News 2001年4月27日 11:59 PM 更新

JPドメインはどこへ向かう?──変革の時を迎えるドメイン(下)

汎用JPドメインによって,JPドメインは“com”からユーザーを取り戻せるのか。戦いはまだ始まったばかりだ。

 国内では,別記事で触れたように汎用JPドメインの導入が話題になっている。申請が優先登録で約7万件,同時申請登録では約12万件ということだが,これまでのJPドメインの普及スピードと比較すると,これは驚くべき数字だ。

 これまで,社団法人日本ネットワークセンター(JPNIC)では,1組織1ドメイン名,移転制限あり,登録者の組織種別によって登録できるドメイン名が異なるといったように,厳しいルールをもってJPドメインの運用を行ってきた。その結果として,企業の「今ある会社のドメイン名以外に,サービス名でも利用したい」や「キャンペーンで使いたい」といったニーズに応えることができず,企業は海外に目を向け,当時イメージキャンペーンによって勢いのあった“com”に目をつけることになる。

 事実,大手企業のいくつかが“jp”から“com”にホームページを移すなど,「JPドメイン消滅の危機」ともいわれるような状況が発生した。JPドメインを預かるJPNICにとっては,大きなショックだったに違いない。

 その一方でJPドメインは,「ccTLDの優等生」といわれるほどの評価を獲得している。実際,“jp”という文字列が日本に関係しているということは,日本に限らず世界の多くの人々の知るところである。“com”だと本当に会社かどうか疑わしいということがよくあるが,少なくとも“co.jp”だったら会社であるということは分かる。そのせいか,この“co.jp”は企業関係者には評判がよいと聞く。

まだ「気軽に」とはいかない

 汎用JPドメインは,JPドメインの信頼性を確保しながら,1組織1ドメインなどの制約を取り払うなど,裾野を広げようとしている点は評価できる。しかしながら,他のドメインに比較して価格が高い感は否めない。もちろん,ドメイン空間を維持するコストが決して安くはないのは承知している。

 規模が大きくなればなおさらだが,いまの価格では気軽にという言葉には遠い。従来のJPドメイン名の申請料金より安くなったとはいえ,利用者はほかのドメインとの価格を比較するのだから企業努力を怠らず値下げ努力をどんどんしていただきたいものだ。

ドメインとブランディング

 しかし,ドメインレジストリというビジネスは,規模のビジネスでもある。例えば,1つのドメイン名を1000円で売ると仮定しよう。10万のドメイン名が登録されて1億円,100万ドメイン名でやっと10億円である。会社を維持するためにはなんとも寂しい金額である。ドメイン空間を維持するために必要なDNSサーバやWHOISサーバの維持や開発のための投資,コールセンターのようなサポート組織の維持,そして会社自体の運営コストを考えるととてもではないがやっていけない。

 結果的に,数が少なければ登録・維持費を高く設定せざるを得ないし,価格が高いと利用者離れが加速する。利用者は価格を無視しないため,ほかのドメイン名との競争力を維持しようと思うと,登録数を増やす方向しかないのである。

 だからといって,いたずらにドメインビジネスを拡大することには賛成できない。ドメイン自身のブランド化やサービスの質の向上によって利用者の満足度を上げるということも有効なはずである。

 たとえば,“com”といえばインターネットビジネスを連想するし,“jp”といえば「日本」を連想する。これは,かなり強力なブランドイメージになる。あとは,これにどれだけの付加価値を認めさせることができるか,だ。

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関連リンク
▼ 日本レジストリサービス
▼ 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター

[渡 俊夫, ITmedia]

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