News 2000年8月29日 06:03 PM 更新

Pentium III/1.13GHzのリコールはIntel受難の始まり?

Pentium III/1.13GHzのリコールは,Intelプロセッサが「最高速」を謳えなくなったことを示している。そして,この状況は続く可能性もある。

 米Intelは8月28日,出荷済みのPentium III/1.13GHzをすべて回収することを明らかにした(別記事を参照)。これは,高負荷のベンチマークやアプリケーションを実行すると,処理が完了する前にフリーズする不具合が確認されたため。しかし問題は,その原因が「シリコンのマージン不足」だった点だ。

 ことの発端は,出荷開始直後のPentium III/1.13GHzを「Tom's Hardware」や「HardOCP」といったPCマニアのサイトが検証し,不具合を指摘したこと(別記事を参照)。報告を受けたIntelは,先週のうちに問題を確認し,米Dell Computerなど一部のOEMメーカーに通知していた模様だ。インテルの広報によると,「米国で報道機関向けにアナウンスしたのは8月28日だが,OEMには先週中にアナウンスしていた」という。

 一方,国内でPentium III/1.13GHz搭載機を発表していたのはデルコンピュータのみ。同社では現在対応を検討しており,明日29日には明らかにする方針だという。なお,当該プロセッサのリテールパッケージなどは出荷されておらず,また「バルク版に関するレポートも受けていない」(インテル)ため,回収作業自体は比較的容易に進みそうだ。

 しかしながら,アナリストの中には,「リコールは,AMDとの競争が激化するあまり,十分なマージンを確保できていないプロセッサを出荷したために生じた」と指摘する声も多い。インテルは「われわれは,ハイエンドユーザーのニーズを満たすという意味で高クロックのプロセッサを提供している。競争が影響したことはない」としているが,Athlonチップの登場後,Intelがプロセッサロードマップを大きく前倒ししているのは事実だ。

 また,アナリストの中には,Pentium IIIのP6アーキテクチャがこれ以上のクロックアップには適していないとする声が根強い(8月25日の記事を参照)が,今回のリコール騒ぎは,図らずもこれを肯定する結果となってしまった。インテルでは「今後,シリコンのマージンを確保できる対策をとる」としており,2カ月以内にPentium III/1.13GHzを再出荷する方針だ。しかし,対するAMDは1.1GHz版Athlonの出荷を開始し,1.2GHz版の投入も前倒しする方向で動いている(8月21日の記事を参照)。あるいは,第4四半期に予定されている「Pentium 4」の出荷まで,Intelにとって面白くない状況が続くことになるのかもしれない。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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