News 2000年7月26日 11:00 PM 更新

携帯インターネットに足りないもの──Phone.comプライベートイベントレポート

 DDIやIDO,ツーカーなどにWAP対応のマイクロブラウザやサーバを供給しているソフトウェアベンダー,Phone.comが,米サンフランシスコで携帯電話キャリア,携帯電話サービスデベロッパー,携帯電話開発ベンダーなどを対象にしたプライベートイベント「Unwired Universe 2000」(通称U2)を開催中だ。

 初日に講演を行ったPhone.com会長兼CEOのAlain Rossman氏は,携帯電話からのインターネット利用について「これはPCのミニチュアではない。小さく,いつでも,どこでも利用でき,音声通信が可能で,情報をプッシュすることもできる。その上,位置情報や相手が通信できる状態であるのかといったアウェアネス情報まで利用可能だ。これらはモバイル向けの新しいWebサービスを育てる」と,日本で携帯インターネットが受け入れられている現状を解説しながらアピールした。

Phone.comのAlain Rossman会長兼CEO
Phone.comのAlain Rossman会長兼CEO

すべてのデバイスにサービスを展開するYahoo!

 彼らは,日本で画像,壁紙,着信メロディなどの市場が,どれだけ成長しているかといったポイントを挙げて関心を引こうとしている。既に国内では常識となりつつあることであり,そうした意味では,まだまだ認知度が足りないともいえるのだが,携帯電話の可能性に掛けるデベロッパーやサービスベンダーの動きは,市場の立ち上がりの遅さとは反対に意外に早い。

 U2基調講演に登場したYahoo!副社長のEllen Sminoff氏は「ユーザーはどんな場所でも,PCを扱うのと同じように情報を欲しがるものだ。われわれは,場所に応じた──たとえば外出先なら携帯電話,リビングならテレビ,オフィスや個人の部屋ならPCなど,TPOに合わせたデバイスから同じ情報にアクセスできるようにしなければならない」と述べ,今後Yahoo!がすべてのキーデバイスに対して既存のサービスを提供することを約束した。これには,PIMやチャットといったサービスのWAP対応,Newsヘッドラインの配信,インスタントメッセージングユーザーとのメッセージ交換などが含まれている。

 BT Global Mobile InternetのKent Thexton氏は,欧州でサービスを開始している「The Genie Service」を紹介。これはPCユーザーに対するアプリケーションサービスを,携帯電話からも利用できるようにデザインしたサービスだ。Thexton氏は「携帯インターネットを用いたポータルを構築することで,CRMを実現している」という。このサービスでは,ユーザーがネット上に唯一のリポジトリデータベースを用い,カスタマイズされたWebページやカレンダー,メールといったアプリケーションを,PCと携帯電話の両方から利用できる。

 さらに音声メールやFAXをWeb上で管理することも可能になっており,銀行取引などのアプリケーションも統合。もちろん,これらについても携帯電話からのアクセスが可能だ。

位置情報を利用したサービスも

 基調講演後のプレスセッションでRossman氏は,携帯電話向けの位置情報サービス製品とカラー対応マイクロブラウザの「Color UP.Browser」,これを搭載したカラーのCDMA端末が日立から今週出荷されることも発表した(6月22日7月17日の記事を参照)。位置情報サービスは5メートルから最大250メートルという,かなり大まかな精度ではあるが,既に数社が対応アプリケーションを準備しているという。

 Webraskaが地図やルート検索,渋滞情報などを提供するサービスを,Amazon.comが位置感知型の買い物サービスを,DoubleClickが近くにあるさまざまな施設案内を行うサービスを,In-Fusioが位置情報を利用したゲームをリリースする。英国のサービスベンダーTomTom.comは,既に欧州で位置情報を利用したコンテンツを準備。これは,今回のイベント開始直前とのことだ。TomTomのサービスでは,PC上で地図,ルート,周辺情報(レストランなど)を調べることが可能で,それをそのままWAP端末やPalmデバイスなどからも利用できる。

 日本は,携帯インターネットでは世界の最先端を走っている。それは事実だが,一方で,まだ普及もしていない国で,これらクオリティの高いネットサービスが提供されようとする現状も見ておかなければならないだろう。

 日本でもっとも普及しているiモードは,インターネットを利用しながらも,インターネットとは異なるクローズドな世界を構築している。PCやほかの情報機器との相互運用という点では,日本以外の国の方が進んでいるように見えるのは気のせいではない。インターネット端末のアプライアンス化は既定路線ではあるが,そこには道具(端末)の自由な選択が必要だ。

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[本田雅一,ITmedia]

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