News 2001年1月12日 11:59 PM 更新

D4対応HDTVが接続可能に! カノープス「SSH-HDTV」速報レビュー

カノープスの「SSH-HDTV」は,PCの画面をHDTV対応テレビに映し出すための製品。高機能なPCのブラウザやメーラもテレビの大画面で利用できるようになる。

 昨年末に「CUSTOM PC WORLD 2000 in Akihabara」に参考出展され,話題になったカノープスの「SSH-HDTV」(試作機)を入手。早速,手元のPCにインストールしてみた。SSH-HDTVは,同社製グラフィックカード「SPECTRA 7400DDR」「SPECTRA 8400」「SPECTRA 8800」「SPECTRA F11」に対応するHDTV接続用サブボード。標準のアナログRGB出力端子付きブラケットに換えて取り付けることで,高解像テレビ用の専用端子が装備されたテレビに接続できる(ただし,F11が持っているTwinView機能には未対応)。

 SSH-HDTVの発売は2月初旬。対応OSはWindows 9xおよびMEのみ。今回のテストでは,SPECTRA 7400DDRと組み合わせ,D4端子を装備した東芝「FACE 36ZX720」に接続して使い心地を探ってみた。


SSH-HDTVを装着したSPECTRA 7400DDR

ノンインターレース表示のみの対応

 HDTVとSSH-HDTVの接続は,D端子と呼ばれるHDTV用端子で接続する。よく知られているように,D端子はDVDプレーヤーなどに装備されているコンポーネント端子を,使いやすく1つのコネクタにまとめたものだ(コンポーネント端子は4つのRCA端子で接続する)。

 “D”という名前からデジタルを想像するかもしれないが,同期信号と共に明度,色度をセパレートで接続するアナログ端子である。パソコンユーザーには,ディスプレイを接続するときのアナログRGBのRGB信号を,明度と色度に置き換えたものといえば分かりやすいかもしれない。

 D端子は対応する信号のフォーマットがいくつか決められており,帯域幅の違いでD1からD5までの規格が存在する。D1は一般的なテレビと同じ走査線525本インターレースの525i,D2は走査線525本ながらノンインターレースの525p,D3はアナログハイビジョンと同じ走査線1125本インターレースの1125i,D4は走査線こそ750本だがノンインターレースの750p,D5はD3のノンインターレース版である1125pとなっている。

 このうち,製品化されているのは750pのD4端子まで。またBSデジタル放送でも今のところ1125pでの放送は予定されていないため,実質的にD4が現在のHDTVの最高解像度ということになる。

 ただし,BSデジタル放送のほとんどが1125iであることや,これまで使っていたアナログハイビジョン対応のブラウン管をそのまま流用できる点などから,HDTVフォーマット対応を謳うテレビの多くはD3止まり。D4対応のテレビは,日本ビクターや東芝の一部機種にしか存在しない。

 SSH-HDTVは,最高で750pのフォーマットに対応する。ならば,より帯域の狭い1125iにも対応できそうだが,残念ながらインターレース表示には対応していないため,750pの下は525pということになる。

 したがって,一般的なD3対応のHDTVを所有しているユーザーは525pでしか利用できないことに注意してほしい。

文字は鮮明だがPCのディスプレイ並みではない

 さて,実際にテレビに接続してみての感想だが,PCディスプレイ並みとはいかないものの,文字表示は鮮明で,8ポイント程度の文字でも十分に判別できる。東芝のFACE 36ZX720に表示した画面は,明度の高い部分が走査線方向に尾引する傾向があったが,これがテレビとの相性なのかは現時点では判別できない。また,細かな描写や鮮明さには問題はあったが,これはブラウン管の解像力不足ではないかと思われる。


1024×640ピクセルの750p表示

 実は,そのまま接続しただけではコントラストが高いドット境界において,絵の具が滲んだような表示になった。文字が黒の場合は大きな問題はないのだが,白い文字を表示すると極端に滲むのである。これは映像信号を処理するテレビ内部の映像プロセッサが,PCのような静止グラフィックではなく,動画に最適化されているためである。

 幸い,FACE 36ZX720には“ゲームモード”という設定が用意されており,任意の入力端子をゲームモードに設定することで,コンピュータグラフィック向けの映像処理に切り替えることが可能だ。今回の場合,SSH-HDTVからの入力にゲームモードを設定することで,鮮明な映像を得ることができた。ほかのテレビでも同様の設定がある場合は,設定すれば滲みなどが改善されることもあるだろう。

 また,720pはコンピュータの画面表示に向いたノンインターレースとは言え,画面のリフレッシュレートは60Hzでしかない。このため,チラツキの多さを予想していたのだが,残光時間の違いからか,それほど目立ったチラツキは感じなかった(とはいえ,長時間細かな文字を注視するのには向かない)。テレビは一般的PCディスプレイよりもコントラストも彩度も非常に高く,見栄えがするが,それ故にPCディスプレイの替わりにはならないと個人的には思う。

 なお,750pの場合は最大1280×720ドットの解像度に設定することができるが,テレビにはオーバースキャン(多少はみ出して表示すること)するため,端の方はうまく表示されない。このため,テストは1024×640ピクセルに設定して行った(ほかに1152×640ピクセルという選択肢もあるが若干左右の表示が切れる)。

 525pの場合も,720×480ピクセルでは画面からはみ出してしまうため,640×416ピクセルというモードが用意されている。しかし,FACE 36ZX720との組み合わせでは,上下方向こそ表示が切れないものの,左右方向は若干はみ出してしまった。もっとも,これは単純にテレビとの相性かもしれない。

PCならではの機能とテレビを組み合わせて楽しむ

 テレビを見ながらワープロ,なんてことは誰も想像しないだろうが,テレビに映して使う以上は楽しいことをして遊びたい。もちろん,HDTVをプレゼンテーション用の大型ディスプレイの替わりに使おうという人もいるかもしれないが,仕事で使うならば低価格化が進むデータプロジェクターの方が使いやすい。

 パソコンのゲームを大型テレビで楽しみたい,あるいはパソコンによるDVD再生をテレビで楽しみたいなどの用途が考えられるが,それだけのためというのも面白くない。テレビでゲームをするなら多少解像度が落ちてもゲーム専用機の方がいいと思うし,DVDビデオを見るならDVDプレーヤーの方が便利だ(しかも今時のDVDプレーヤーは安い)。

 あえてPCを接続するのだから,PCならではの機能を組み合わせるといいだろう。高機能なPC用のブラウザ,メールクライアントはテレビに接続するインターネット端末の比ではない。また,PCのプロセッサとハードディスクを有効に利用できるデジタルビデオレコーダソフトとテレビチューナーカードを活用して,タイムシフト再生やEPGなどの機能を使ってみるのもいいかもしれない。 

 もちろん,キーボードやマウスもワイヤレスがいいだろう。SSH-HDTVを利用するには,フルハイトのAGPカードが必要になるため小さなフォームファクタには収めにくいが,小型かつ静音性の高いPCの自作に挑戦して自分だけのAV PCを作ってみるのもいいかもしれない。

 また将来的にはデジタルBS,デジタル地上波放送のソフトウェアデコードなども行えるようになれば面白い。これらの放送はMPEG2で映像配信されており,PCを用いて容易に再生できる。チューナーカードさえ用意すれば,これらの視聴に必要なほとんどの処理はPCで行える。

 HDTVを自分の部屋に所有しているなら,SSH-HDTVで遊んでみてはいかがだろう。これまでのテレビ出力とは一線を画す可能性がそこにある。

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[本田雅一, ITmedia]

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