News 2000年10月19日 09:57 PM 更新

松下,加盟店網を生かした家電ネット販売を開始

松下電器産業が開始する家電のネット販売は,全国の加盟販売店網を活用。低価格が売りのネット直販に対し,安心と信頼感を掲げて対抗する。

 松下電器産業の100%子会社・ライフヴィットコムは10月20日にサイトを開設,家電製品のネット販売を開始する。販売店を通さずにメーカーが直接ユーザーに商品を販売する“中抜き”の形態をとらず,全国7000店以上の加盟電器店を配送やサポートの拠点として最大限に活用するのが特徴。介護関連商品の販売や,地域別の生活情報もサイトで提供するなど,白物家電からPCまで手がける松下流の生活密着型事業を展開し,2003年に会員100万人を目指す。

 同社サイトは「全国サイト」と全国を28に分けた「地域サイト」で構成。商品は,PCやAV機器から,洗濯機や冷蔵庫などの白物家電など合計638点でスタート。うち170品については,推奨商品として活用提案や詳細な商品説明も掲載する。また地域サイトでは,地域特性に合わせた商品を独自にそろえる。

 商品価格は地域ごとに決め,注文は地域サイトを窓口として受け付ける。受注した商品は,ユーザーの最寄りの加盟店が配達し,設置や工事,代金回収,その後のユーザーサポートまで一貫して行う。店頭にはネットに接続されたPCを設置し,ユーザーにサイトを利用してもらうことで販売促進にもつなげる。当初は加盟店5000店でスタートし,来春には7000店に拡大する計画だ。

 ソニーなどのネット直販と異なり,全国の加盟店ネットワークを維持しながら,ネット時代のサービス拠点として活用していく手法を採用した。松下電器産業の田中宰専務は「ヴァーチャルとリアルが融合した新しいビジネスモデルだ」と胸を張る。ネット販売の特徴である,流通経路の短縮による価格メリットは薄れるが,「価格は必要条件だが,絶対条件ではない。耐久消費財を長年扱ってきた経験から,“安心”に対するコストが受け入れられると信じている」(田中専務)という。

 家電販売に加え,異業種のパートナー企業と提携し,車いすや特殊ベッドなどの介護用品や,ホームセキュリティ,ハウスクリーニングなどのサービスもサイトを通じて受け付ける。さらにポータルサイト事業も同時に開始。コンテンツプロバイダーや出版社,化粧品会社と提携し,天気予報や健康問題,美容,レジャーなど女性にの関心の高い情報を提供していく。また地域サイトでは,病院の検索やイベント情報といった各地域オリジナルのコンテンツを提供するなど,生活と地域に密着したネット事業を展開する方針だ。

 19日に都内で開かれた説明会で,田中専務は「茶の間にネットが入り,ネットの主役が主婦になった時が本当のネット社会の到来」と主婦層をメインターゲットにしていることを繰り返した。加えて「低価格よりも加盟店網による信頼感」を強調し,ネット時代でも“あなたの街の電気屋さん”による地域密着型販売が有効だと訴えた。先行するソニーが,ワーキングウーマンを含む若年層をターゲットとし,販売店の頭を飛び越えてユーザーに直接,低価格な商品を届けるモデルを描いたのと対照的。ネット事業で出遅れた松下の追撃ぶりに注目が集まりそうだ。

関連リンク
▼ 松下電器産業
▼ ライフヴィットコム

[小林伸也, ITmedia]

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