News 2000年12月13日 01:23 AM 更新

NTTがADSL本格化で思い切った価格を提示,しかし……?

NTT東西地域会社がADSL接続料金の値下げと「フレッツ・ADSL」のサービス概要を発表したが?

 既報の通り,NTT東西地域会社がADSLサービスの本格展開に伴い,郵政大臣に対する契約約款の認可申請および料金の届け出を行った。これは,従来型のサービスに加えて,新たに「フレッツ・ADSL」のサービス概要と価格体系を含んだもの。大幅な値下げとスループットの向上を約束する内容だが,この申請が早くも業界内に波紋を呼んでいる。

 NTTが提示した新料金は,ISPなどが装置を設置する場合で月額500円(電話重畳)から。試験サービス時は800円だった。また,NTTがADSL装置を設置する場合では月額4000円(従来は5100円)となっている。スループットは,下り1.5Mbps/上り512Kbpsに向上した。

フレッツ・ADSLがついに登場

 フレッツADSLは,ADSLでNTTの地域IP網に入り,PPPoE(PPP over Ethernet)を利用して任意のIPSに接続する定額制サービスだ。こちらも下り1.5Mbps/上り512Kbpsというスピードを実現し,加入電話と共用するタイプ(電話重畳)としないタイプが用意されている。

 まず,東京23区と大阪市内の一部でサービスを開始し,年度内には23区の全域と首都圏の一部にまで拡大する予定だ。サービスの受付は12月26日より開始する。また,2001年第1四半期中には,大阪市の全域と県庁所在地級の都市の一部にまで拡大し,その後,需要の高い地域に順次サービスを適用していく方針。

 月額利用料金は,電話重畳の場合で4800円に設定された。ユーザーは,ほかに初期費用の1万6500円とISPの接続料金を支払う必要がある。提供エリアと開始時期の詳細は,NTTのWebサイトを参照してほしい。なお,現在のところ,各ISPからフレッツ・ADSLに対応するという発表は出されていない。

競争は歓迎すべきだが?

 ADSLのスピードアップと低価格化は,ユーザーはもちろん,業界関係者にとっても歓迎すべきことだ。にもかかわらず,関係者からは既に疑問の声が上がっている。あるDSL事業者は,「NTTがDSLに本腰を入れること,そしてサービス料金が下がることは喜ばしい」と前置きした上で,「では,これまでの金額は何だったのか? また,(今回の)利用料金の内訳は開示されるのだろうか?」と話す。

 例えば,4800円というフレッツ・ADSLは,現在のコロケーションコストや中継回線に係る経費などを考慮すると,正に“出血大サービス”のレベルだという。少なくとも,NTT以外の事業者にとっては。

 また,NTTのサービスロードマップにしても「NTTは,机上調査や局内工事といった作業を,事業者ごとに決まった件数しか受け付けていない。(NTTが)発表されたロードマップの通りに拡大できたとしたら,それは自らの立場を利用したことになるだろう」という指摘もある。

 既存のDSL事業者たちは,フレッツ・ADSLという競合サービスの登場に警戒感を強めている。NTTは,少なくとも料金の内訳を開示し,また競争が公正に行われるよう,環境を整える必要があるようだ。もっとも,今回の発表は料金の認可申請であり,サービスを開始する前に郵政省の認可を受ける必要がある。今後は,郵政省側の対応にも注目が集まりそうだ。

関連リンク
▼ NTT東日本のプレスリリース
▼ NTT西日本のプレスリリース
 

[芹澤隆徳, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.