News 2000年8月10日 03:28 PM 更新

インテル,IPSecセッションのプロセッサ負荷を大幅に下げるイーサネットカードを出荷へ

 インテルはクライアントレベルでハードウェアによるネットワークの暗号化を実現した低価格のイーサネットカード「Intel PRO/100S」マネージメントアダプタを発表した。従来の「Intel PRO/100B」で採用されている「82559」LANコントローラに,パケットレベルのセキュリティ機能を実現するIPSecハードウェアアクセラレータとして,暗号化コプロセッサの「82594ED」を追加搭載したもの。標準価格は1万2300円。8月11日から発売される。

 IPSec対応のネットワークカードは,今年1月に米国で出荷済みのものだ。2月の「Intel Developers Forum」(IDF)の基調講演で紹介されていた。しかし,92594EDが192ビットという高度な暗号化機能を持つため,米商務省の輸出規制により海外への出荷が行われていなかった。今回の新製品は,今年2月に米商務省が暗号化技術の輸出規制を解いたことを受け,日本向けにテストなどを重ねて発売されたもの。

 インテルの資料によれば,もっとも強い3DES暗号化モード時の比較でソフトウェア暗号化が70.3%のプロセッサ負荷,32.6Mbpsの最大スループットだったのに対し,Intel PRO/100Sを用いた場合はそれぞれ27.4%,60.1Mbpsの性能を発揮する(Pentium III/500MHzを用いたPCの場合)という。

 動作OSはIPSecを標準サポートするWindows 2000のみだが,米国版ではIPSec対応のWindows 9x用クライアントモジュールがリリースされており,今後の状況次第ではサポートする可能性がある。2月のIDFでインテルは,「機密漏洩の事例でもっとも多いのが不満を持つ社員によるものだ」と指摘し,社内ネットワークをパケットレベルで暗号化し,End to Endのセキュリティを実現する必要性を訴えていた。本来の目的からすれば,一部で残るWindows 9xクライアントもサポートされるべきだろう。

 インテルの最新PCチップセットのうち,ICH2を含む製品には,あらかじめイーサネットの論理層が組み込まれており,CNRカード(Comunication Network Riser)あるいはオンボードで物理部分をサポートするチップを追加するだけでイーサネット機能をPCに追加できる。しかし,インテルによると,いずれも現在は検討段階にない。暗号化技術は各国ごとに輸入規制がある場合もあり,マザーボードに標準搭載するのはリスキーだからだ。

 したがって,こうしたイーサネットカードは,当面の間,独立したPCIカードとしてのみ提供される。ただしチップレベルでは暗号化コプロセッサの集積を進め,92594EDを8255LANコントローラに内蔵させるなどして,ローコスト化を図るという。

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[本田雅一, ITmedia]

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