| News | 2000年7月25日 11:05 PM 更新 |
インターネットを通じての広範なP2Pネットワーキングは,「人民による人民のためのコンピューティング」として理解され,社会学的,そして技術的見地からも興味深いものだ。しかし,未回答のまま検証されずに残っている疑問もある。それは,「P2Pサービスは現実的で継続運営が可能なビジネスとして成り立つのか?」という問いだ。
Gnutellaの開発者Gene Kan氏は,P2Pネットワーキングについて,「安定した利益をあげるという点で成功した例は今のところない」と述べている。
GnutellaはAmerica Online(AOL)の子会社Nullsoftのプログラマーが地下活動的なプロジェクトとして開発を始めたものだった。AOLはこれがリリースされてすぐ,プロジェクトを閉鎖させている。だがGnutellaはAOLの手を巧みにすり抜けてネットに流れ,現在ではボランティアの手によって開発・メンテナンスが継続されている。GnutellaはNapsterとよく似ている。しかしGnutellaはユーザーやユーザーのファイル追跡に有効なセントラルデータベースを持たない。代わりに,ディレクトリ情報をすべてのユーザー間でリレーし,真のP2Pを実現する。また,どんな形式のファイルでも共有できるという点でも異なっている。Freenetも,Gnutellaに似たソフトの開発を行っている。FreenetはロンドンのWebデザイナーが率いるプロジェクトの名称だ。
Gnutellaのメンテナンスをしているプログラマーには,金儲けをしようという意識がない。ユーザーが共有したいと思うファイルならどのようなものでも交換できる場を提供することに楽しみを見出しているのだ。業界関係者はGnutellaのようなサイトは生き残っていくだろうと見ている。理由は,Jupiter CommunicationsのアナリストAram Sinnreich氏の言葉を借りれば,「手早くてずるく,無料で危険な手段を好む人はいつでもいるから」。確かにこういう人々の存在は新しい現象ではない。ユーザー間の違法なファイル共有,ポルノやハッキングソフトの交換などは数多くのオンラインコミュニティで何年も前から盛んに行なわれていることだ。この傾向が顕著なのはニュースグループで「alt」「warez」に分類されるコミュニティだ。
しかし,P2Pで商売をしようと考えている企業は難問をつきつけられている。中でも重大なのは著作権を与えられたものをユーザーが自由に交換できるようなサービス提供は法に触れる可能性がある点。これは全米レコード協会(RIAA)がNapsterを相手に起こした訴訟の争点でもある。Napster陣営は自衛のために,Napsterは自社サービスを通じて交換されたファイルをコントロールしておらず,結果的に個人ユーザーが音楽ファイルを共有する例が増加したまでだと主張している。この主張に法律上どのようなメリットがあるのかは分からない。だがビジネスの見地からすればこの話は矛盾している――とForresterのアナリストScheirer氏は指摘する。「自社のコンテンツにコントロール力を持たないということは,Napsterは営利を目的とした立場にないということだ」
Napsterは明らかに,2000万人のユーザーを基盤に何らかの形態でビジネスを築くことができると信じている。同社にはHummer Winblad Venture Partnersなどが出資している。しかしこれらの出資元から5月に1500万ドルを受け取った後も,Napsterはどのように利益を生み出していくのかというプランについては一言も発していない。同社の幹部に幾度か取材依頼をしたが,応答は得られなかった。だが,民間のデジタルエンターテイメント調査機関Webnoizeが大学生4300人を対象に行なった調査では,Napsterユーザーの58.5%は「毎月15ドル以下ならサービス使用料を支払ってもかまわない」と回答しているという。
Napster急成長の主要因は,ユーザーのPCに音楽が無料で大量に保存できるということにあるだろう。無料で制約のない,しかもCDとほとんど変わらない高音質の音楽。どんな企業だろうと事業体である以上,それに匹敵するものを揃えるのは大変なことだ。Napsterが毎月の接続料金を設定したら,間違いなく利用者は減少するだろう。Webnoizeの調査では最低でも40%の利用者が,そうなれば利用をやめるとしている。広告収入モデルという代替案も考えられるが,このモデルにはサービス中断やレコードレーベルによる曲の売り込みといった可能性が付きまとう。そうなるとNapsterは中立的なインターネットサービスプロバイダーというイメージを損なってしまう可能性がある。iMeshなどNapsterのクローンサイトも全く同じ問題を抱えている。
PCPネットワーキングの支持者らは認めたがらないが,Napsterの「成功」はひらすら,大量の音楽を無料で簡単に手に入れる方法を提供したという事実に依存している。一方でP2P起業家はNapsterの「来るもの拒まず」的なやり方からは距離を置いている。つまり,これらの起業家はNapsterを教訓にしながらも,自分たちのサービス形態に調整を加えているということだ。