News 2000年12月14日 11:59 PM 更新

ITS制覇に向け足場を固める日立──クラリオン,ザナヴィと合弁会社設立

日立,クラリオン,ザナヴィの3社が,今後急速な拡大が見込まれる車載情報機器の分野で力を結集する。新会社の「エイチ・シー・エックス」が,開発,製造を一手に引き受ける予定だ。

 12月14日,日立製作所,クラリオン,ザナヴィ・インフォマティクスの3社は,カーナビゲーションを始めとする車載情報機器の開発,製造を手がける合弁会社「エイチ・シー・エックス」を12月21日に設立すると発表した。

 クラリオンは,「ADDZEST」ブランド知られるカーオーディオ/カーナビゲーション機器メーカー。Microsoftの車載情報機器用プラットフォーム「Auto PC」を使った製品を世界で初めて開発したことでも有名だ。ザナヴィのほうは,堅実な作りで知られるカーナビゲーションメーカー。日産の自動車に純正品として装着されているカーナビゲーションはザナヴィ製のものだ。

資源の集中が設立の目的

 新会社のエイチ・シー・エックスは,クラリオンとザナヴィの車載情報機器に関する生産/開発を統合し,資源の重複をなくしてスケールメリットを出すために設立された。「日立の半導体,移動通信技術,クラリオンのオーディオ,オートPC,ザナヴィのカーナビ技術を統合する」(日立製作所の自動車機器グループ長兼CEOである須田正爾常務)。

 エイチ・シー・エックスが開発/生産するのは,車載情報機器のコア部分となる。「(コアとは)DVDを中心とした次世代ナビゲーションに通信機能を持たせたもの。その後,車載,家庭との間でシームレスな情報の交換ができるものを用意していく」(須田氏)。

 開発と生産を統合することで,「開発費が少なくとも40%削減する見通し」(須田氏)だという。基本的な開発は新会社が行うものの,マーケットに合わせたカスタマイズやブランド構築は,従来どおりクラリオンとザナヴィの2社が行っていく。「最終的には,工場は1つとなり,委託生産のような形態になるかもしれない」(須田氏)。

日立のITS事業とのシナジー効果

 車載情報機器の市場は,現在の250万台から2005年には1200万台と,ますます巨大になっていく見通しだ。ただし,そこで求められるのは単なる高性能カーナビではない。ブレーキやエンジンなどの車両制御装置,そして携帯電話などの移動体通信とも連携したものだ。

 これは日立が得意とするITS(Intelligent Transport System)との連携が最も期待されている機器でもある。「日立のメリットは,ITSの品揃えを充実できること。幅広いITS事業とのシナジー効果が期待できる」(須田氏)。

 クラリオンやザナヴィの車載機器のノウハウに,日立が得意とする半導体や移動体通信の技術を合わせれば,ITS分野で有利なポジションにつける。須田氏は「2005年には(国内シェア)25%に。世界でも20%のシェアを狙う」としている。

 今回の新会社設立に先駆けて,日立は日産が保有するザナヴィの全株式を購入し,12月8日付けでザナヴィを100%出資の子会社としている。ただし,須田氏は「日産が保有するクラリオン株の買い取りに関しては当面考えていない」とし,クラリオンとザナヴィの合併についても,予定はないとしている。

 エイチ・シー・エックスの資本比率は,日立が51%,クラリオンが34%,ザナヴィが15%となっている。2001年1月に営業を開始し,発足時の従業員数は3社からの出向で60名。平成14年度には100億円の売上を見込んでいる。

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[斎藤健二, ITmedia]

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