| News | 2000年7月10日 05:40 PM 更新 |
「Linuxの未来はあなたのテレビにあります」
Indremaのサイトには,そう書かれていた。
さらに読み進めていくと,同社のエンターテイメントシステムは「革命的なOSであるLinuxをベースに作られた革命的な製品」で,「スイッチを入れるだけでソファーでくつろぎながら使える」使いやすいエンターテイメントアプライアンスを実現する,とも書かれている。
つまり同社のシステムは,PCではなさそうだ。さらに,「これはデスクトップ用のLinuxシステムではありません」という文言も見つかった。これは,「テレビ,ゲームマニア,そして総合エンターテイメントのためのLinuxです。箱から取り出して電源をつなげば,信じられないほどリアルな3Dゲームをプレイしたり,高速にインターネットを閲覧したり,1人で好きなテレビやMP3を楽しむことができます」との売り込みが続く。
もちろん,「いろいろな方に使ってもらいたいのです。リビングルーム,書斎,あるいは子ども部屋に1台いかがでしょうか」といった,コンシューマー製品にお決まりの売り文句もある。
だが私が最も興味をそそられたのは以下の箇所だ。「Linuxの素晴らしい世界がさらに広がりました。あなたの生活を変え,もしかしたらお隣の生活まで変えてしまうかもしれません。今すぐお試しいただき,この革命にご参加下さい」
何を試せというのだろう? Linuxか,それともIndremaのエンターテイメントシステムなのか,と私は疑問に思った。
さらに読み進めていくと,Linuxを賞賛するメッセージがあった。「弊社はLinuxの開発コミュニティを信頼しており,ネットワーク化された家電製品用の共通の標準OSを促進するオープンソース構想を支持しています」
これは普通の家電製品メーカーではないな,と私は思った。Indremaは明らかにLinuxに夢中のようだ。彼らは何者なのか。何が目的で,オープンソースのどんな分野を担いたいと考えているのか。さまざまな疑問が私の頭をよぎった。
こうした問いに対する答えを得ようと,私はすぐさまIndremaのCEO(最高経営責任者),John Gildred氏に電話をかけ,インタビューを申し込んだ。そして1週間後,Gildred氏と話をする機会を得た。同氏の新興企業が描いている夢,戦略,製品についてのアイデア,オープンソース哲学について,同氏から話を聞いた。以下,その内容をまとめる。
Gildred氏は,設立から1年半になるこの新興企業のそもそもの始まりを以下のように説明している。「真夜中にQUAKEをプレイしているときにパートナーと私にアイデアが浮かんだ。私たちは,John Carmack氏(有名な「QUAKE」の作者)のような人物や,次の新しいゲームパラダイムを切りひらく偉大な開発者たちが,もっと早く製品を販売でき,“家庭用ゲーム機”の市場にもっと簡単に参入できるよう,オープンソースのゲームプラットフォームを誰かが作ってくれたら素晴らしいだろうな,と考えた」
Gildred氏をはじめとするIndremaの設立メンバーは,PC用ゲームの市場に比べてコンシューマーゲームの市場は,革新の度合いが小さいと捉えている。その原因は,個人開発者のゲーム市場参入を妨げている高い参入障壁にあるとの考えだ。そこで,個人から大手企業まであらゆるレベルのデベロッパーが,参入障壁にじゃまされることなく容易に製品を市販できるようなゲーム開発環境とインフラを提供できる新たなゲーム機を,一から作り上げようと決心した。そして彼らは,この使命を果たすために重要なのはオープンソースのソフト,オープンなAPI,そしてLinuxだと判断したのだ。
考えはどんどん広がっていった。デベロッパーの関心も高かった。何よりも好都合だったのは,必要な技術が次々に登場したことだった。
「Indrema Entertainment System(IES)」は,ハイエンドのビデオデッキのようなスマートなきょう体にまとまっている。
Gildred氏は,「これにLinuxが搭載されているなんて分からないだろう。電源を入れれば家電製品のように使える。普通にテレビを観ることもできるが,MP3を再生することもできる。Webブラウザを起動してインターネットを閲覧することもできる」と話す。
このデバイスでは,内蔵の10/100Mbpsイーサネットインタフェース経由の高速アクセスかダイヤルアップ回線のいずれかを選択することができる。ゲームコントローラが1つ付属しており,ユーザーがすぐに楽しめるよう,少なくとも1種類のゲームがプリインストールされる。ゲームを追加するには,内蔵のDVDドライブを使うか,オンラインで購入したゲームをダウンロードするかの2通りの方法がある。
つまりこれは基本的に,多機能のセットトップボックスなのでは? 私は素朴な疑問をGildred氏に向けた。
「当社はセットトップボックスという言葉は使わないようにしている」と同氏は答え,その理由をこう説明した。「これはまず何よりもゲーム機だ。IESが最も得意とするのはゲームを楽しむことだ。この製品はゲームが得意で,非常に高速で,オープンな開発環境を提供してくれるものだ」
だがIESができることは,ゲームだけではない。結局のところ,この製品はフル機能のマルチメディアLinuxコンピュータなのだ。「IESプラットフォームにはオーディオ/ビデオを実現する多くの機能が詰め込まれている。これ用に設計され,ゲーム以上の機能を持つアプリケーションも登場してくるだろう」とGildred氏は言う。
同氏によると,可能性の高いものとして,HDTV機能のサポート,コンテンツパートナーサイトからの音楽,ビデオ,およびテレビのダウンロードと再生などが考えられるという。もちろん,「パーソナルテレビ」機能も考えられている。ユーザーは,特定のテレビ番組を必要に応じてダウンロードし,再生できるようになるだろう。ただしエントリーレベルのシステムで,IESのすべての機能が利用可能になるわけではない。例えばパーソナルテレビ機能は,追加料金の支払いが必要なハイエンドのオプションとなる。