携帯がモーターショーの入場券に──電子チケットの夜明け

携帯電話でチケットを購入し，その携帯電話がそのままチケットに……。そんな試みが日本最大規模の展示会「東京モーターショー 2001」で行われる。

【国内記事】

2001年10月11日更新

　10月27日から幕張メッセで開催される「第35回 東京モーターショー2001 乗用車・二輪車」の入場券として，iモードの携帯電話を使った電子チケットが使われる。

　イープラスとアランが共同で販売するこの電子チケットは，「有償のチケットとしてはおそらく世界で初めて」（アランの営業部長山口健一氏）というもの。既に販売を開始しており，現在，販売したチケットの「4割強が電子チケット」（イープラス事業企画部の二ノ宮直子マネージャー）と出足は好調だ。

紙ではないチケットを目指して

　電子チケットのメリットの1つは手続きの速さだ。

　イープラス（エンタテインメントプラス）がiモードなどを通じて販売しているチケットは，現在のところ紙。配送の時間を見込むため，「カード決済の場合で7日前まで」（二ノ宮氏）と受付時間が限られる。

　しかし電子チケットであれば，ぎりぎりまで販売が可能だ。受け付けは開催前々日の25日まで可能で，「システム的には直前まで販売することもできる」（山口氏）という。今後“紙のチケット”の受け付け終了後も電子チケットは販売される。

　送料がかからないのも電子チケットの利点だ。従来はチケット配送料500円をユーザーが負担していた。そのため「今回のような1000円程度のチケットを扱えなかった」（二ノ宮氏）という。電子チケットの場合送料は無料。チケットの価格に関わらず販売が可能になる。

チケットはバーコードで配信

　この電子チケットは“携帯電話のWebページに配信されるバーコード”という形で提供される。購入からイベント入場までの流れは概略で次のようになる。

イープラスのPC用Webページ，または電話でチケット申し込み

クレジットカードまたは銀行振込で決済

iモード端末宛てにメールが配信

配信されたメールに記載されたURLを開くと，バーコードが表示

イベント入場口でバーコードを提示

　ユーザーの携帯に配信されるメールは，ユーザーごとに異なっており，バーコードが記載されたページもユーザーごとに違う。しかもバーコードのページを開こうとした場合，NTTドコモが管理しているUID（ユーザーのID）によってチェックされるため，購入者以外がバーコードのページを開こうとしても開けないように工夫されている。

　バーコード自体は単なる画像だが，「パリティとチェック・デジットでチェックする」（山口氏）ことで，偽造もできないようになっている。

　モーターショーの入場ゲートでは，電子チケット専用のゲートが2カ所に設けられ，「（自動車の）ETCのように列を待つことなく入場できる」（山口氏）ようになる予定だ。

紙に対してのメリットをどう生かすか？

　利点の多い電子チケットだが，残された課題も少なくない。1つはコストだ。

　送料という形でユーザーにコストを負担させる紙のチケットと違い，電子チケットのシステムコストは販売者が負担する。「正直なところ，紙のチケットよりもコストがかかる」と山口氏は言う。二ノ宮氏も「将来を見据えての投資だ」と語る。

　そこまで電子チケットに期待するのは，将来的な可能性が大きいからだ。売ってしまったら売りっぱなしで，購入した人自身が来場したかどうかも分からない紙のチケットと違い，電子チケットでは各々のユーザーごとにあとあとまでサービスを提供できる。

　「（将来的には入場したユーザーに）道路の交通情報や天気情報，イベントの進捗状況を提供することもできる」（山口氏）

　こうした情報をユーザーのニーズに合わせて提供でき，マーケティングに生かせることが電子チケットの将来的なメリットだ。

　もちろん，コンサートのように「席番号がある場合どう扱うか」といったことや，「友人の分までチケットを購入したらどうやって友人に渡すか」といったことなど，解決しなければならない課題はある。

　しかし電子チケットが普及すれば，当然システムコストは低下し，ユーザーは紙の時とは比べものにならないほどのサービスを受けられるようになるだろう。まずは有償販売初となる今回の電子チケットサービスがどれくらい受け入れられるか。東京モーターショーに注目したい。

[斎藤健二，ITmedia]

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