの自動生成だ。「リアルタイムで生成できればなおいい。理想をいえば視聴者のビデオ(再生)の履歴を見ながら対応できる技術があるといい。音声からキーワードを抽出する方法は考えている」(日本IBMの東京基礎研究所,鷹尾洋一所長)という。

無線環境ならではのQoS技術

 発表されたもう1つの要素技術は,パケット通信を使ったストリーミング配信でスムーズな映像を実現するQoS技術だ。両社は機能モジュール構成,インタフェース,および送信用,および制御用の拡張プロトコルを規定したフレームワークを確立した。

 モバイル環境では電波が途切れたり,帯域が減少したりすることが頻繁に起こる。電波が途切れた場合,通常のストリーミング配信では“始めからやりなおし”になるが,「IPレベルではなく個別の端末ごとに管理をする」(NTTドコモマルチメディア研究所第4世代インターネット研究室の渥美幸雄室長)ことで,「電波が途切れるとデータ送信を止め,(電波が)戻ると送る」というセッション管理を可能にする。

 また,ネットワークの状態に応じて画質を落としたりコマ数を減らすといったQoS制御を行う。さらにユーザーの要求に応じて“動きを重視”したり“画質を重視”したり,動的な変更も可能だ。

[斎藤健二,ITmedia]

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