News 2001年1月30日 08:16 PM 更新

広告配信技術のハイパーシステム,再び表舞台へ

インターキューは,同社が特許を保有するネット広告配信技術の「ハイパーシステム」について,ISP向けにライセンスを無償供与する。

 インターキューは1月30日,同社が所有する広告配信技術の「ハイパーシステム」に関する特許のライセンスをISP(インターネットサービスプロバイダー)向けに無償供与すると発表した。今後は,ライセンス供与によって収益をあげるビジネスモデルから,ハイパーシステムに露出される広告掲載費の一部を徴収する手数料モデルへと移行する。

 ハイパーシステムは,ユーザーがインターネットにアクセスしている間,広告用の別ウインドウがデスクトップに常駐するシステム。個人データを格納したデータベースと連動してユーザーごとの嗜好に合わせた広告を配信することもできる。広告の表示には専用のアプリケーションが必要だが,インターキューでは現在,Java版のビューワを開発中だという。「非公式ではあるが,ニフティの渡辺武経社長にこの話をしたとき,非常に興味を持っている様子だった。ハイパーシステムによって広告収入が増加すれば,サービス料金を引き下げることも可能になるはずだ」(インターキューの熊谷正寿社長)。

戦略転換の理由は?

 ハイパーシステムの仕組みはもともと,37億円の負債を抱えて自己破産した旧ハイパーネット社長の板倉雄一郎氏(現インターキュー顧問)が開発したもの。板倉氏は借金返済のために同技術の特許を手放したが,1999年12月に,板倉氏と親交のあった熊谷社長が同技術に関する特許を買い取った(1999年12月21日の記事参照 )。

 ハイパーシステムの特許は,日本,英国,シンガポールのほか,昨年12月には米国で出願中の6件のうち1件が成立している。インターキューでは,米国の大手無料ISPであるNetZeroにライセンスを供与。そのNetZeroは,米Juno Online Serviceを特許侵害でロサンゼルス地裁に提訴し,今年1月にJunoに対して一時的な使用禁止命令が言い渡された。そのほか,NetZeroはAT&Tなどを特許侵害で提訴している。

 インターキューでは,2001年第3四半期より国内のISP向けにハイパーシステムのライセンス無償供与を行う予定。米国など海外でも今年の秋よりライセンスビジネスから手数料ビジネスへと移行する計画だ。「手数料ビジネスとして成功するには,1000万ユーザーは必要だろう」(熊谷社長)。また熊谷社長は,ISPから徴収する手数料について,「最終的にISPが広告掲載費の7割を確保できるようにする。それほど大きな割合ではない」とコメントした。

 今回の戦略転換についてある情報筋は,「国内では,米国で成立したようなハイパーシステムの根幹部分に関わる特許が認めれていない。つまり,ライセンスビジネスを行うのは事実上不可能な状態だった」と見る。インターキューによれば,米国では「情報をブラウザと広告表示のためのビューワに分離して表示する」という部分について特許を取得しているが,国内では現在のところ,サーバ側でのユーザープロファイルの管理など,周辺部分の特許が認められていないという。

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[中村琢磨, ITmedia]

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