News 2001年1月5日 06:26 PM 更新

お正月を変えそこねたインターネット

 あけましておめでとうございます。21世紀がやってきました。どうか,この連載を,今年もよろしくお願いいたします。

 ……とはいっても,何が大きく変わるわけでもなく,あいかわらずの年明けだ。ちょっと違うとすれば,ぼく自身が持っているWebでの連載はこれだけなので,年賀状を含め,多くの年明けの挨拶を昨年のうちに書いたけれど,この文章だけは,正真正銘,今年になってから書いているという点だ。こういうことは昨年まではなかった。

 年賀状といえば,ここ数年のものを見ていると,それこそ,目に見えてPCを使って作ったものが増えている。特に,年輩の方からの賀状にその傾向を見て取ることができる。かつての達筆宛名書きが,毛筆フォントに取って代わられているのだ。本当に,PCが広いユーザー層に浸透したことを示す,いい例だろう。この国に年賀状という習慣がある限り,年賀状は,市民のPC浸透率を推し量るための,いいサンプルであり続けるんじゃないだろうか。

 それにしても寂しいのは,年末年始に多くのWebサイトで,更新がピタリと止まってしまったことだ。ZDNNにいたっては,暮れのトップページの状態のままで,年明けの数日間が過ぎ,ようやく1月5日の金曜日未明に更新が始まった。ここはひとつ,ウソでもいいから,予め用意した原稿でお茶をにごしてでも,新しい情報を読ませてほしかった。もちろん,これは,ZDNNに限ったことではなく,あちこちのサイトにいえることだ。

Webサイトは更新を休めなくなる?

 でも,ここまでWebが日常的なものになった以上,年末年始の新記事掲載に関しては,多少の努力をしてほしかったと思う。毎日届くメールによるニュースなども,年末年始はその配信がピタリと止まり,寂しいことこのうえなかった。その上,仕事上のメールも,ほとんどストップするため,メールのチェックのしがいもない。

 新聞やテレビなどの旧メディアは,この特別なシーズンをターゲットに各種の特別記事,番組を用意するではないか。年末年始の比較的時間に余裕のあるときにインターネットを楽しもうとした,ごく一般の人々は,年が明けた後も年末時のトップページが掲載されたままのサイトを見て,どんな印象を持っただろうか。ちょっと気の毒な気がしてならない。

 もちろん,Webサイトの更新が行われるためには,そのために正月から働くスタッフが必要になる。ただ,この作業は電子化することで,その労働を最小限に抑えることができるはずだ。知り合いの週刊誌記者は,世紀の変わり目に備え,正月に東京を離れることを禁止されたという。そこまでやるかとも思うが,それも仕事だとか。

 ここ数年で気がつくのは,コンビニエンスストアを始め,正月から営業している小売店が実に多いということだ。うちの近所のスーパーマーケットも,元旦の朝から営業し,1割引のクーポンを来店客に配布していた。家人に言わせれば,売れ残りをさばくのだから,割引は当然だということだが,ちょっと前なら考えられなかったことではある。数年前に,某大手スーパーが,元旦からの営業に踏み切り,業界の反発を招いたことがあった。それでも,これらの店の元旦営業にはそれなりの来店者があり,それなりの繁盛をしているように見える。だが,そのために,現場の従業員の正月が失われてしまったというのも事実だ。

 成人式も正月直後にずれこみ,1月の休日のピークが前半に偏ってしまった。これでは商売のペースが乱れて,集客に影響するという話も聞く。サービスを提供する側と,される側では,それぞれの論理があり,どちらにもそれなりの分がある。が,インターネットがさらにコンシューマー寄りのものになれば,今後,Webサイトが盆暮れに更新を休むわけにはいかなくなるだろう。こういうインターネットはこの正月が最後かもしれない。

重すぎた「インパク」

 静かで,そして,利用者が少ないために,快適に使えた今年の正月のインターネットだが,この国が本気で取り組んだはずのインターネット博覧会(インパク)が始まったものの,ぼく自身の環境では,あまりに重くて,開会イベントを開くのをあきらめざるをえなかった。インパクサイトによれば「12月31日17時〜1月1日8時の時間帯に500万ものアクセスをいただき,20万ストリーミングに及ぶ動画配信を実施いたしました」とのことだが,ぼくは,その恩恵にあずかれなかったのだ。ここで,その録画を楽しむことができるが,ライブでないのはちょっと寂しい。

 そんなわけで,とにもかくにも,暦の上では新しい年,そして,世紀が始まった。インターネットだけに注目しても,いろんな課題が山積みだ。今年は,その1つ1つを,真剣につぶしていかなくてはなるまい。各方面の努力に期待したいし,ぼく自身も微力ながら,なんとか協力できればと思う。

関連リンク
▼ インパク

[山田祥平, ITmedia]

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