News 2001年3月27日 06:32 PM 更新

中古ゲームソフト販売は合法――エニックス訴訟で東京高裁が判決

東京高裁は3月27日,中古ゲームソフトの販売を認める判決を言い渡した。ゲームメーカー側は最高裁に上告する方針。

 ゲームメーカーの許諾がなくても中古ソフトの販売は可能――中古ゲームソフトを自由に販売できるかどうかをめぐって販売店とゲームソフト会社が争っていた訴訟(通称:エニックス訴訟)の控訴審で東京高裁は3月27日,メーカー側に中古ソフトの販売を差し止める権利はないとした東京地裁の一審判決を支持し,メーカー側の控訴を棄却した。エニックス側はこの判決を不服として最高裁に上告する方針。

 この訴訟は,中古ゲームソフト販売店「カメレオンクラブ」を展開する上昇が,ゲームソフト会社のエニックスを相手取って1998年10月に起こしたもの。一昨年5月の東京地裁判決では,メーカーの許諾なしで中古ゲームソフトを販売することを求めた上昇の主張が全面的に認められ,エニックスが東京高裁に控訴していた(1999年5月27日の記事参照)。

分かれる司法判断

 今回の判決の焦点は,ゲームソフトは「映画の著作物の複製物」ではあるが,その流通を強力に支配することを認める「頒布権」は適用されないと解釈している点だ。東京地裁の判決から一転,映画の著作物の複製物であることは認められたが,肝心の頒布権適用が除外されたことに,エニックス側は戸惑いを隠せない。

 東京高裁の山下和明裁判長は,「大勢の人間が関わるゲームソフトは映画の著作物の複製物だと判断できるが,“複製物”の定義は限定的に解釈すべき。頒布権は,立法趣旨からして少数の複製物を多くの視聴者が同時に視聴するものに適用される。ゲームソフトのように大量の複製物があり,その一つ一つが少数の視聴者によってプレイされる場合はその限りではない」と判決理由を説明する。

 「ゲームソフトが大量流通を前提としている以上,投下資本回収の保護のために頒布権を適用する実質的証拠はない。頒布権の適用を求める原告側の主張はそれ自体失当だ」(同裁判長)

 加えて山下裁判長は,「中古ソフト市場は2000億円規模に及び,莫大な資金が必要な新作開発を圧迫している」とする原告側の主張に対し,「中古品の売却代金によって新品の購入資金が調達されることも少なくなく,それによって新品の需要が喚起されていることも認めれられる」と指摘した。

 今回の判決を受けて,中古のゲームソフトの販売は合法だという論調が勢いを増しそうだが,同様の訴訟が行われた大阪地裁では,逆に,メーカー側に頒布権を認め,中古ソフトの販売を差し止める判決が言い渡されていた。こちらは販売店側が控訴し大阪高裁で審理が行われている。3月29日に判決が出る予定だが,再び司法判断が分かれれば,ゲーム業界の混乱はまだまだ続きそうだ。

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[中村琢磨, ITmedia]

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