News 2001年1月16日 07:41 PM 更新

社員間のナレッジギャップを埋める「Lotus Discovery Server」登場──Lotusphere 2001基調講演

米フロリダ州オーランドで開催中の「Lotusphere 2001」。LotusのCEO,Al Zollar氏の基調講演では,プロジェクト“Raven”のバックエンドサービスを司る「Lotus Discovery Server」が発表された。

 米Lotusは,昨年から同社が掲げているナレッジマネージメント戦略を推し進め,企業内の知識と社員の間にある“ナレッジギャップ”を埋めるための製品群を,米フロリダ州オーランドで開催中の「Lotusphere 2001」で発表した。同社はコードネーム“Raven”で知られた製品群の一部である「Lotus Discovery Server」を発表するとともに,PC以外のデバイスから情報へのアクセスを可能にする「Domino Everyplace」「Sametime Everyplace」などの製品をリリースする。

ナレッジギャップとナレッジトランスペアレンシ

 LotusのCEO,Al Zollar氏は,現在同社が取り組んでいる市場について触れ,コミュニケーション&コラボレーション,e-Learning,ナレッジマネージメントの3分野にフォーカスしていると言う。


社員1人あたりの価値はNBAプレーヤー並み。彼らの知識資産を有効に利用しなければならないと話す米Lotus CEOのAl Zollar氏

 コミュニケーション&コラボレーション分野では,既に同社が発表済みの次世代クライアントとiNotes(Webブラウザを対象にしたクライアント機能)を紹介。昨年秋にLotusphere Belrinで発表された,インスタントメッセージを自動翻訳する「Sametime」リアルタイムトランスレーションについても触れた。

 e-Leaningにも引き続き力を入れる。Zollar氏は,三菱商事への導入例などを挙げながら,その重要性を訴えた。

 しかし,今回のLotusphereにおける主役は,ナレッジマネージメントにおける新しい製品の発表だろう。Lotus Discovery Serverは,プロジェクトRavenとして一昨年の秋に発表されていた製品群のうち,欠けていたバックエンドサービスに相当する部分を埋めるもの。フロントエンドサービスに関しては,昨年秋に「K-Station」の名称で発表が行われている(2000年9月27日の記事を参照)。

 Zollar氏は,昨年の6月ぐらいから,「ナレッジギャップ」という新しいキーワードを用いてロータスのナレッジマネージメント戦略について説明している。社員の頭の中や,さまざまな成果物には,企業内資産としての知識が存在するが,そうした知識を活用しなければならない場面で,なかなか思うような情報を引き出すことができない。たとえば,ある社員の報告した書類に重要なノウハウがあったとしても,ほかの社員はそのノウハウを知るところまで至らない。こうした知識と人の間にある溝を,Zollar氏はナレッジギャップと表現している。

 これに加えて,昨年秋にZollar氏は「ナレッジトランスペアレンシ」という言葉も追加している。これは,必要なときに,そこで利用できるデバイスで,なるべく簡単に知識情報を得られるようにすること。すなわち,知識情報に,いかに透過的にアクセスできるかを示した言葉だ。ナレッジトランスペアレンシを高めるため,Lotusは携帯電話やページャ,情報携帯端末など,ノンPCから情報へアクセスする手段を提供する。


基調講演には映画における知識共有の重要性を訴えるフランシス・コッポラ監督も登場。映画製作の現場でNotesを使ったこともあるとか

Lotus Discovery Serverを3月に投入

 Lotus Discovery Serverは,エクスパタイズロケータ,コンテントカタログという2つの機能を実現するための製品。企業内に分散するNotesデータベース,テキスト文書,ワープロ文書,Web文書などをスキャンし,文書の内容を分析した上でカタログ化を行う。

 カタログ化の際,Lotus Discovery Serverは,各文書の作成者,それらの文書にアクセスした人々,カテゴリ分類,その文書が作成された場所(プロジェクト)などについて分析を行っておくため,たとえばあるテーマについて検索を行えば,それに関する文書を示すだけでなく,そのテーマについて詳しい人物,関連するプロジェクト,関連する部署といった情報にまで枠を広げて情報を探すことが可能になる。

 米Microsoftが先日発表した「SharePoint Portal Server」(1月9日の記事を参照)と似ていると指摘する声もあるが,SharePointが分散する文書を統一的に検索する製品であるのに対し,Lotus Discovery Serverは文書内の検索だけでなく,文書の使われ方,内容にまで踏み込んで情報に辿り着くための道筋を示す製品であるという違いがある。

 Lotus Discovery Serverは,3月中に米国で発表され,日本でも第2四半期中にはリリースされる見込み。価格はフロントエンド構築用サーバのK-StationとLotus Discovery Serverの合計金額で,1ユーザーあたり395ドルになる見込みだ。

Domino Mobile Serverの次世代版も発表

 一方,モバイルトランスペアレンシを高めるための製品群として,ワイヤレスアクセスをサポートするための「Domino Everyplace」を発表している。この製品は,NTTドコモとの共同開発で生まれ日本で販売されている「Domino Mobile Server」(DMS)の次世代バージョン。DMSは,携帯電話からDominoにアクセスする際,可能な限り高速に情報を取得できるようにアクセス手順をシンプルにしたほか,携帯電話通信に特化したプロトコルを用いることで,通常のTC`P/IPアクセスよりも6倍程度の高速通信を行えるようにした製品だ。昨年秋には日本向けのPDC版だけでなく,欧州米国向けのGSM版も発表していた。

 こうしたワイヤレス高速アクセスに加え,Domino Everyplaceには携帯電話,PDA,ページャから情報にアクセスするための仕組みも提供される。iモードおよびWAP端末からのアクセス,Palm OS搭載機およびWindows CE搭載機向けのMobile Notesクライアントもバンドルすることで,Domino上のデータを,より透過的に利用できるようにする。日本ではNTTドコモとの共同開発が知られているが,米Blackberry,豪telstraとの提携が今回発表された。

 また,ワイヤレスデバイスからSametimeの機能を利用可能にする「Samtime Everyplace」,グループでの共同作業をサポートする「QuickPlace」にWAP端末からアクセスできるようにする「Wap Enabled QuickPlace」を開発中であることもアナウンスされた。

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[本田雅一, ITmedia]

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