技術ではなくビジネスモデル──“通信カーナビ”の課題にわかに現実味を帯びてきた“通信カーナビ”。地図を持たず,サーバから通信で取得する新時代のカーナビのメリットと課題は?
本体には地図データを持たず,常に最新の地図をネットからダウンロードする“通信カーナビ”。そんな製品が2002年から登場してくる。「東京モーターショー」には各社が通信カーナビの試作機を参考出展。来年の発売に期待が高まるが……。 通信カーナビのメリットとは通信カーナビは,地図データを持っているサーバと,実際に地図を表示する本体の2つで構成される。その間をつなぐのが,高速化を続ける携帯電話だ。 地図データを配信するサーバは,経路探索や住所の検索なども行い,通信カーナビの中で大きな役割を果たす。現在,地図提供メーカーのインクリメントPとゼンリンデータコムが,それぞれ「iフォーマット」「Zm@p on net」というシステムを提供する予定になっている。 iフォーマットフォーラムによると,以下のことが通信カーナビのメリットとして挙げられている。
ハードウェアは安くなる?通信カーナビではCD-ROM,DVD-ROMドライブなどが必要なくなるため,“コストが下がるのではないか”と期待される。しかしコスト減に関するメーカーの反応はさまざまだ。 「シンクライアントを目指しているが,大幅にコストが下がることはない」と語るのはパイオニア。カーナビの中で大きなコストを占める液晶ディスプレイは変わらず必要なのに加え,一度受信した地図データをキャッシュするためにメモリが必要になることが,大きくコストを下げられない理由だ。 逆にポータブル型のナビゲーションシステムを得意とする三洋電機は「(CD-ROMドライブなどの)メカがないので薄くできる。半額まではいかないが安くできる」と通信カーナビに期待する。 またクラリオンは「ハード的にはVICSも省略できる」と説明する。渋滞情報などを受信するVISCシステムは,別途購入すると数万円程度する。これまで道路交通情報通信システムセンターが,FM波や光ビーコンを使って情報を配信していたが,今年の6月に一般の企業へも情報が提供されることになった。これにより,高価なVICS受信機を購入しなくても,インターネットなどを通じてVICS情報が取得できるようになることが期待されている。 ビジネスモデルは?通信カーナビの場合,本体とは別にサーバの利用料が“年額いくら”という形で発生すると見られている。これまでカーナビを買えば,渋滞情報などを含めてその後のコストが発生しなかったのに対して,通信カーナビでは本体のコストは安くなるものの,地図サービスに料金がかかるようになる。 もちろん通信カーナビの場合,位置情報に連動したコンテンツ配信も可能であり,うまく広告を絡めることでユーザーのコストを抑えられるかもしれない。「(通信カーナビでは)ユーザーの趣味嗜好に合わせたコンテンツを提供できる」(パイオニア) メーカーは「どのような形で(地図サービスに)課金するかは未定」と語るが,今後最も調整が難しいところだろう。同じサーバを使ってPCにデータを配信しているZm@p on netでは年間2800円の使用料金を予定している。ユーザー数の拡大を睨んで,ここからどこまで下げられるかが課題だ。 定額制の導入時が勝負そしてユーザーが最も気にするのが通信料金だろう。モーターショーではPHSを使って地図を受信するデモも行われていたが,高速移動する車載機器の場合,基本的には携帯電話が利用される。 速度の面は,iフォーマットでもZm@p on netでも「9.6Kbpの通信速度で十分実用に耐える」(パイオニア)ように作られている。そして今後は「FOMA,そしてCDMA2000と通信速度はどんどん速くなっていく」(クラリオン)。 問題は通信料金だ。「地域によってばらつきが大きい。都心部ではデータ量が増えるが,地方部では小さなデータ量になる」(ゼンリン)と一概にはいえないが,地図のデータ量は無視できるほど小さなものではない。独自方式で通信カーナビを展示した日立製作所では「(地図のデータ量は)東京駅周辺で10Kバイト程度」になるという。 本音のところでは,どのメーカーも「携帯電話のデータ通信はFOMAにせよCDMA2000にせよ,いずれ定額制に近い形にしなければならないはず。そのときが勝負」と語る。 通信カーナビは技術的には既に実現できるところまできている。最大の問題は,ランニングコストがかかることだ。サーバ使用料や通信費以上のメリットをユーザーに提供できるのか。そこに通信カーナビが普及するかどうかはかかっていそうだ。 [斎藤健二,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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