News 2001年2月16日 04:19 PM 更新

マイラインがやってくる──その導入に至るまでの長い道のり

広告でよく目にするようになった「マイライン」。その役割と影響を改めて検証してみよう。

 「マイラインは○○○○」。そんなフレーズの入った電話会社の広告を,街角や電車内で見かけることが多くなった。1月10日に各社の申込受付が開始されたマイラインだが,現在5月1日のサービス開始に向けて,各電話会社ともユーザーの囲い込みに力をいれているところだ。これに合わせ,料金の値下げや割引サービスの拡充が発表されるなど,顧客囲い込みに向けた各社の競争が進んでいる。

 一般消費者からすると急に始まった感のあるマイラインのキャンペーンだが,そもそもこのマイラインとは,どのような経緯で導入が決まったのだろうか。実はここに至るまでは長い道のりがあった。

マイライン導入に至るまでの長い道のり

 マイラインは,正式には電話会社事前登録制,もしくはたんに優先接続という。旧郵政省(現総務省)のホームページをのぞいてみると,導入に至るまでの過去の経緯が分かる。郵政省で優先接続の検討が始まったのは,今を遡ること3年前の1998年3月のこと。優先接続に関する研究会が設置され,11月には報告書を公表している(「電話会社事前登録制の導入に向けて〜「優先接続に関する研究会」報告書〜(概要)」)。

 もともとそれ以前に決まったNTT再編成により,それまで1社体制だったNTTが,1999年7月から東西の地域会社と長距離・国際の会社に分割再編されることとなった。その結果として,ほかのNCCには00XYの識別番号が必要とされるのに対し,分離された長距離NTTには識別番号が付かない状態に不公平が生じる。そこでそれを機に,東・西・長距離のNTT各社に対しても識別番号を導入すると同時に,米国,オーストラリア,カナダ,韓国,ドイツ等などでは既に導入されていた優先接続を導入し,不公平の解消と利用者の利便を確保することになったのである。

 その後も検討は続き,2000年2月にはこの優先接続導入に向けて,2001年5月という実施時期や,公正競争を目的としたNTTグループの一体営業の禁止といった詳細が定められた(「電話会社事前登録制(優先接続)の導入に向けて」 )。

 こうした決定を受けて,NTT東日本とNTT西日本は,「電話会社選択サービス」の認可申請を郵政省に対して行なったのが,2000年4月だ(「電話会社選択サービス」の認可申請について:NTT東日本NTT西日本)。マイライン(電話会社選択サービス)では,加入者に代わって識別番号をダイヤルするのは最寄りのNTTの電話局の交換機になるため,このサービス自体を提供する主体はNTT東西地域会社ということになる。

 そしてマイライン事業者協議会が設置され,周知活動や,利用者からのトラブル申出への対応,公正競争に関する事業者間の協議等を目的とした場として運営されることとなった。2000年11月には各電話会社による営業活動が解禁となり,2001年1月10日からは実際の申込受付が始まった。5月1日からのサービス開始時に登録されるのは,3月末までに申し込まれた分になるため,そこを1つのメドとして各電話会社が現在しのぎを削っている状態である。

 この後,10月末まではマイラインの登録は無料だが,11月1日以降はNTT東西への登録料として800円が必要になる。現在は電話会社にとって冬の陣だが,5月以降,10月までの間がマイライン夏の陣といえる。

5月からの電話のかけ方が変わる

 マイラインが導入される5月1日以降は,今までと電話のかけ方が変わる。といっても何もしなければ市内・県内市外はNTT東日本もしくはNTT西日本,県外はNTTコミュニケーションズに登録されるため(国際はどこにも登録されない),あえて電話会社を選択しなかった利用者があまり意識することはないのかもしれない。

 既にご存じのように,たとえば現在,KDDIを利用する場合は0077を,日本テレコムを利用する場合は0088をダイヤルするが,マイラインで登録すればその必要はなくなる。ただし電話機のACRが機能していたり,手動で識別番号をダイヤルすればその選択が優先される。ここで出てくるのがマイラインプラス(電話会社固定サービス)だ。マイラインではなく,マイラインプラスで登録すれば,ACRや手動で行なった回線選択を無視して登録した電話会社の回線でかかってしまう。ACRの機能を強制的にオフにするのがマイラインプラスと考えればよいだろう(ただし災害などで登録した電話会社が不通になった場合のため,サービス解除番号の122を付けた後に識別番号を付ければダイヤルは可能である)。

 あまり知られていないようだが,マイライン導入に合わせてNTT各社にも識別番号が付与される。市内・県内市外をサービスするNTT東日本は0036,NTT西日本は0039とないり,県外のNTTコミュニケーションズは0033(国際と同じ)の識別番号が必要となる。したがってNCCを市内でマイラインで登録した場合は,NTT東日本(西日本)の回線を使うにはあえて0033(0036)をダイヤルしないといけない。なお,長距離のみならず市内通話まで含めて優先接続を導入するのは,諸外国にも例がないようだ。

 現在,ACRで回線選択をしている利用者は,このままあえて申し込まずNTTデフォルトでマイライン登録することになっても,ACRは有効であるため,使い勝手はほとんど変わらない。しかし,これを機に料金や割引サービスを見直し,新たに電話会社を選ぶ利用者もいるだろう。ただ,各電話会社を横並びで比較するのは大変だ。インターネット上には料金比較を行なっているサイトもあるのでそれらを参考にするといいかもしれない(サーチエンジンで,「マイライン 比較」などと入れればいくつも見つかる)。

 さて,このマイライン。電話のかけ方が変わるのは,音声の電話だけではなくインターネット接続の場合も同様だ。現在,ダイヤルアップでインターネットに接続しているユーザーには影響がある。5月1日以降,注意しないと予期せぬ課金が発生する場合があるのだ。次回はダイヤルアップ接続のユーザーのための注意点を記すことにする。

[大水祐一, ITmedia]

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