News 2000年8月24日 11:55 AM 更新

モバイルPentium IIIをさらに高速・省電力化するIntel

 米カリフォルニア州サンノゼで開催されている「Intel Developer Forum 2000」(IDF)で,米Intel副社長でモバイルプラットフォームグループのジェネラルマネジャーを務めるFrank Spindler氏がモバイルプロセッサの将来計画に関する記者向けのプレゼンテーションを行った。

 6月に750MHzのモバイルPentium IIIをリリースしたばかりのIntelだが,Spindler氏によると,今年の終わり頃までには800MHzおよび850MHzの製品を投入するという。さらに来年の前半には,初のモバイル向け1GHzプロセッサをリリースすることを約束した。もちろんその先には,1GHzを超えるプロセッサを計画している。

 また,平均消費電力で2ワット以下になる製品をフルサイズノートPC向け,1ワット以下の製品を小型ノートPC向けとして,平均消費電力で用途ごとに最適な製品を提供するという戦略も明らかにしている。

 現在のモバイルPentium IIIは,ACPIのS0ステート(電源オンの状態)におけるクイックスタートモードをサポートしている。クイックスタートモードは,外部からのアクションで,すぐに動作できる状態ながら,可能な限りプロセッサの消費電力を落とすモードのこと。ACPI対応のOSと組み合わせることで,キー入力中も細かくクイックスタートに切り替えることで,平均消費電力を大幅に削減する技術だ。モバイルPentium IIIでは,クイックスタートモード時に500ミリワット以下の電力しか消費しない。

 また,現在最新の750MHzのモバイルPentium IIIには,昨年のIDFで発表されていた「Intel Mobile Voltage Positioning」(IMVP)と呼ばれる新しい技術が組み込まれている。この技術は,半導体のスイッチングを行う瞬間だけ電圧をフルにかけ,スイッチングが終了すると電圧を下げることで消費電力を少なくするというもの。

 Spindler氏によると, IMVPにより,10%ほど消費電力削減をできるとのこと。750MHzのモバイルPentium IIIは,650MHzのモバイルPentium IIIと同程度の消費電力となる。同様の電圧コントロールはPentium 4でも採用されており,電圧制御の仕様を標準化したことで7社以上の電圧レギュレータベンダーがこの技術に対応しているという。

 このほか,今回のIDFでは,スマートバッテリーの新仕様や「System Management Bus 2.0」(SMbus),「ACPI 2.0」といった,システム全体のバッテリー持続時間を延ばす新技術が紹介される見込みだ。Spindler氏によると,新しいスマートは従来より最高で20%バッテリー持続時間を延ばし,SMbus 2.0はPCIアドインカードの電源制御を実現。ACPI 2.0はSpeedStepに標準対応する。

最大熱設計電力の重要性

 IDF初日の基調講演では,Albert Yu氏がモバイルPentium IIIの平均消費電力の低さを強くアピールしていたが(8月23日の記事を参照),実はそのデモの直前のスライドでは,TDP typical(定格熱設計電力)とTDP Max(最大熱設計電力)の重要性を訴えていた。モバイルPentium IIIは平均消費電力は低いものの,TDPは総じて高いため熱設計が難しく,薄型や小型のノートPCに入れにくい。Yu氏に限らず,モバイルPentium IIIは消費電力が低く“薄型のウルトラポータブル”にも有効だとプレゼンテーションを行うのだが,TDPの高いモバイルPentium IIIは,いくら平均消費電力を下げても薄型ノートPCに適したプロセッサにはならない。

 IDFで配布された資料によると,IntelはフルサイズノートPCの市場規模は今後拡大することはなく,薄型軽量A4ノートPCとサブノートPCの市場が広がると見ているようだ。特に薄型軽量A4ノートPCは,そのシェアが現在の30%程度から2004年には75%にまで伸びると予測。それに伴う戦略として,TDPも非常に重要となるはずだ。以前,インテルはTDP Typicalを9ないし10ワット以下に抑えていたが,現在のモバイルPentium IIIは最高で25ワット近くに達するものもある。

 幸い,Spindler,Yuの両氏に,短いながらコメントをもらうこともできた。両氏とも薄型,軽量,小型などにTDPが重要であるとし,現在も超低電圧版のモバイルPentium III/500MHzをそろえていると話す(カタログには存在しないプロセッサだが,低電圧版SpeedStepモバイルPentium III/600MHzを500MHzのみで使う場合を想定したものとのこと)。発熱を抑え,冷却ファンなしの製品を設計できるようにすることは重視しており,将来を含めた低消費電力プロセッサを開発するための専門部署を立ち上げた(別記事参照)と語った。

 少なくとも,Coppermineの世代で,Intelが低いTDPのプロセッサをラインナップすることは難しいと思われる。今後,向上し続けるクロック周波数でTDPを下げる要因はないからだ。しかし,TDPに関して真剣に考える両氏の言葉からすると,来年の後半以降,0.13ミクロンプロセスに移行後に新たな展開を考えているのかもしれない。

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[本田雅一, ITmedia]

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