News 2000年7月10日 10:55 PM 更新

auで再出発を図るKDDIの戦力

 7月1日より携帯電話の統一ブランド「au」(Access To Youの略)の展開を開始したDDIセルラーグループとIDO。インターネット接続サービスの名称も「EZweb」に統一し,今年10月のKDDI誕生を前に三位一体となった事業を展開している。そのEZwebの加入者は,6月末に270万人を突破し,順調にユーザー数を拡大させているが,NTTドコモの「iモード」は,もうすぐ850万加入に到達しようという勢いだ。auで再出発を図るWAP陣営は,NTTドコモを中心に回る携帯電話市場の勢力図を塗り替えることができるのだろうか。

人気コンテンツはコミュニティ

 7月10日,フォンドットコム主催のセミナーに出席したDDI商品企画部の高橋誠氏は「KDDIのモバイルコンテンツ事業への取り組み」と題した講演を行い,今後の戦略について説明した。KDDIとして生まれ変わるDDI,IDO,KDDの3社は,EZwebのコンテンツ強化を目的として「モバイルコンテンツ企画室」を今年4月に設置,今後の方向性について3社で調整を行ってきた。

 高橋氏によれば,EZwebのコンテンツでは,コミュニティ関連とアミューズメント関連に人気が集中しており,合計で全ページビューの50%を占めているという。そこで,EZwebでは今後,コミュニティ関連のサービスを拡充し,ユーザーの獲得につなげていきたい考えだ。コンテンツには,いわゆる出会い系のサイトも含まれている。なおNTTドコモでは,「公序良俗に違反する書き込みやメッセージが氾濫する」という理由から,出会い系サイトをiモードの公式サイトとして認めていない。そのほか,EZwebでは今月中に携帯電話単体としては初の位置情報サービスが開始される予定だ。

 課金システムの導入が遅れたツーカーとIDO(6月22日の記事参照)だが,ツーカーが6月,IDOは7月に料金の回収代行サービスを開始した。さらにEZweb向けには現在,シティバンクならびに富士通と共同で,既存メディアを利用した新たな決済システムを構築しているという。これは,携帯電話に商品番号を入力するだけで注文が完了するというもので,ユーザーは支払い方法(デビット,クレジットなど)を事前に登録しておくことで,注文と同時に支払いも行えるのが特徴だ。「雑誌広告やTV CMに商品番号を掲載すれば,従来よりも多くのユーザーに商品をアピールできる」(高橋氏)

cdmaOneはIMT-2000と同等?

 KDDIでは,2002年9月から次世代移動体通信システム「IMT-2000」に対応したサービスを開始する。これに対しNTTドコモは,2001年5月末よりサービスをスタートする予定で,開始時期に1年半もの遅れがある。だが,高橋氏は「当初IMT-2000で利用可能になるサービスは,既にcdmaOneで実現している」と強気だ。

 同氏は,NTTドコモが来年開始するIMT-2000対応サービスについて,1)エリアが限定的,2)データ通信速度は64Kbpsが主流,3)国際ローミングは海外のIMT-2000導入時期に依存する,と指摘。これに対しcdmaOne方式の携帯電話では,64Kbpsパケット通信の「PacketOne」や国際ローミングサービス「GlobalPassport」を既に開始。さらに,2001年中頃より,実効速度144Kbpsの「cdmaOne 1X」を展開し,IMT-2000へと移行する2002年9月までに全国ネットワークを構築する計画がある。また高橋氏によれば,2GHz帯のcdma2000では設備投資を高速データ通信分野に特化するため,cdmaOneとのデュアルバンド運用を計画しているという。

 高橋氏は,高速インターネット接続サービスについて,「現在の課金方法ではビジネスにならない」と話す。パケット単位で課金した場合(0.2円/パケットなど),数MバイトのMP3ファイルをダウンロードするとレコード店でシングルCDを購入するよりも高くつくというのだ。そこでKDDIでは,パケット単価を引き下げるか,もしくはデータ量に依存しない料金体系を検討している。

「KDDIでは,IMT-2000対応サービスの初期システムに,既存のcdmaOne技術をベースにしたcdma2000 1Xを導入する。これによって設備投資が抑えられ,パケット単価の引き下げも実現するだろう」(同氏)

auの泣きどころ

 また高橋氏は,講演の中で,携帯電話事業の統合を「10月まで待っているわけにはいかなかった」と打ち明けた。IDOとDDIではこれまで,cdmaOneを前面に押し出した宣伝活動を行ってきたが,現在は「auブランドの認知度向上」に最大のプライオリティが置かれているという。ブランドが浸透するには時間がかかるため,悠長に10月の正式合併を待つことはできないというのが理由だが,そこには,NTTドコモにこれ以上差をつけられては,追撃が難しくなるという危機感が伺える。

 また高橋氏は,現在の携帯電話事業の状況について,「IDOが首都圏で伸び悩んでいる」と分析。cdmaOne方式の携帯電話に限定すると,首都圏・中部エリアでサービスを提供するIDOの純増数は,5〜6月の1カ月間で12万4500加入。一方,関西・九州地域のDDIセルラーはIDOの2倍近い23万加入があった。

 さらに同氏は,「内訳の詳細は公開していない」と断ったうえで,「cdmaOneのユーザーは順調に増加しているが,そのほとんどがPDC方式の携帯電話からの乗り換え」であることを明らかにした。しかも,「われわれの予想を遙かに上回る割合」(同氏)であるというから,au陣営にとっては,いかに新規ユーザーを獲得するかが今後の課題となるだろう。

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[中村琢磨, ITmedia]

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