News 2001年5月11日 09:09 PM 更新

“ノート付きノートPC”日本上陸

まるでコンセプトモデルのような「ThinkPad TransNote」がデビューした。この製品を開発したのは,「バタフライキーボード」で有名なIBMフェローのJohn Karidis博士だ。

 日本アイ・ビー・エム(IBM)が,まるでコンセプトモデルのようなノートPCを,そのままの形で発売する。この「ThinkPad TransNote」は,電子メモパッドとノートPCを一体化したユニークなデザインが特徴で,今年1月には米国で発表されている(1月12日の記事を参照)。

 TransNoteでは,A4のメモパッドにボールペンで文字や図形を書いていくと,そのイメージがケーブルでPCに転送される。PC側でOCR処理するソフトウェアもバンドルされているほか,ノートパッドに書き込んだ文字をスケジューラに入力したり,手書きメモをデータベース化するといったことも可能だ。パッド部にも2Mバイトのキャッシュが内蔵されているため,PCを起動していないときでも内容を保持できる。

 本体横に設置される電磁式パッドは,もともとIBMのワトソン研究所が開発したものだが,「CrossPad」や「Decrio」というOEM先のブランドが有名だ。TransNoteは,CrossPadとThinkPadを組み合わせた製品だと思えばいい。

 実は,このTransnoteを開発し,製品化を強力にプッシュしたのは,IBMフェローのJohn Karidis博士だという。Karidis氏といえば,かの有名な「バタフライキーボード」の考案者だ。バタフライキーボードは,1995年始めにリリースされた「ThinkPad 701C」に搭載されたもので,2分割されたキーボードが液晶ディスプレイの開閉に連動して左右にせり出すという画期的な機構を持っていた。持ち運び時にはコンパクトなきょう体に収まり,使用時にはフルサイズのキーボードを使うことができるのがメリットだ。初めて見た人なら,変形合体ロボットを思わせる芸術的な動きに,必ず驚きの声を上げることだろう。


写真は右利き用。ノートパッドとノートPCの配置を左右逆にした「左利き用」モデルも用意される。両用にせず,あえて別個の製品にするのも「PCとパッドを離してはだめ」というKaridis博士のこだわりだ

 当時,ローンでThinkPad 701Cを購入し,“バタフライエバンジェリスト”を勝手に名乗っていたある編集者は,「バタフライは,コンパクトなノートPCにフルサイズのキーボードを載せるための優れたソリューションだった。唯一の欠点は,後が続かなかったことだ」と述懐する。ThinkPad 701Cは,評価されつつもビジネス的には成功したとはいえず,バタフライキーボードを搭載した後継機が登場することもなかった。


背面にPCカードスロットがある。その奥には用途不明の拡張スロットも……

 さて,Karidis博士が世の中に送り出す久々の製品となったTransNoteだが,正直なところ,今回もあまり売れるようには見えない。本体だけなら約2.5キロだが,パッドやケースを含めると3キロ近くになる上,画面がSVGA(800×600ピクセル)という点が苦しい。折り畳んだ状態でもタッチパネルやパッドで入力できるのはメリットだが,片手でこれを持ったまま仕事をするのは辛そうだ。実際,IBMでもバーチカルな市場向けと位置付けており,OSもWindows 2000しか用意されないという。

 こうした,いかにも市場が狭そうな製品でも,全世界レベルで販売してしまうのはIBMのすごいところだ。優れたコンセプトを持つ製品が売れるとは限らないのはPC業界の常識だが,常に新しいコンピューティングスタイルを追い求める同社の姿勢に拍手したい。もっとも噂では,Karidis博士が「発売しないと辞める」と言い出したために製品化したとか,しないとか……。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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