携帯マーケティングの天国と地獄

携帯電話を利用したマーケティングは確かに有効だ。しかし使い方を間違えると,大きな失敗にもつながりかねない。

【国内記事】 2001年10月29日更新

 10月29日,インターネット広告推進協議会(JIAA)によるモバイルマーケティングフォーラムが開催され,サントリー,電通,ディーツーコミュニケーションズ,ケイタイ・ゲットの代表者4者による討論会が行われた。

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左からサントリーの情報化推進部の坂井康文氏,電通モバイル・メディア部の長沢秀行部長,ディーツーコミュニケーションズの藤田明久社長,ケイタイ・ゲットの小野達人社長

 討論会ではまずサントリーの坂井氏が,携帯電話が生活に密着している現状に触れた。「女子高生に話を聞いて驚いたのだが,彼女達は風呂場の脱衣所まで携帯電話を持っていく。しかも時々はビニールに入れて,風呂場の中でも通話しているという」

 電通の長沢部長も,携帯電話の普及は広告主から見て,消費者の時間資源が24時間化したという,大きなインパクトを持つ現象だと語った。

衰退するテレビと隆盛するメールチャット

 電通の長沢部長はさらに,従来型のマーケティングツールの最たるものであるテレビについても,「いまや(ユーザーによる)テレビの視聴時間は確実に減っている」とコメント。

 「これまで最強,最大だった広告手段が,(マーケティングツールとして)効かなくなってきている。常時接続のブロードバンド環境が整えば,ますますこの傾向は加速する」(長沢部長)

 こうした中で,携帯電話はマーケティングを行う側にとっても注目すべき存在に成長した。長沢部長によれば一部のユーザーにとって,最大のエンタテインメントはテレビではなく「携帯電話のメールでのチャット的おしゃべり」で,このおしゃべりにどう広告を載せていくか,どう入り込むかが重要だという。

 具体的には,チャットの中で“やってみてよかった”“実際に食べてみておいしかった”ものなどを口コミで伝えられれば一番いい。それによってメールが飛び交い,結果的に商品をユーザーに訴求できれば,広告クライアントにとってこんなうまい話はない。ところが,ここには大きな落とし穴があるのだ。

携帯電話マーケティングがもたらす地獄

 ディーツーコミュニケーションズの藤田社長はモバイルマーケティングについて警鐘を鳴らす。「新聞を読まず,テレビも見ないで,チャットを好むユーザーは実際に眼で見たものにアクションを起こす。これはアクティブなユーザーだ」(藤田社長)

 同氏によれば,アクティブなユーザーは自分で判断した上で,評価を行う。ここに前述のコミュニケーション形式の広告手法を持ち込むと,負の評価が伝達されてしまうおそれもある。そうなると「(評価は)Noでガーンと回りますから,難しい部分がある」(藤田社長)

 いったん負の情報が回ってしまえば,広告はまるで逆効果となる。このあたりは,テレビのようにある意味自社に都合のいい情報だけを流すことができた従来型のメディアとの違いだろう。アクティブなユーザーというものは,なかなか広告主にとって手が出しづらいもののようだ。

 電通の長沢部長は,「(携帯電話は)消費者の身近にあるだけに,気にいらない情報は簡単に切ることができる」と強調する。「携帯電話の利点ばかりを話してもしようがない。リスクの面にも触れなければ」(長沢部長)

 携帯電話によるマーケティングは,買い物前など,ベストなタイミングで提供されれば素晴らしい効果を生むことが期待できる。しかし情報の受け取り手はアクティブなユーザーであり,必ずしも自社に都合のいい面だけを見てくれるとは限らない。場合によっては,かえってマイナスの結果になることもあるのだという。

 携帯電話によって縮まったユーザーと広告主との距離。広告主はその距離を,十分に測る必要がありそうだ。

[杉浦正武,ITmedia]

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