News 2000年10月24日 04:59 PM 更新

公正取引委員会がNTTを調査──DSL参入を妨害した疑い

NTT東日本とグループ会社に対して公正取引委員会が調査を開始した。DSL事業者の新規参入にあたり,同社が妨害した疑いがもたれている。

 xDSL事業の新規参入にあたり,NTT東日本が競合他社の新規参入を妨害した疑いで公正取引委員会の調査を受けていることが明らかになった。これは,加入者電話網を事実上独占しているNTTが,その立場を利用して意図的に競合となるDSL事業者のサービスを遅らせた可能性があるというもの。独占禁止法でいう「私的独占の禁止」違反にあたる。調査の対象は,NTT東日本に加えて,グループ会社でDSLサービスを提供しているNTT-MEなども含まれている模様だ。

 私的独占とは,事業者が人為的にほかの事業者の活動を排除したり,支配することにより,市場支配力(市場における価格や数量などを左右することができる力)を形成したり,既に有する市場支配力を行使することをいう(2条2項)。公正取引委員会管理企画課では「調査しているのは事実」とした上で「以前から苦情はあったようだ。調査は事実関係を調べるためのものだが,その焦点は公表できない」と話している。

 この件に関しては,以前からいくつかの問題が指摘されていた。それは,NTT東日本が新規参入しようとするDSL事業者に対して

○MDF接続に関する情報開示が遅い

○NTT局舎内のコロケーション工事について,自前工事を認めなかった

○工事の入札時にはNTTが主導権を握り,結果,特定企業に限定された

○機器の設置工事代金やコロケーション料金を高額に設定した

○サービスが可能かどうかを調べる机上計算の基準を高く設定した

○事業者による回線利用料金の一括徴収を認めなかった

○グループ企業と競合他社を差別した

などとというもの。このうちのいくつかは,既にZDNNで報道した通り(下記の関連記事一覧を参照)。例えば,xDSL事業者が新しい地域でサービスを開始しようとした場合,まずNTTに対して当該電話局でMDF接続が可能かどうかを調べる「Point of Interface 調査」を行い,その結果に基づいて工事を行うが,当初はこの過程に約4カ月半かかっていた(8月22日の記事を参照)。また,机上計算により40db以上の回線損失があると判断された場合,ユーザーに対してサービスの提供を断っていたという経緯もある。こうした結果,DSLの加入者は,試験サービス開始から約半年後の4月末時点になっても,わずか211件にとどまっていた。一方で,ISDNの常時接続サービス「フレッツ・ISDN」が躍進していたのとは対照的だ。

 しかしながら,郵政省の諮問機関「高速デジタルアクセス技術に関する研究会」が6月末に出した答申により,DSL事業者によるNTT局舎内の自前工事や回線利用料の一括徴収が認められ,それに前後して机上計算も事実上撤廃されている。DSLサービスをめぐる環境は急速に整い始めており,こうした状況下で調査が開始された点について業界内では“半年以上遅い”という声があるのも事実だ。公正取引委員会では,「仮に調査の結果として排除勧告が出された場合,既に改善されていることについても,過去に違反行為があった場合は(勧告に)含める」としている。

 今回の調査は,NTT東日本がDSLと既存のISDNを組み合わせたサービスを提供するという情報(8月9日の記事を参照)がきっかけになった,と見る向きがある。NTTしか提供できないISDNにDSLを組み合わせれば,市場における競争力は計り知れない。また,公正取引委員会は6月に「電気通信事業分野における競争政策上の課題について」として,DSLのような新しい技術によるネットワーク構築の必要性と,NTTへの接続に係る透明性の確保,さらにはNTTの持株会社方式による再編が競争促進効果が不十分であると指摘していた。

 あるアナリストは「調査によって世論が喚起されれば,たとえ(勧告の)実効はなくても,NTTに対する抑止力にはなる。公取委は,DSLサービスに代表されるブロードバンドインフラが世間に認知されるまで,タイミングを見計らっていたのではないか」と分析している。DSL事業に限らず,独占企業が持つ影響力と,光ファイバー網の解放といった今後の展開を見据えたとき,この時点でNTTを牽制しておく意味が見えてくるようだ。

関連リンク
▼ 公正取引委員会
▼ 独占禁止法の解説(参考資料)
▼ NTT東日本

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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