News 2001年3月12日 10:59 PM 更新

次世代プレイステーションは“人間並”の演算能力を持つ?

SCEI,東芝,米IBMが超並列プロセッサの「CELL」の開発を表明。次世代プレイステーションへの搭載も計画されているもよう。

 「プレイステーション3」はテラフロップス級のプロセッサを搭載か──ソニーコンピュータ・エンタテインメント(SCEI),米IBM,東芝の3社は3月12日,次世代型超並列プロセッサのアーキテクチャを共同研究・開発することで合意した。このプロセッサはコードネームで「CELL」と呼ばれ,ブロードバンドネットワークで利用される民生機器に搭載するのが目標だ。

 CELLの研究開発費として,3社は今後3年間で4億ドルを投資。テキサス州オースティンのIBM施設内に「共同研究・開発センター」を設立する。当初は,IBMのスーパーコンピュータ開発部隊を中心に開発チームを結成するが,東芝のシステムLSI設計技術者なども加わり,プロジェクトに参加するエンジニアは最大で300人程度になる見込み。

 IBMの銅配線,シリコン・オン・インシュレーター(SOI),ならびに低誘電体層間絶縁膜(low-k)を統合した「CMOS 10S」と呼ばれる半導体生産技術を採用するCELLは,0.1μメートルプロセスで製造される。3社によれば,CELLはテラフロップス級の処理能力を実現するとともに,民生機器としての使用に耐えるよう低消費電力で動作するという。

 開発の中心的な役割を担うIBMは,「われれは,次世代コンピューティングの体験をコンシューマエレクトロニクスの分野で提供する。CELLの開発プロジェクトには,ニューヨーク州イーストフィッシュキルにある300ミリ半導体製造施設の相当部分を使用するつもりだ」と意気込みを語る。

PS3が数千台でネットワークゲーム?

 3社では,開発するCELLのアーキテクチャをベースにそれぞれ新プロセッサを製造する計画だが,SCEIでは次世代プレイステーション(PS)への搭載を計画しているようだ。PS2を核としたブロードバンド戦略を打ち出しているSCEIにとっては当然の流れだが,SCEIでは「仮に,PS3と呼ばれるものがCELLを搭載するとして,それが“PSというハコ”になるかは分からない」と話す。

 また同社の久夛良木社長はCELLについて,「ブロードバンドの登場によって,これまで単独に存在しいてたプロセッサは相互に結びつくようになる。そして,テラフロップス級の処理能力を持つ超並列プロセッサのCELLが数千個密結合することで,新たなパラダイムが生まれる」と語る。久夛良木社長は先月,SGI Solution Forumにおいて,世界が1つのOSで動くなるようになる「Broadband OS」という概念を披露したが,どやらこれはCELLの登場を前提とした話だったようだ。

久夛良木社長の描く「Broadband OS」のイメージ

 さらにSCEIでは,Broadband OS上で動くアプリケーションの一例として,「完全にサーバが存在しないネットワークRPGなどが考えられる」と話す。「人間の総演算能力は1京回の浮動小数点演算を実現する10ペタFLOPSと言われているが,CELL同士が結合すれば,それに匹敵する処理能力が発揮される」(同社)。

 Broadband OSは,現時点ではあくまで 久夛良木社長の描いたビジョンにすぎない。だが,ブロードバンドネットワークを介してCELLを搭載した端末数千台による“超分散処理”が実現されれば,それは新たなパラダイムと呼ぶにふさわしいものになるはずだ。なお,CELLが市場に投入される時期は未定だが,久夛良木社長は「10年後にはBroadband OS時代がやってくる」と予測している。

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[中村琢磨, ITmedia]

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