News 2000年7月31日 10:15 PM 更新

PCとの連携を重視するPhone.com

 先週,米サンフランシスコで開催された「Unwired Universe 2000」(U2)では,Javaゲームから位置情報サービスを利用した渋滞情報,レストラン情報など,さまざまなWAPアプリケーションが紹介された。このイベントを主催したPhone.comは,WAP対応のマイクロブラウザやキャリア向けサーバ製品のベンダーとして知られている。

日米携帯文化の違い

 会場で聞かれたPhone.com幹部の話で日本ともっとも異なるのは,WAPのバックエンドを支えるサーバ製品の開発に関し,PCとの親和性を重視していることだ。携帯電話単体でのインターネットアクセスを重視するiモードとは異なり,Phone.comの製品はPCユーザーが携帯電話を情報ツールとしてうまく活用できるように工夫されているのだ。

 Phone.com副社長のBen Linder氏は,「日本のユーザーにとって,iモードはインターネットのサービスを利用する第1の手段。これに対して,米国ではサービスを利用する第1の手段として認知され,普及が始まっている背景がある」と,日米の違いについて話す。

 またユーザー層の違いも大きい。Linder氏は,日本の携帯インターネット市場について「新技術や新文化は,若い世代,特に女性が生活への導入をリードしている。また日本人は新技術に対する興味が強く,それが良いものであれば惜しげもなくお金を投入する。しかし,米国人は少しばかり便利そうでも,なかなかお金を払おうとしない」と見る。また「日本の10代後半から20代前半の若者が,夜中まで町中を闊歩し,遊んでいるのに最初は驚いた。米国の若者は,夜中は家でおとなしくしている。日本の若者にとって,外出先でのコミュニケーションは必要なものなのだと思う」と,なかなか日本文化に詳しい。

 米国でも携帯インターネットは成長が予測されているが,One to One Matching(出会い系)サイトのような“日本的”文化は広がらないだろうとも言う。「米国では銀行取引やショッピングが,もっとも注目されているアプリケーションだ。個人向けの用途としては,家族とのコミュニケーションや,さまざまな情報を得るためのコンパニオンとしての役割もある。渋滞やレストランの情報などのサービスが多いのは,そうしたコンパニオンとしての携帯電話の性格を表している」(Linder氏)。

 お金を支払いたがらないという米国人が,個人ユースでも携帯インターネットを利用するのだろうか。Linder氏はどこからが個人ユースという区切りは難しいとしながら,「米国の携帯インターネット利用料は,スプリントが回線交換方式で1分10セントの従量制だが,AT&T Wirelessのパケット通信サービスは月10ドルの固定料金制。個人向けコンテンツは無料のものが中心なため,個人ユーザーも少なくない」という。しかしながら,携帯インターネットビジネスの中心が企業向けであることも同時に認める。「日本のように個人利用が先にクローズアップされることはない」(Linder氏)。

Phone.comは電子メールとPIMにフォーカス

 Linder氏の話の中にある「携帯インターネットは米国人にとって,インターネットに接続する第2の手段」という点が,Phone.comの製品に色濃く反映されており,その傾向は今後も強まるだろう。個人,企業を問わず,多くのユーザーがPCを利用しており,PCとの親和性は米国の携帯インターネットに必須の項目である。

 Phone.comのUP.Serverは,サーバ側で処理を行うASP形式の電子メールおよびPIM機能を実現するが,今後も同社は電子メールとPIMにフォーカスして製品開発を行う。Phone.com最高執行責任者(COO)のRoss Bott氏は,これらに加えて「今後の製品では,別々のアプリケーションを統合する機能や,新しいメディア向けAPI,統一的なログイン/ユーザー認証を行うためのAPIの提供を行うが,電子メールとPIM以外のアプリケーションには進出しない」と話し,サードベンダーの協力を求めた。

Phone.com最高執行責任者(COO)のRoss Bott氏

 同社のPIM機能は,現在もPuma Technologiesの「IntelliSync」を用いることで,PC用PIMとUP.Server上で管理するPIM情報の同期を行うことができる。Phone.comはこの機能をさらに推し進め,次世代のUP.ServerでPC,PDA,UP.Serverの三者間を1アクションで同期させる仕組みを提供する。Phone.comは昨年,この機能を実現するために同期ソフトベンダーを買収している。

 日本ではDDI/IDOが,UP.Serverの機能を利用した「EZ PIM」を提供しているが,DDI関係者は「あまり言いたくない程度の普及率しかない」と話しており,このサービスが収束へと向かう可能性もある。しかし,次世代の三者間同期に関しては,別サービスとして導入の可能性もあるようだ。別記事でもあるように,メールシステムはアクセス製のものに切り替わることが決定されているため,PCで受信したメールを同期させて携帯電話で閲覧できる可能性は低い。しかし,スケジューラやTo-DO,アドレス帳などが簡単に使えるのであれば,PCユーザーとしては歓迎したいところだ。

[本田雅一,ITmedia]

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