News 2001年5月15日 09:38 PM 更新

4番目の新コアはモバイルシェア獲得の武器――Athlon 4発表

“2”も“3”もあった? 数字が不可解なモバイルAthlon 4。発表会見で堺社長は「ノックアウトとはいかないまでも,かなりの勢いでシェア獲得可能な武器」と熱く語る。

 日本AMDは15日,ノートPC向けプロセッサ「モバイル AMD Athlon 4プロセッサ」と「新モバイル AMD Duronプロセッサ」を発表した。クロック周波数は最高1GHzとなり,先行したIntelに追いついたかたちとなる。都内で行われた発表会には,日本AMDの堺和夫社長のほか,米AMDコンピュテーション製品グループデスクトップ・アンド・モバイル・ストラテジックマーケティング担当副社長のPatrick Moorhead氏も出席し,新製品に対する意気込みを語った。


日本AMDの堺和夫社長

 「また素晴らしい発表をすることができる」という言葉から始まった堺社長は「日本のPC市場はノートPCがすでに50%を超えており,非常に重要」と語り,日本AMDから米国本社にフィードバックすることが世界戦略の上でも非常に重要であることを力説した。さらに,日本AMDの2001年の目標の一つに,モバイルビジネスへの再参入というテーマがあることを述べ,「K6-2でかなり頑張ったのだが,その後インテルの追随を受けてしまったという意味で再参入とした。(新製品発表にあたり)今日は,ノックアウトとまではいかないが,かなりの勢いでシェアを獲得できる素晴らしい武器を手に入れた」と語った。

 米国ではCompaqがモバイル版Athlon 4を搭載した「Presario 1200」シリーズを発表したほか,Hewlett-Packerdも採用を表明。国内でもコンパックコンピュータがコンシューマ向けに,日本ヒューレット・パッカードがビジネス向けに,それぞれ両プロセッサを採用したノートPCを発売する予定。発表会場には,Athlon 4/モバイルDuronを搭載したとするデモ機が展示されていたが,操作は禁じられており,残念ながら触ることはできなかった。


コンパックコンピュータ Presario 1200 シリーズのモバイルAMD Athlon 4搭載デモ機


日本ヒューレット・パッカード hp omnibook シリーズのモバイルAMD Athlon 4搭載デモ機

「Athlon 4」は4番目の新コアという意味

 なぜ製品名を「Athlon 4」にしたのか? この新しいネーミングは,Intelの「Pentium 4」に対抗してAthlonを売り込んでいくためのマーケティング手段と見られている。発表会場では「2や3が無いのにAthlon “4”では,ユーザーが混乱するのでは」との声もあがった。それに対して「Athlon 4の“4”は,第7世代の製品の4番目のバージョンという位置付け。まず最初にK7があり,次にK75,続いてThunderbird,そして4番目のPalominoコア製品が登場したという意味でつけた」(Moorhead氏)と語り,Palominoコアはこれまでとは別のものという点を強調した。Palominoの改良点として最も重要なのは,既存のAthlonより消費電力が削減されている点で,最大20%の消費電力低下が見込まれるという。また,デスクトップ用のAthlonと同様にSocket Aパッケージングを採用。キャッシュサイズとフロントサイドバス(200MHz)もデスクトップ版と同等となり,既存の資産を継承できる。そのほか,IntelストリーミングSIMD拡張命令(SSE1)形式から新たに52のマルチメディア命令をサポートした「3DNow!プロフェッショナルテクノロジー」が3D命令として採用されている。

 一方で,モバイル版DuronはDuron“2”ではなく「“新”モバイル AMD Duronプロセッサ」となっており,一連のネーミングには矛盾も感じられる。いずれにしても競合のIntelはモバイル向けPentium 4を2002年頃に市場投入予定ということもあり,それまでの期間はAMDが“数字”の上でリードすることになる。

 モバイル版Athlon 4は,1GHz/950MHz/900MHz/850MHzの4製品をラインアップ。キャッシュは,128Kバイトの1次キャッシュと256Kバイトの2次キャッシュを統合している。一方のモバイル版Duronは,850MHz版と800MHz版の2つで,128Kバイトの1次キャッシュと64Kバイトの2次キャッシュをオンダイで装備。Athlon 4/モバイルDuronともにフロントサイドバスは200MHzで,Socket Aプラットフォームのインタフェースとなる。また,「PowerNow!」 も改良され,最大で30%の省電力化を果たしたという。Athlon 4/モバイルDuronともに独ドレスデン工場(Fab30)で0.18μメートルプロセスにより製造されている。

 発表会場では,AMDの新しいプロセッサコア・ロードマップも公開された。


プロセッサコア・ロードマップ(拡大画像

 このロードマップでは,PalominoコアのAthlon 4に対し,モバイル版Duronは「Morgan」コアを使用したプロセッサとなっている。しかし,ダイサイズの質問の中で「現在は生産の関係でDuronもPalominoコアであり,早い生産を望むユーザーにPalominoベースでマニュファクチャリングオプションを使うことで対応したもの。したがって現状では,ダイサイズはAthlon 4と同じ」(小島洋一・日本AMDコンピュテーション製品グループ・テクニカル・マーケティング部長)との説明があり,今回のDuronは生産の関係上Palominoコアの製品であることが分かった。今4半期中(4〜6月)にはMorganコアに移行し,ダイサイズも10〜15%小さくなる予定という。

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[西坂真人, ITmedia]

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