News 2000年8月18日 07:37 PM 更新

ウワサの超小型デジカメを見てきました

ソニーが開発した超小型デジカメは,想像を絶するほどミクロ。お盆休みの真っ最中に訪問したソニー本社で目にしたそのデジカメは,21世紀の到来を予感させるシロモノだった。

 ソニーが開発した超小型デジカメは,どのくらい「超小型」なのか。「液晶付きデジタルスチルカメラでは世界最小を実現」(ソニー)というこのデジカメは,「100円ライターより小さい」(ZDNN)や,「板ガム大」(某ニュースサイト)などと表現されていたが,この目で確認すべく,ZDNN取材班はソニーに直撃取材を試みた。結論から言うと,上記の表現ではこのデジタルカメラの本来の姿を語るには不十分だった。

 ソニーが7月26日の四半期決算発表時に配布したリリースには,「21.5(幅)×62.6(奥行き)×13(高さ)ミリで,26グラム」とある。頭の中では小さいということは分かるのだが,実感としてどのくらい小さいのかがいまいち伝わってこない。そこで,何か別のもと比較することでイメージできるようにしたわけだが,これが,見事に失敗だったようだ。下の写真1,2を見てもらえば,その理由が分かるだろう。


写真1:幅は100円ライターと同等だが,全長ははるかに短い。「Video on Sillicon」の文字が,先端技術の結晶である明かし


写真2:100円ライターと同じく,板ガムもデジカメより長かった。ちなみに,中央の銀色のボタンがシャッターボタンで,その左側にあるのが電源スイッチ。操作系はこの2つだけというシンプルな作り。背面の黒い部分が,リチウムイオンポリマー2次電池だ

 ちなみに,中央の銀色のボタンがシャッターボタンで,その左側にあるのが電源スイッチ。操作系はこの2つだけというシンプルな作り。なお,背面の黒い部分が,ゲル状電解質を用いたという脱着可能なリチウムイオンポリマー2次電池。

 技術的な側面を解説すると,このデジカメは,電極ピッチ67マイクロメートルでICベアチップを実装することにより,超小型化を実現している。67マイクロメートルがどのくらいかというと,だいたい髪の毛1本くらいの細さだという。この実装技術により,小型ボディーに液晶ディスプレイを搭載することに成功。画面サイズは0.55型で,表示画素数は18万ドットというスペックだが,実際に撮影して確認してみたところ,だいたいの絵面は認識できるレベルだった(そもそもこのサイズにカラー液晶が付いていることだけで驚きだが)。


撮影時の画像はプレビューされるが,記録した画像を再生することはできなかった

あくまで試作機……

 取材班の対応をしてくれたソニー広報部の加藤雅己氏は,超小型デジカメの開発を明らかにして以来,「新聞社やTV局,さらには海外の通信社からの取材申し込みが相次いだ」と満足気だ。ただ,「あくまで試作機であって,技術的にはこんなことが可能だということを示す」(同氏)ために公表したものの,当然のごとく,製品化の時期やズームの有無といったスペックについて質問が多く寄せられ,多少困惑気味だったという(取材班もいきなり「フラッシュは付いていないんですね」と尋ねて,「“あくまで”試作機ですから」と念を押されてしまった)。

 また,カメラを見て気になったのは,レンズ部分だけが大きく前面に飛び出しているそのデザインだ(写真2を参照)。ソニーの広報写真でも突出していることは分かるが,これほどとは想像していなかった。またリリースのサイズ表記部分には,「最大突起部まず」と書かれており,あえて目立たせないようにしている気もする。

 ちょっとアンバランスなデザインに,ソニーの最先端技術でも,レンズをこれ以上小さくすることは不可能だったのではと探ってみると,「超小型デジカメの開発グループが,カメラのデザインにはこだわりがあって,レンズ部を目立たせることになった。技術的にはもっと小さくすることは可能」(加糖氏)とのことだった。この質問は「あくまで試作機ですから」ですませないところに,ソニーのプライドがあったのかもしれない。

小さすぎて操作は困難

 ソニーではこの超小型デジカメについて「製品化の予定はない」と強調する。確かに,カメラとしての機能は十分なレベルに達しているものの,あまりに小さすぎて,手の大きい成人男性が使いこなすのはちょっと困難だ。「スパイ専用デジタルカメラ」とでもして売り出せば,もしかしてマニアにうけるかもしれないが,最先端技術をふんだんに盛り込んでいるだけに,「量産化しても,現状では高価になりすぎる」(加藤氏)という。

 むしろ加藤氏は,「超小型カメラ」ではなく「超小型カメラを実現する技術」について注目してほしいと話す。リリースの中でいえば,「先端実装技術により,超薄型LCD,リチウムイオンポリマー2次電池,メモリースティックDuoなどを集約」という部分だ。ソニーでは,メモリースティックの形状の通信ユニットや,従来にはない形をしたウェアラブル機器の研究を行っているというから,今後どのような製品が登場するか非常に楽しみだ。

関連記事
▼ ソニー,100円ライターより小さいデジカメの試作機を発表

[中村琢磨, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.