News 2000年7月3日  0:00 AM 更新

松下,ソニー,東芝がHDD内蔵デジタルTVチューナーの仕様を検討

 松下電器産業,ソニー,東芝がデジタル放送の共通プラットフォーム構築で協力する。3社は,今年12月に開始されるBSデジタル放送をはじめ,2001年秋に予定されているCS110デジタル放送,2003年の地上波デジタル放送などに1台で対応できる受信機の仕様を検討,ARIB(社団法人電波産業会)に共同で提案していく方針だ。この受信機には,内蔵HDDと広帯域インターネット接続の手段が盛り込まれ,新しい“蓄積型データ放送方式”を実現するという。

 3社はデジタルTVのデータ放送とインターネットを連動したサービスのため,これを提供するサーバ,ゲートウェイ,受信機からなるシステムを「eプラットフォーム」と称して仕様の策定を進める。7月中にも「eプラットフォーム準備会」を発足し,企画会社および事業会社設立に向けた準備を開始,2001年中のサービス開始を目指す。7月3日に開かれた会見では,松下電器産業の森下洋一会長が「放送と通信,とりわけインターネットとの融合を図れば,アナログTVにはない多様なサービスが可能になる。いわゆるユビキタスネットワーク社会の実現だ」とした。なお,準備会には,既に日立製作所が参加する意向を示しているという。

 検討課題として挙げられているのは,蓄積データ放送方式の技術仕様,伝送方式,符号化方式に加え,受信機側の蓄積管理方式,コピープロテクション方式,IEEE 1394を含む外部機器との接続方式など。

 3社の狙いは,他国に比べて遅れている日本のIT化を家庭から一気に立ち上げ,世界に先行することだ。仕様の共同策定で時間的なロスをなくし,新たなビジネスチャンスを獲得する。「日本のデジタルTVの特徴は高精細,双方向,蓄積型となる。それを一斉に立ち上げることができれば,グローバルな展開も考えられる」(東芝の西室泰三会長)。

 しかし,今回の会見では検討課題を羅列しただけで,蓄積型データ放送方式で具体的にどのようなサービスが可能になるのかがほとんど語られなかった。明らかにされたのは「番組をハードディスクに蓄積し,その中から必要な情報を瞬時に取り出したり,携帯電話などのモバイル端末から録画を予約するといったことができる」というレベルで,HDDに番組を録画することができるのかといった質問には「今後検討する」と言うに止まった。

 ハードディスクレコーディングは,その利便性から北米を中心に普及が進んでおり,その市場性は高い。しかし,高精細なデジタル放送では,メディア容量や圧縮方式といった技術的な問題に加え,著作権保護という大きな課題をクリアしなければならない。7月中に発足する準備会では,放送局などにも参加を呼びかける方針であり,著作権者側の了解を得ずにデジタル録画の可能性を語ることを避けた格好だ。

[芹澤隆徳,ITmedia]

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