News 2000年10月5日 11:27 PM 更新

3com,全世界を対象としたネットアンケート「Planet Project」を発表

3comは,全世界を対象にしたインターネットアンケート調査を11月に実施する。誰でも参加でき,デジタルデバイドに対する意識を高めることが狙いだ。

 米3comは10月5日,全世界の人々を対象に思想や生活についてアンケート調査を行うプロジェクト「Planet Project」を発表した。調査期間は11月15日から同18日までの4日間。アンケートにはインターネットを利用して誰でも参加できる。またネット接続環境が未整備な地域に人を派遣し,同じ質問に対して聞き取り調査を行い,ネットユーザーと非ネットユーザーとの意識の違いも分析,デジタルデバイドの解消にも役立てるという。

 Planet Projectは,全世界を対象にしたインターネットアンケート調査。質問は宗教や健康,自分のイメージ,恋愛・性,法律など8つのテーマにわたり,各テーマに20項目の質問が用意され,選択式で回答する。具体的には,「たとえ元に戻れないとしても,別の人種に変わる気持ちはありますか」「夢に出てきたことが現実になったことはありますか」「夫婦間で互いにどのように愛情を表現していますか」といった,生活全般にわたる個人の態度を問うもの。結果はすぐにWebに反映され,回答結果の傾向が表示される仕組みになっている。

 調査は,11月15日午後8時から同18日午前7時(日本時間)の4日間にわたって行われる。同プロジェクトのサイトには英語と中国語,仏語,独語,イタリア語,ポルトガル語,スペイン語,日本語のWebページが用意される。また各地に調査員を派遣し,アラスカのイヌイット,パプア・ニューギニアのフリ族,アフガン難民,世界最南端の都市・プエルト・ウィリアムズ(チリ)の住民などから,Palmを使って同じ質問に答えてもらう。

 スリーコムジャパンの土本良司社長によると,同プロジェクトの主旨は「デジタルデバイドに対し,問題意識を喚起すること」という。土本社長は「3comは20年間にわたってネットワークに特化してきた。ネットユーザーと非ネットユーザーの意識の差を知ることで,デジタルデバイドの解消に至る1つのステップになれば」と話している。

 調査や結果の分析は,世界的な調査会社の米Harris Interactiveが担当。サーバは米Sun Microsystems,データベースは米Oracleなど,プロジェクトにはIT関連企業が参加する。

デジタルデバイドの解消とは……

 デジタルデバイドは一筋縄ではいかない問題だ。Planet Projectは,プロジェクトそれ自体が問題の根深さを浮き彫りにしている。

 Planet Projectのサイトで利用可能な言語は8つだけ。Harris Interactiveは30以上の言語での調査に対応できるが,「質問や調査結果の分析をする際,言語の数が増えれば増えるほど翻訳が難しくなる。もっとも効率よく質問を集めるために8つに絞った」(ハリス・インタラクティブ・ジャパンの青尾稔社長)という。

 確かに8言語で世界人口のカバー率は半数を超える。だがこれら有力な言語を解さない人々はアンケートに直接は参加できない。そしてデジタルデバイドの不利益にさらされているのはこれらの人々だ。

 また調査結果はWebにリアルタイムに反映され,ネットユーザーであればすぐに結果を参照できる。ネット未整備地域では,調査員が住人に聞き取り調査を行うものの,この結果が最終的に被質問者に対して報告されることはないという。「Planet Projectの結果は報道機関などに広く公開し,これらのメディアで報道されることで伝わる」(青尾社長)。しかし“瞬時に”情報を得られるネットユーザーとの格差は大きい。

 “持てる者”が“持たざる者”について考え,意識を高める。こうした試みは有意義だ。だが“持たざる者”は,これまでの世界的諸問題においてそうだったように,こうした試みに直接参加できないのが常だ。今回の場合は,デジタルデバイドを考えるイベントに,デジタルデバイドによって参加できない人が大勢いるということになる。やはりこの問題は根深い。

関連リンク
▼ Planet Project
▼ スリーコムジャパン

[小林伸也, ITmedia]

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