News 2001年3月6日 11:33 PM 更新

次世代携帯電話サービス導入を延期するJ-フォンの思惑

J-フォンがW-CDMA方式携帯電話の導入を半年延期すると発表した。だがJ-フォンは「機会損失はない」と楽観的な見方。

 既報の通り,日本テレコムとJ-フォングループは3月6日,W-CDMA方式の次世代携帯電話サービスの導入を延期すると発表した。当初,2001年12月に東名阪からサービスを開始する予定であったが,首都圏は2002年6月に,東海・関西地域については2002年10月に延期する。なお,全国主要都市への展開(人口カバー率90%)は,予定通り2002年10月となる(昨年5月12日の記事参照)。

J-フォンの次世代携帯電話展開計画

変更前変更後
首都圏,東海,関西で2001年12月開始首都圏(1都3県主要都市)で2002年6月開始
2002年10月に北海道,東北,北陸,中国,四国,九州の県庁所在地および主要都市2002年10月に 東海,関西,北海道,東北,北陸,中国,四国,九州の県庁所在地および主要都市
2003年に人口カバー率90%

仕様変更が延期の理由

 サービス延期の理由についてJ-フォン経営企画部担当部長の友納一義氏は,「W-CDMAの仕様に大幅な変更があったため」と説明する。J-フォンでは,IMT-2000の国際的な標準化団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)において,昨年9月に調印された仕様に基づいて基地局や端末の開発を行っていた。各国の携帯電話キャリアやベンダーが参加する3GPPでは,W-CDMAの基本セットが定められた「リリース99」(1999年夏に採択)を叩き台として,年4回のバージョンアップを行っている。

 そのため,仕様のバージョンアップは突発的な出来事ではないのだが,友納氏は「2000年12月にまとまった仕様では,9月のものから大幅に変更があった。今後のサービス展開を考えると,拡張性に優れる12月版を採用するのは当然」と話す。これにともない,基地局や端末のアップグレードを強いられ,結果的にサービスを延期せざるを得ないというのだ。

 「世界的に見ても,各キャリアは2000年12月にリリースされた仕様をベースに開発を行っている。今後のアップデートは12月バージョンをベースに行われる見通しだ。それ以前のバージョンとは互換性がなくなる危険性もある」(友納氏)

ARIBの見解

 しかしながら,国内で次世代携帯電話の標準化に取り組んでいる社団法人電波産業会(ARIB)の前田穣主任研究員は,J-フォンとは異なる見解を示す。「9月のバージョンにせよ,12月のバージョンにせよ,基本的にリリース99をベースにしたもので,全く互換性がないわけではない。国際ローミングを行った場合には,(W-CDMA方式のバージョンが異なると)サービスが制限される可能性はあるが,通話などの基本的な部分での互換性に問題があるとすれば,それは仕様の問題ではなく,キャリアの設定方法に依存する」(前田氏)。

 つまり,前田氏の説明では,昨年12月のアップデートは J-フォンがいうほど劇的ではなかったということになる。では,サービス延期の本当の理由はどこにあるのだろうか。実は,J-フォンのサービス延期には,仕様の問題だけでなく次世代携帯電話サービス導入に必要な莫大な設備投資が関係している。

 仮に,12月でのアップデートが,“J-フォンにとっては”影響の大きなものだったとしても,9月の仕様でサービスを開始し,途中で新しい仕様に基づくサービスに変更するという選択肢もあったはず。実際,NTTドコモは2000年3月時点の仕様でFOMAのサービスを開始する。だが,J-フォンでは「仕様をアップデートするには,基地局と端末の更新が必要になり,投資コストが増す」ため,サービスを延期することを決めたとコメントしている。

 さらに,投資という観点からすれば,J-フォンの株主である英British Telecommunications(BT)ならびに英Vodafone AirTouchが2002年春から次世代携帯電話サービスを導入することも,サービス延期の一因になったと推察できる。J-フォンではこれを否定しているが,J-フォンの次世代携帯電話サービスへの投資額は,2002年度だけで数千億円規模。各社で同じシステムを導入すれば,ボリューム効果でグループ全体のコストを圧縮することが可能になる。

J-フォンのシナリオ

 加入者の頭打ちが指摘され,価格競争が激化している携帯電話業界において,新サービスの導入が送れることは,命取りにもなりかねない。今回の延期によりJ-フォンは,今年5月よりサービスを開始するNTTドコモに1年以上も遅れることになる。通常であれば一大事のはずだが,J- フォンでは「全国展開の時期に変更はなく,延期にともなう機会損失はない」(友納氏)とあくまで楽観的な見方を示している。

 というのも,NTTドコモが5月に世界初のサービスを開始するとはいえ,あくまで実験的な意味合いが強いからだ。しかも,次世代携帯電話サービスには巨額の設備投資が必要なため,現実には緩やかに移行を進めようとしている(3月5日の記事参照)のだから,J-フォンがどうしても2001年末にサービスを提供しなければならない理由は見当たらない。「あせってサービスを始める必要なんてない」というのが,J-フォンの本音のようだ。

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関連リンク
▼ J-フォン
▼ NTTドコモ
▼ 社団法人電波産業会(ARIB)
▼ 3GPP(Third Generation Partnership Project)

[中村琢磨, ITmedia]

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