News 2001年1月26日 11:04 PM 更新

「空飛ぶスクーター」騒動を追う

「世界を揺るがす何か」と報じられたITは,本当に空飛ぶスクーターなのか?

 2週間くらい前に,科学者のDean Kamen氏が「世界を揺るがす何か」を開発しているというニュースが流れた。さまざまな憶測が流れる中,「空飛ぶスクーター」が有力な説として挙げられ,日本でも「空飛ぶキックボードのようなものが登場するらしい」と民放のワイドショーが報じていた。さらに,開発コードネームが「IT(またはGinger)」だったことが,IT関連メディアの報道に拍車をかけた(ZDNNも例外ではない)。

 Kamen氏は,あまりの熱狂ぶりに,開発中のあるものは期待するような革命的なものではないとの声明をあわてて発表。しかしながら,Apple CEOのSteve Jobs氏が,「都市はITを中心に建設されるようになる」と考えるほど重要な“何か”への期待が,簡単におさまるはずはなかった。

残念ながら……

 そんな中,英国のIT関連ニュースサイトであるtheregisterは,「これがGinger/ITだ」という記事を掲載した。同誌では,Kamen氏が昨年12月14日に特許を取得した「MOBILITY VEHICLES AND METHODS」こそが ITだと断言する。

 Kamen氏は,「iBot」と名付けられた高度にバランスを取ることのできる車椅子を発明し,特許を取得している。驚くべき事にこのiBotは,車椅子ながら階段を上ることも可能で,砂利道のような悪路も走破できるという。この技術をスクーターに応用したのがITだというのがtheregisterの主張だ。つまり,ITとは,空は飛べないまでも,あらゆる場所を移動できるスクーターだということらしい。

 さらに,theregisterでは,ITにKamen氏が設計概要に関する特許を所有するスターリングエンジンが搭載されると見る。スターリングエンジンは,気体の熱膨張・熱収縮でピストンを動かす外燃機関。排ガスに有害成分が含まれない,静粛性に優れるなどの特徴を持ち,未来のエンジンとして期待されているが,気密性を保つのが難しいなどの課題もある。

 MOBILITY VEHICLES AND METHODSの特許取得日と,マスコミでITが話題になった時期は,だいたいタイミングがあう。さらに,特許申請書にあるイラストは,確かに空を飛んでいるようにも見えるため,このイラストだけを見たら(そして膨大な申請内容を読まなければ),空飛ぶスクーターだと勘違いしてもおかしくない。だからといって,ITがこのスクーターであると断言することはできないが,一つだけ確実なことは,残念ながらITは,多くの人が期待したようなこんな乗り物ではないということだ。

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[中村琢磨, ITmedia]

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