News 2001年5月8日 08:17 PM 更新

高収益事業へシフトする九州松下,注目はカラーインクジェットプリンタ市場への参入

九州松下電器が中期経営計画の取り組みを発表。高収益事業へのシフトなど事業構造や経営体質の改革が盛り込まれているが,注目はカラーインクジェットプリンタ市場への参入だ。

 九州松下電器は8日,松下グループが進める2003年度までの中期経営計画「創生21計画」に基づいた同社の取り組みを発表した。注目すべきは,プリンタ事業でのカラープリンタ分野の強化だ。同社初となるカラーインクジェットプリンタは2002年度に製品化を予定。価格競争が激しい市場だが,電話機やFAXとの複合など同社が得意とする方法で差別化を図る。またオフィスでのカラー化ニーズの高まりに合わせ,新エンジンとなるタンデム方式のカラーレーザープリンタを2001年度末に出荷開始。2002年初頭には市場に登場する見込み。カラープリンタ事業では開発の段階で松下グループと協業体制を図り,早期開発および事業化を推進する。2003年にはカラープリンタで450億円の売り上げを見込んでいる。

 創生21計画に基づく同社の取り組みでは,システムと機器・デバイスを一貫して開発・供給できる“21世紀型「超・製造業」への変革”を掲げ,事業構造改革と経営体質改革を推進。2003年度に連結売上5200億円,連結経常利益280億円,連結経常利益率5.4%を目指す。同社の坂井はじめ(左に「日」右に「龍」の漢字表記)社長は「全ての事業がインターネットやIPにつながり,システムおよびサービスが一体となったソリューションの提供を行っていく。強いデバイスでスピーディなものづくりをベースにお客様本位のサービスを行っていく」と事業の方向性を語った。

 同社の事業の柱としては「テレコム・IP事業」「光ディスク事業」「FA事業」「プリンタ事業」の4事業があるが,テレコム・IP事業では現行電話事業のIPへのシフト,光ディスク事業では再生系から記録系へのシフト,FA事業ではモジュラーSMTやデバイス組み立て事業の拡大,プリンタ事業ではカラープリンタ事業の拡大など,それぞれの事業で収益性の高い製品や分野へのシフトを行う。

 一方で,成長性のない事業や収益の確保できない事業の撤退や絞り込みも実施。光ディスクドライブ分野では,収益性の高いCD-R/RWなどの記録系やコンビネーションタイプに力を入れ,DVD-ROMなど再生系は薄型タイプに特化するなど選択と集中を進めるほか,ドキュメント事業では松下電送システムとの協業をさらに推進。その他,リードフレームの海外移管や井戸ポンプのインドネシア生産移管,FA分野では実装機やデバイス組み立て装置に集中し,モータ応用商品は松下グループ内で協業を検討するなど,海外移管や松下グループでの協業などを積極的に進めることで全社的な収益性を高めていく。

 テレコム・IP事業では,屋内の高速ブロードバンドインターネット接続とワイヤレス接続に対応した「ブロードバンド・マルチコードレス電話」や,FAXをADSLなど高速ブロードバンド網のゲートウェイとして,PCのイーサネット接続や無線LAN接続,家電製品の制御といった機能を付加した「ホームゲートウェイFAX」,家庭およびSOHO向けに電話回線網や専用線などのIP網に対応し,VoIP機能などを持たせた「ハイブリッドIP-PBX」といったIP端末分野の取り組みを強化。携帯電話(エッジ端末)のi-java対応や英会話サービス,カーナビへの各種情報提供サービスなどといったIPサービス事業の拡大も推進。IP事業で2003年度には1200億円の売り上げを見込む。

 こうした事業戦略の基盤となるのが全社的な経営体質の改革。開発からものづくり,販売まで徹底した無駄の排除を目指した「デジタルものづくり改革」を全社運動として推進。SCM導入など今後3年間のIT投資によって効率化をはかるほか,商品企画から開発・設計,生産でのプロセスもITを活用し,市場ニーズに合わせてスピーディに商品を投入できる体制を構築。坂井社長は「ITを積極的に推進するため,IT投資額は2001年から2003年までの3年間で130億円に及ぶ」とし,社内システムを含むIT関連への巨額投資を明言した。

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[西坂真人, ITmedia]

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