News 2000年9月8日 09:44 PM 更新

汎用JPドメイン名がもたらす新たな未来

 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター,つまりJPNICが,「汎用JPドメイン名に関する方針(案)」を提示し,広く意見の募集をしている。今年の2月にタスクフォースを結成し,約半年の議論を続けてきたのだが,いよいよ本格的な実施に向けて動き始めたわけだ。

 この案が実際に施行されると,日本における従来のインターネットドメイン名の自由度は大きく高まる。現状では,1組織1ドメイン,個人はドメインを取得できない(家族という団体を作るという抜け道はあるにしても)など,さまざまな制約があり,ユニークなドメインを必要とする組織は「.com」や「.org」など,国外でドメインを取得するという方法を使わざるをえなかった。

 ぼく自身も,最初にドメインを取得しようとしたときに,個人事務所では「.co.jp」ドメインを取得できず,かといって,「.or.jp」でもなかろうと,仕方がなく「.setagaya.tokyo.jp」ドメインを申請したことがある。引っ越したら無意味になってしまうような地域ドメインのあり方に疑問を感じながらも,それしか方法はなかったのだから仕方がない。その後,ぼくは自分の仕事を法人化したため,「.co.jp」ドメインを取得できたが,何かおかしいぞと思ったものだ。

希望のドメインは取得できるか?

 今後,家庭用電化製品の多くは,間違いなくインターネット対応になっていく。それらがつながるホームネットワークも当たり前の存在になっていくだろう。家庭をひとつのドメインとしてとらえることは,ちっとも不自然ではないのだ。しかも,ケーブルテレビや無線ネット,DSLなど,さまざまな物理的接続手段で,24時間365日のインターネット常時接続も普通になる。こうした技術の進化を考えると,家族や個人がドメインを自由に取得できる制度の施行は,遅すぎる感があるくらいだ。

 もっとも,全国の山田さんや田中さん,鈴木さんは膨大だ。山田さんは,「yamada.jp」が欲しいだろうし,鈴木さんは「suzuki.jp」が欲しいにちがいない。が,それはかなわぬ夢だ。しかも,案では,募集開始の11月20日から12月22日まで,先願主義をとらない。つまり,早い者勝ちではないのだ。たとえば,山田さんであれば,「yamada」という名前に関して,「yamada.co.jp」の持ち主が「yamada.jp」の取得に際して優先権を持つということになっている。ちなみに,「yamada.co.jp」は現在,山田洋行のドメイン名だが,同社が「yamada.jp」を希望すれば,ぼくが「yamada.jp」を希望してもかなわない。

 それでも,個人が自由にドメインを取得できるようになるのは,大きな一歩だと思う。これによって,ISPの多くは,ドメインのホスティングサービスを提供することで,大きなビジネスチャンスを得ることができるかもしれない。今,接続サービスは,過酷な競争の中で,どんどん低価格になっているが(それでもまだ高いと思うけれど),こうしたサービスを,分かりやすい形で提供することで,新たな未来が見えてくるかもしれない。

ドメイン名の応用

 インターネットでは,IPアドレスとホスト名を対応させ,その検索をDNSというシステムが引き受けているのはご存じの通りだ。山本家の冷蔵庫が「refrigerator.yamamoto.jp」で呼び出せ,酒屋さんが内容をチェックしてビールを補充するような状況は,プライバシーを考えるとちょっと不安を感じるが,大きな魅力もある。新しいドメイン空間の誕生は,こうした生活を,より分かりやすいものにしてくれるだろう。

 引っ越せば変わる住所,キャリアをかえれば変わる携帯電話番号。でも,ドメイン名はどこに移動しても,そのまま保持できる。インターネットの時代なのだから,郵便の表書きにドメイン名を書けば,どこに移転していようが,ちゃんと相手に届くような環境が得られたってよさそうなもんだ。20年前,今のこんな生活は想像できなかったのだから,20年後には,こうしたことも普通になっているかもしれない。

[山田祥平, ITmedia]

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