News 2001年1月12日 11:40 PM 更新

ワープロ盛衰記(1)

 昨年暮れ,松下電器産業がパーソナルワープロ市場から撤退することを表明した。同社に取材してみると,実際に11月末で生産を打ち切り,今後の新製品の投入の予定はないという。ただ,同社は,この事実に関して,プレスリリースを出すわけでもなければ,ウェブサイトで告知するわけでもなく,一般の報道にまかせるだけという態度を貫いている。

 一方,NECも,年明け早々に同市場からの撤退を表明したという。やはり,こちらも正式のリリースはなく,同社のワープロブランドである文豪のWebサイトを覗いても,そうした情報は一切掲載されていない。同様に取材してみたが,やはり,告知の可能性は薄いという。同社の場合は,昨年10月に最終出荷をした際に,販売店に関して,今後の新機種の発売がないことを告知したにとどまっているという。

ワープロだってアプライアンス

 各報道のニュースソースは共同通信の配信によるもので,実際に,共同通信のサイトで調べてみると,松下,NECと,東芝の撤退に関するニュースが見つかる。結局,東芝,松下,NECが撤退し,富士通も撤退を検討中ということだ。

 パソコンの普及を足止めするほどの勢いがあったパーソナルワープロが,こんなふうに,ひっそりと消えていくことに,ちょっとしたとまどいを感じる。パーソナルワープロは,そのインターネット対応など,まさに,日本人向けのアプライアンスとして,生き残る道はたくさんあっただろうに,と思うからだ。事実上,昨日までパーソナルワープロと称して売っていた製品を,箱を詰め替えてインターネットアプライアンスとして発売してもちっとも不思議ではない。このビジネスを継続できなくなった理由をあれこれ考えてみるのは,今後の事業にとって大きな意味があるんじゃないだろうか。今,インターネットアプライアンスがちやほやされているのを見ると,余計にそう思う。

 いずれにしても,インターネット利用に関しては,合計契約数が昨年12月末現在で5800万6600契約となった携帯電話のうち,約46%に相当する2679万2300台が対応しているし(1月11日の記事を参照),Webや電子メールを利用できるそのほかのアプライアンスも数多くある。でも,学生がまじめに卒論やレポートを書いたり,ビジネスマンが企画書や報告書を書き上げるために使うワードプロセッサということになると,パソコン上でアプリケーションソフトを使うしか方法がなくなるわけだ。もっとも,最近では,こうしたレポートに関しても電子メールでOKという事例が増えてきているようだが,すべてがそうなるのはまだ先の話だろう。だから,現状では,紙への出力が必要な場合は,パソコンで「Word」か「一太郎」を使うしか選択肢がないといってもいいくらいだ。ということは,これからも,パソコンはまだまだ売れると考えていい。教わる側よりも,教える側の方が遅れているといってもいいくらいに奇妙な状況になっている教育の現場が,急激にIT化されるとは考えにくい。コンピュータリテラシーを身につけてもらうために,インターネットはきわめて重要だが,基本的な読み書きソロバンのためのアプリケーションソフトをきちんと使えるようになっていないと,あとあと苦労するのは見えている。結局のところ,似たようなものを複数台所有するのが難しい日本の住宅事情では,オールマイティのパソコンを選ばざるを得ないユーザーが多いという状況が続くのではないだろうか。

 ちなみに,今日は,非常勤で講師をしている成城大学短期大学部で,期前試験というのを実施した。まあ,今日が最後の講義日なので,評価のために,課題を与えてそれを解決させてみた。ぼくは,パソコンの操作技術を問うよりも,問題解決のセンスを重視したいと考えている。パソコンは,そのセンスを何十倍にも増幅してくれる道具だと思っているからだ。

 あるWebサイトに試験問題を置いておき,そのURLを試験直前に電子メールで受験者全員に送信する。そして,問題を解けたら,回答を電子メールで送信させるというシステムだ。試験問題は,次のようなものだった。この連載の読者であれば,数分で答えが見つかると思う。もちろん,知識として知っていれば何も調べなくても分かるが,根拠となるURLを併記させるところがミソだ。

コンピュータ入門2000年後期,試験問題

2000年度のオリコン年間ヒットチャートで,第3位を獲得したアーティストの最新曲は,現在放送中のあるドラマの主題歌として採用されています。その正確な曲名,そして,ドラマのタイトルと,主演の二人の役者の名前を調べてください。また,その根拠となったウェブページのURLもあわせてレポートしてください。

なお,回答は,

xxxx@xxxx.xxx.jp

宛にメールで送ってください。メールの件名は,「コンピュータ入門後期試験」とし,本文内に自分の名前をきちんと記入するのを忘れないように。授業の感想なども書き込んであれば嬉しいです。では,健闘を祈ります。

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